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日本と時計をテーマにした史上初めてのテーマオークション“TOKI(刻)”が2024年11月22日(金)に香港のフィリップスで開催される。
TOKI(刻)オークションの開催を記念し、HODINKEEでは独立時計師やVOGA Watch Museumコレクションに焦点を当てた記事をお届けしてきた。そして今回取り上げるのは、オークションにおいては特に注目されるブランドのひとつであろうロレックスについてである。
ロレックスは一時の過熱から落ち着きを見せた多くのブランドと比べ、オークション結果でも底堅い評価を維持している。特にヴィンテージモデルや限定版は、現在も何千万円という高額で取引されており、その安定した価値が際立っている。本テーマオークションでは、基本的に日本市場向けに製造された限定モデルや、希少なヴィンテージモデル、さらに日本のコレクターによって長年大切に保管されてきた個体だけが出品される。そのラインナップは単なるオークションピースにとどまらず、ロレックスがいかにして日本や世界の時計文化に影響を与えてきたかを示す重要な存在といえるだろう。
今回のオークションでは、実に25本ものロレックスが出品される。そのなかから、厳選した6本をピックアップした。
ロット79: ロレックス コスモグラフ デイトナ Ref.6264
ロレックス コスモグラフ デイトナ Ref.6264(この個体は1970年製)は、“ポール・ニューマン”パンダダイヤルを備えた希少なステンレススティール製クロノグラフである。ヴィンテージデイトナのなかでも特に注目度が高く、オークション市場でしばしばコレクターの垂涎の的となるモデルだ。今回のオークションでもトップロットのひとつに挙げられる。本作はCal.722およびCal.722-1を改良したCal.727を搭載したデイトナで、赤い“DAYTONA”ロゴが6時位置のインダイヤル上部で際立つデザインが特徴的だ。クリーミーホワイトとブラックのツートンカラーが印象的で、夜光インデックスは均一にエイジングし、温かみのあるバター色へと変化している。この個体にはオリジナルの保証書、化粧箱、説明書、さらに1975年のロレックス札幌でのサービス記録が付属。この時計が長年にわたり大切に管理されてきたことを示す証拠でもあり、個人的にも魅力を感じる。
ロット79: ロレックス コスモグラフ デイトナ Ref.6264のエスティメートは、140万〜280万香港ドル(約2780万〜5570万円)。そのほかの詳細はこちらから。
ロット78: ロレックス プレデイトナ Ref.6238
ロレックスのRef.6238、通称プレデイトナは、1967年製の14Kイエローゴールド製クロノグラフである。この個体は、ナイフの彫金で名高いイタリア人彫刻家マルチェロ・ペディーニ氏による精巧なエングレービングが施され、虎と女性をモチーフにした彫刻がケースやブレスレット全体に刻まれている。唯一無二の存在感を持つこの時計は、1991年に日本の時計雑誌『世界の腕時計』にも掲載され、そこでは当時の所有者である山中氏がニューヨークのナイフショーで発見し購入に至ったエピソードが語られている。さらに、ムーブメントにはアメリカ市場向けモデルを示す“ROW(Rolex Oyster Watch)”の刻印が施されており、その特異性も際立つ。所有者が自分だけのストーリーを時計に刻み込むという発想におもしろさを感じるし、これは単なる計時装置を超えたアートピースのようである。
ロット78: ロレックス Ref.6238のエスティメートは、ノーリザーブで24万〜40万香港ドル(約480万〜795万円)。そのほかの詳細はこちらから。
ロット76: ロレックス GMTマスター Ref.1675
この1961年製GMTマスター Ref.1675は、非常に希少な“エクスクラメーションマーク”ダイヤルを備えた逸品である。このダイヤルは、ロレックスが放射性物質であるラジウムの使用を減らした移行期にのみ製造されており、ヴィンテージGMTマスターのなかでも特に注目される存在だ。均一に経年変化したギルトダイヤルと夜光インデックスが美しく調和し、ヴィンテージウォッチならではの魅力を引き立てている。さらに、初期モデル特有のポインテッドクラウンガード(“コルニーノ”の愛称で親しまれる)や赤いGMT針などは、コレクターが高く評価するポイントでもある。保証書、クロノメーター証明書、化粧箱といった付属品も完備した、コレクター必見の一品である。
ロット76: ロレックス GMTマスター Ref.1675のエスティメートは、24万〜48万香港ドル(約480万〜955万円)。そのほかの詳細はこちらから。
ロット24: ロレックス サブマリーナー Ref.5508
これはリューズガードのないサブマリーナーとして最後に製造された、1962年製のRef.5508だ。“スモールクラウン”の愛称で知られるこのモデルは、100mの防水性能を持つ“100m=330ft”表記が特徴である。本個体のブラックラッカーダイヤルは、経年変化によって美しいチョコレートブラウンに変化し、グラデーションが独特の魅力を醸し出す。この時計は2008年に日本のロレックス公認修理店、奥時計店でオーバーホールを受けており、ラグのシャープなラインを含め、きわめて良好な状態を保っている。加えてオーバーホール時に同封された直筆の感謝状から、当時のやり取りに思いを馳せることができる。今回のオークションではどのような評価を受けるか、注目したいところだ。
ロット24: ロレックス サブマリーナー Ref.5508のエスティメートは、32万〜64万香港ドル(約640万〜1270万円)。そのほかの詳細はこちらから。
ロット26: ロレックス エクスプローラー Ref.1016
グロス感の強いギルトグロスダイヤルを備えたこのRef.1016は、経年により深みのあるブラウンに変化した文字盤上の“トロピカルアンダーライン”が最大の特徴だ。SCOC(スイス公認クロノメーター協会)のサイン下に見られるアンダーラインは、ロレックスがラジウムからトリチウムへ夜光塗料を切り替えた移行期を示しているとされ、コレクターから高い評価を得ている。トロピカルダイヤルのブラウンと温かみのあるバター色の夜光塗料の調和が美しく、この時計のヴィンテージ感をいっそう引き立てる。さらに1’040’000台のシリアルナンバーや1964年に製造されたことを示す刻印もその歴史的背景を物語る。オークション市場においても、エクスプローラー Ref.1016は非常に人気が高く、特にこの個体のようにコンディションが良好で唯一無二のダイヤルを持つ個体は希少である。
ロット26: ロレックス エクスプローラー Ref.1016のエスティメートは、16万〜32万香港ドル(約320万〜640万円)。そのほかの詳細はこちらから。
ロット67: ロレックス デイデイト Ref.18038
18Kイエローゴールド製のケースにパヴェイエローダイヤモンドが輝く、デイデイト Ref.18038は、“プレジデント”の名にふさわしいゴージャスな時計である。36mmという程よいサイズ感、金無垢ケースと見事に調和したダイヤモンド文字盤、さらに6時と9時位置に配されたサファイアインデックスにより、華やかさと上品さを兼ね備えている。イエローゴールドのダイヤモンドがセッティングされたデイデイトは市場ではこの個体しか知られていない。また、この個体は保存状態がきわめて良好だ。さらに、2024年6月に日本ロレックスでオーバーホールを受けた記録や、サービスカード、見積書といった付属書類が揃っており、時計の正統性と希少性を証明する要素となっている。
ロット67: ロレックス デイデイト Ref.18038のエスティメートは、ノーリザーブで24万〜40万香港ドル(約480万〜795万円)。そのほかの詳細はこちらから。
TOKIオークションのすべてのロットはフィリップス公式サイトへ。
Photographs by Masaharu Wada