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伝説のケース職人、ジャン-ピエール・ハグマン逝去(1940-2025)

パテック フィリップからレジェップ・レジェッピに至るまで、そのキャリアを通じてハグマンが刻んだのは、時計ケースだけではなく時計界そのものへの消えぬ足跡であった。

ジャン-ピエール・ハグマン(Jean-Pierre Hagmann)が逝去した。彼は過去半世紀で最も名高い時計ケース職人であり、特にパテック フィリップとの仕事で広く知られている。その訃報は、彼と親交の深い時計師や業界関係者によってSNS上で伝えられ、時計界に衝撃を与えた。1940年に生まれたこの小柄な職人が手がけたケースは、芸術品と呼ぶにふさわしい逸品ばかりだった。

Hagmann

 1956年に見習いとしてキャリアをスタートさせたジュネーブ生まれのハグマンは、数十年にわたりスヴェン・アンデルセンのアンデルセン・ジュネーブからフランク・ミュラー、ブランパンに至るまで、スイスの名だたるブランドの時計ケースを手がけた。彼の職人技が光るケースはJHPというイニシャルで識別でき、コレクター垂涎の的となっている。なかでも最も象徴的な作品のひとつが、パテック フィリップのために製作したミニッツリピーターのケースであり、その卓越した音質は高く評価されている。

 2018年、78歳となったハグマンは、自身の工房をヴァシュロン・コンスタンタンへ譲渡した。同社ではジュエリーやケース製作の指導者として務めるとともに、ヴィンテージピースの修復にも携わっていた。これは彼にとって2度目の引退であったが、2019年末には再び仕事に復帰し、ジュネーブのレジェップ・レジェッピ(Rexhep Rexhepi)氏率いるアクリヴィアに加わった。そこで彼はクロノメーター コンテンポラン IIを含む一連の新たなケースを手がけるとともに、比類なき知識と経験を新たな仲間たちと共有した。

hagmann watch case

 ハグマンは生涯にわたり伝統的な時計ケース製作の技術を極め、現代のコンピュータ技術に頼ることを頑なに拒んだ。その信念と職人技は、2022年にHODINKEEのローガン・ベイカーが執筆した特集記事で深く掘り下げられている。80代になってもなお彼は、デジタルツールではなく紙の束、鉛筆、そしてコンパスを用いて時計ケースをデザインし続けた。

 “彼こそが、誰にもつくることのできない特別なケースを生み出す唯一無二の存在だった。彼の不在を惜しむ”。そう語ったのは、ジュネーブにあるパテック フィリップ・ミュージアムの館長であるピーター・フリース(Peter Friess)氏だ。

hagmann in his studio with akrivia

 ハグマンは、昨年開催された第24回ジュネーブウォッチグランプリ(GPHG)において、その生涯の業績を称える特別審査員賞を受賞した。受賞スピーチでは彼が時計ケースを手がけた名だたる時計メーカーの名を挙げ、最初の顧客であるスヴェン・アンデルセンをはじめとしたオーデマ ピゲ、ブライトリング、ブランパン、そしてパテック フィリップに至るまでのブランドを列挙した。

 アンデルセン・ジュネーブは月曜日のSNS投稿でこう述べた。“時計界は、最も才能にあふれ、誠実な職人のひとりを失った”

 “ジャン-ピエール・ハグマンは、20世紀後半において間違いなく最も有名な時計ケース職人のひとりであった。「シンプルであることが最良、しかし品質は最も重要」という信念に導かれた彼は、スイス時計業界において単なる部品製造者の枠を超え、自らの名がブランドとして確立された数少ない存在であった”。

Photos by James Kong