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Photos by Yusuke Mutagami
2024年現在、ティソ全体の売上ベースのうち約4分の1を占めるほどブランドにとって大きな存在へと成長しているティソ PRX。1978年に同社が発表したスポーツウォッチをベースとする同モデルは、2021年2月の誕生以来手軽に手に入れられるスイス製のラグジュアリースポーツテイストウォッチとして年齢を問わず幅広い層に受け入れられてきた。そのラインナップは目まぐるしいスピードで更新され続けていて、本作の紹介にあたってオンラインストアを訪ねたときに初めてその販売を知ったモデルもあったほどだ(こちらのグラデダイヤルモデルや、グレンダイザーモデルなどもそうだ。後者は以前のインタビューの際に、CEO肝入りの時計があるとうかがってはいた)。
そして先の10月にティソ PRXコレクションに投入されたのが、このフォージドカーボンモデルだ。ブランドは昨年にもフォージドカーボンを使用したティソ シデラルをリリースしているが、PRXとしてカーボンを取り入れたのは本作が初となる。
今回、ティソ PRX パワーマティック 80 40mm カーボンを実際に手首の上で試してみる機会を得た。これまでステンレススティール(SS)ケースのパワーマティック 80については40mm、35mmともに着用したことがあったが、ケースの素材が変わり、ストラップがラバーになったことでどれだけ軽量化がなされたのか非常に興味があった。フォージドカーボンを取り入れたことによる変化を、順を追って見ていきたい。
ティソ PRX パワーマティック 80 40MM カーボンのスペックをチェック
モデル名にこそ“40MM”と表記があるが、実は従来のパワーマティック 80搭載の40mm径モデルとは少々サイズ感が異なる。ケース径は40mmから40.5mmへ、厚さも10.93mmから11.23mmに微増している。正面から比べてみるとSSモデルと比較してベゼルの天面、フラットな部分に幅が出ており、これが直径に影響しているようだ。また、ベゼルとケースの面取りもSSモデルより目視できるほど深く大きく取られている。フォージドカーボン自体は比較的加工が容易であり、高い耐衝撃性能を持つ素材だが、欠け、割れを考慮した結果としてこの調整が行われたのではないかと考えている。だが正直、肉眼で見比べた限りでは認識できないほどの微差だ。ケースがオールブラックであること、径が大きくなった分ラグに向かってシェイプが絞られていることから、従来の 40mm径モデルと変わらない感覚で使用することができるだろう。
こちらのPRX パワーマティック 80の紹介記事で、その仕上げについて「2〜3桁高いほかのSS製ウォッチに関する美辞麗句を疑いたくなるようなクオリティだ」と評されている。
また従来のPRXコレクションにおいては、価格帯を大きく上回る外装の仕上げも高く評価されてきた。ケースから一体型ブレスレットに続く丁寧な磨きわけも、立体感と奥行きを生み出している。しかし、この強みはフォージドカーボンには適用されない。全体的にマットな仕上げとなり、ダイヤルもカーボン調となったことでラグジュアリーさやエレガントさよりもストイックでスポーティな印象が強まっている。なおストラップまで同色で統一されたオールブラックモデルはこれまでのPRXコレクションには存在しておらず、それだけでも本作がリリースされた価値があると僕は感じている。
ムーブメントは、ティソの自動巻きモデルではすっかりお馴染みとなったパワーマティック 80だ。その名前のとおり約80時間のロングパワーリザーブを誇るだけでなく、シリコン製ヒゲゼンマイによる高い耐磁性も備えている。ストラップはすでにティソ PRXコレクションのいくつかに採用されているものと同じラバー製で、表面にはピラミッドパターンが細かく施され、強くテーパーがかけられているために着用時にも野暮ったさはない。さらっとドライな質感でベタつきもなく、実に肌触りもいい。イージークリック機構も備えているため、ティソが販売しているほかのPRX専用ストラップにも工具いらずで簡単に取り替えられる。
まとめると、ケースの素材が変わったことでシェイプとサイズにわずかな調整が入ったのみで、その他のディテールは従来のティソ PRXシリーズと変わりはない。
パワーマティック 80。裏蓋側から見ると、ブラックケースとのコントラストが効いている。
表面には細かなピラミッドパターンをあしらっている。なお、裏側には大振りな書体で“PRX”の文字が。
数日間着用して感じたフォージドカーボンケースの恩恵
ティソ PRX パワーマティック 80 40MM カーボンを着用して、数日間過ごしてみた。まず手首に乗せて驚いたのは、その装着感のよさだ。ストラップを除いた従来のティソ PRX パワーマティック 80 40MMの重量57gに対し、本作は42gと15gものダイエットに成功している。着用したままPCでテキストを打ったり、普段まったくしない運動に勤しんでみたりもしたが、ヘッドが軽くなった分しなやかなラバーストラップによって手首にしっかりとフィットしており、ストレスはあまり感じなかったことも報告しておきたい。
加えてマーブル模様のカーボンケースは前述のとおり、磨きわけにこだわったSSケースとはまた別ベクトルの高級感を有している。オールブラックの出で立ちとフォージドカーボンのテクスチャーが醸し出す力強い存在感は、カジュアルなスタイルの手元から着こなしに説得力を生み出してくれるようだ。ただ少々スポーティさが強いため、ジャケットなどを使用したクリーンなスタイルには従来のSSモデル、カジュアルアップには本作と使いわけるといいかもしれない。
本作をテストしたのは、ちょうどHODINKEE Magazine Japan Edition Vol.9の製作に向けて撮影や出張が続いていた時期にあたる。少しでも軽い時計をと、ムーンスウォッチやカシオ スタンダードの登場率が上がっていたタイミングだったが、軽量さに加えて高級感も担保できるこの時計の存在は実にありがたかった。
終わりに
昨今、各ブランドにおいては軽量素材の採用や薄型化による装着感の向上が進んでいるように感じているが、ティソはフォージドカーボンを武器にそのトレンドに切り込んでいるようだ。その変化は時計の外観にも影響を与えており、同素材の採用によって本作はティソ PRXのデザインコードを守りながらも新たな魅力を提示してくれた。スポーティでタフ、武骨なPRXという提案が、スイス製機械式時計のエントリーモデルとしての同コレクションの裾野をさらに広げてくれることは間違いない。また15万4000円(税込)という価格から、カーボンウォッチの入門機としても魅力的な1本に仕上がっている。実用性や美観に対する価格のバランスも優れており、今からPRXを購入するとなったらきっとこのカーボンウォッチを手にするだろうと思う。
ティソ ティソ PRX パワーマティック 80 40MM カーボン。直径40.5mm、厚さ11.23mmのフォージドカーボン製ケース。インターチェンジャブル クイックリリース機構付きラバーブレスレット。パワーマティック 80搭載、自動巻き、最大80時間パワーリザーブ、シリコン製ヒゲゼンマイ。傷防止加工無反射コーティングサファイアクリスタルガラスのシースルーバック。10機厚防水。価格は15万4000円(税込)。詳しくはティソ公式サイトをご覧ください。