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日本と時計をテーマにした史上初めてのテーマオークション「TOKI(刻)」が2024年11月22日(金)に香港のフィリップスで開催される。開催を前に日本の時計市場について改めて深堀りしてみよう。
ヴィンテージウォッチブームを経て機械式時計が復権を遂げると、世界では1990年代の終わりごろから市場を席巻した大規模な業界再編により、スイスを代表する多くの時計ブランドがリシュモングループ、LVMHグループ、ケリング(旧PPR)など、いわゆるラグジュアリーコングロマリットの傘下企業となった。時計製造業のみを基盤とする企業体としては、最大手のスウォッチグループがこれに続く。グループ内企業間でのプラットフォーム共有化に伴い、特に2000年以降の機械式時計は画一化が一気に進んだが、こうした企業体に属さない独立資本の時計ブランドはインディペンデントブランドとして、独自の時計づくりを推し進めた。また、こうした状況のなかで登場したのが、どのグループにも属さずに個人で時計製造を行う作家たちだ。彼らはのちに独立時計師=インディペンデントウォッチメーカーと呼ばれるようになるのだが、1985年に結成された独立時計師アカデミー(AHCI)の存在が広く知られるようになるにつれ、インディペンデント=独立時計師という認識が一般化。そして独立時計師自身のブランド化が加速すると、個人作家の範疇を超えるレベルにまで生産規模を拡大していく例も見られるようになった。
一方、日本におけるインディペンデントブランドの存在が意識され始めたのは、この10年ほどのことである。特に注目されるようになったのは独立時計師として知られる菊野 昌宏氏や浅岡 肇氏がAHCIに名を連ねて以降だろう。セイコー、シチズンといった巨大ブランドを抱える日本では、基本的にはインディペンデント=個人作家のみが知られてきた。しかし近年では、プロダクトマネージャー的な見地からウォッチメイキングをコントロールするインディペンデントブランドも台頭してきている。2012年にはカーデザインなどを手がけたプロダクトデザイナーの片山 次朗氏が大塚ローテックを創業。2018年にNH WATCHを設立した飛田 直哉氏、そしてほぼ同時期に浅岡 肇氏が立ち上げたクロノ ブンキョウ トウキョウなどは立ち上げから数年にもかかわらず、世界的に知られる存在となった。
こうした日本人独立時計師の活躍や日本のインディペンデントブランドの世界的な成功を受けて、近年ではさらに新たなインディペンデントブランド立ち上げの動きが加速している。ヴィンテージ懐中時計の修理・販売を行なうマサズ パスタイムでは若手時計師、篠原那由他氏を中心にオリジナルウォッチの製作プロジェクトがスタートし、2024年に製品化を実現させた。ヴィンテージウォッチをほうふつとさせるダイヤルとは裏腹に、篠原氏が設計・製造を手がけたムーブメントには日本のサプライヤーが開発した先端素材を用いるなど、独自性が光る設計思想や世界観を盛り込んだ腕時計を送り出す。
世界的に見てもユニークなインディペンデントブランドが花開き始めた日本のマーケット。その中心にいる作り手たちはどのような思いを持ち、時計づくりに向き合っているのだろうか。今回のテーマオークション開催に伴い、彼らの声を聞くことができた。
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