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Hands-On ニバダ グレンヒェン 一風変わったクロノグラフ、クロノスポーツが復活

この時計は一風変わった見た目をしているが、シンガーダイヤルの外見だけで判断すべきではなかった。

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Photos by Mark Kauzlarich

正直に言うと、時々物事を見逃すこともある。認めよう。ニバダ グレンヒェン クロノスポーツのプレスリリースを見たとき、これはヴィンテージニバダを再現したものだなと思い、すぐに忘れてしまった。見た目が奇妙に感じたのだ。9時と12時位置にインダイヤルがあり、3時位置に日付表示がある同じようなクロノグラフはほかに思い浮かばない。それは、(今回の新作が悪いのではなく)元となったプロトタイプのアイデアが未完成に見え、視覚的に上半分が重すぎるように感じた。直感的にコミュニティも同じように感じるだろうと思い、単に奇妙だからという理由だけで、この時計を批判するための場をわざわざ設ける必要はないと感じたのだ。

 結局、私が間違っていたようだ。この時計はよく売れており、ニバダファンにも好評だった。私は時代に遅れていたのかもしれないが、“今さら遅い”と思いながらも“やっぱりちょっと変わっているな”と感じた。そしてChrono24でオリジナルを見つけ、購入を考えた。それは私が正気を失っているか、あるいはこの時計に何か引きつけられるものを感じたからかもしれない。残念ながら、Geneva Watch Daysでこの新作とニバダのオーナーであるギヨーム・ライデ(Guillaume Laidet)氏に会った時点で、そのヴィンテージモデルはすでに売れてしまっていた。それと同時に、この時計が少なくとも1度はじっくりと見る価値があることを証明してくれた。

Chronosport

 多くの人が異論を唱えるかもしれないが、まず言いたいのは私はヴィンテージの復刻モデルが好きだということだ。ただし、それがうまくつくられている場合に限る。私はヴィンテージウォッチのアイデアが好きで、いくつか所有している。ただ新しい時計を身につける快適さも捨てがたい。見た目がきれいだからというよりも、長い年月を経た時計を自分の不器用さで傷つけてしまうことを心配せずに済むからだ。またこのモデルの場合、200mの防水性といった信頼性の高い機能も手に入る点が魅力だ。

Chronosport

 この時計は発売前からすでに盛り上がりを見せていた。ニバダ グレンヒェンがInstagramで、1970年代に製作された“シンガー製のエキゾチックダイヤル”のプロトタイプのひとつを紹介したのだ。それはブラン&サンズ(Bulang & Sons)で販売されていたもので、推定で20本しか生産されておらず、市販されることはなかった。ヴィンテージウォッチに詳しい人なら、ジャン・シンガー(Jean Singer)がスイスで最も偉大なダイヤルサプライヤーのひとつであったことをご存じだろう。シンガーはオメガ スピードマスター レーシングやホイヤー スキッパーから、あの有名なポール・ニューマン デイトナに至るまで、多くの名作ダイヤルを手がけている。

Paul Newman

2014年に掲載されたReference Points記事から、Ref.6241 ポール・ニューマンのクローズアップ写真。

 また、シンガーのプロトタイプが特別な存在であることもご存じだろう(実際、セールスマンが持ち歩くサンプル帳からシンガーダイヤルを流用した、奇妙でユニークなロレックスがいくつも存在している)。このヴィンテージウォッチは、きわめて希少なワンオフ品と、量産された商業製品の中間に位置する。極端に高価というわけではないが、それでもなお希少性は高い。そしてこのようなブランドの歴史にまつわる興味深いエピソードがあれば、時計の発売には十分だ。特に過去のモデルを再現することに力を入れているブランドにとってはなおさらである。

Chronosport

 おもしろいことに、ブラン&サンズの写真のファイル名を見てみると、“プア マンズ・ニューマン(Poor Man's Newman)”と記載されていた。確かに、新旧両方にそう呼ばれる特徴がある。最大の特徴は、ニューマンに似たロリポップ型インデックスや、インダイヤルに使われたアール・デコ調のフォントだ。ヴィンテージウォッチにおいては、たとえばオープン6や、少し太くて鮮明な2や5といった特定の数字が強調されており、こういった細かなディテールが大きな違いを生み出している。非常に似ているが、こういった細かい部分こそがヴィンテージ愛好家たちが情熱を注ぐポイントなのだ。

Original Chronosport

Photo: courtesy of Bulang & Sons

Chronosport

こちらは新しいモデル。

 ほかのディテールに注目すると、オリジナルの時計はインダイヤルやタキメーターの目盛り、さらにはダイヤルのインデックスまで、すべてフラットなプリントがあしらわれていたことが分かるだろう。さらにダイヤル自体もほぼ平坦で、わずかにテクスチャーはあるものの、ほとんど目立たなかった。さらに夜光は針の先端とインデックスの端にある(経年変化した)黄色いドットにしか使われていなかった。しかし新しいニバダ グレンヒェン クロノスポーツでは、これらの要素が一段と強調されている。

Nivada Chronosport

 たとえば、全面的にスーパールミノバが塗布されたバトン型インデックスや、夜光を多く使用した針などは、実用性の観点から見てもとても理にかなっていると思う。インダイヤルを少しだけ窪ませたデザインは必ずしも必要ではないが、悪くないアイデアだと思う。ただタキメーターの浮き彫りプリントは気に入っているが、ダイヤルのテクスチャーに関しては少しやり過ぎた感がある。非常に粗い粒状で、少し気が散ってしまう気がするのだ。

 本モデルは特別薄いわけではなく、そのためか少し上部が重く感じる。ステンレススティール製のケースは厚さ15.7mm、直径38mm、ラグからラグまでの長さが44.3mmで、手首につけたときにかなり存在感があった。ただこのケースのシェイプはとても特徴的だ。ブロック状でがっしりしており、まさに1970年代のデザインだ。もし70年代に時計メディアがあったなら、その時代にスタンダードとされていたものについて不満を言っただろうか?

Nivada

 ケース側面には美しいハイポリッシュ仕上げを採用している。サテン仕上げのトップケースやブレスレットとは対照的である。この厚さは、改良版のバルジュー7750自動巻きムーブメントによるものだ(個人的には、このムーブメントが搭載されているだけで検討する価値があると思う)。ブレスレットはヴィンテージモデルから改良されており、エンドリンクがケースにぴったりと合うようになっている。さらにダブルドームのサファイア風防は、オリジナルのプラスチック風防をほうふつとさせるようぷっくりとしている。

Old

Photo: courtesy of Bulang & Sons

New

この厚みのあるケースと改良されたエンドリンクは必見。

Old

Photo: courtesy of Bulang & Sons

New

 ブラン&サンズで売られていた個体の裏蓋はフラットなデザインだったが、ニバダ グレンヒェンは量産デザインに近いものを採用した。これらすべてはニバダのチームがブラン&サンズモデルの写真をベースにつくり上げたものである。ギヨーム氏によれば、希少なオリジナルの20本のうちのひとつを手にすることができなかったため、写真や寸法、感覚を頼りに進めたという。彼らは3DプリントやCNCを試して、シェイプや厚さを正確にし、プッシャーとリューズがケースに適切に配置されるよう工夫した。オリジナルを手に取ることなく、ここまで近い再現ができたのは見事だと思う。

Chronosport
Chronosport

 ヘリテージの復刻モデルを愛しつつも、フォティーナを嫌う人がどれほどいるか分からないが、両者は密接な関係にあるようだ。しかし、きっとコメントで“私だ”と言ってくれる人もいるだろう。とはいえ、ニバダはもうひとつ異なるバージョンを用意している。そちらは黄ばんだ部分をすべて当時のままの白にしているようだ(ただし、インダイヤルは当初からそのようにデザインされていた)。そのモデルを実際に見ることは叶わなかったがそれがきっかけで、最後にお気に入りの小さなポイントに気づいた。もし、テクスチャー加工が施されたアルミニウム製ベゼル(あるいはタグ・ホイヤー F1のようなプラスチック製ベゼル)を持つ古い時計に触れたことがあるなら、その古いコーティングが施されたベゼルの独特な感触が指に残る感じを知っているだろう。本作のフルーテッド加工があしらわれた逆回転防止アルミニウム製ベゼルは黒く塗装されており、その感触は純粋にヴィンテージらしい魅力を持っている。またダイバーズベゼルのような分表示と12時間表示の両方を備えている。

Chronosport

 このニバダ グレンヒェンは2180ドル(日本円で約32万円)で販売されていた。デザイン、作り、ムーブメントを考えると、妥当な価格設定だと感じる。またさまざまなストラップオプションも用意されていたが、特に今回のモデルに使われていたストラップが気に入っている。しかし、“販売されていた”ということは...時計を愛する人々にとって残念なお知らせだろう。すでに予約受付が終了してしまったのだ。ただし、二次流通市場ではすでに出回り始めているのを確認した。私はこの時計に恋をしたのか? そういうわけではないが、この時計をもっと評価するべきだと学んだ。自分がクロノマスター アビエーター シーダイバー(略してCASD)ファンだからといって、こんなにも頭が固くなるべきではなかったと気づいたのだ。最近、多くの新作が“同じことの繰り返し”だと感じるなか、1970年代に一風変わったデザインを生み出した象徴的なデザイナーの作品は、まさに私が注目すべきものだったのかもしれない。

詳しくはニバダ グレンヒェンの公式サイトをご覧ください。

ニバダ グレンヒェン クロノスポーツ。直径38mm、厚さ15.7mmの316Lステンレススティール製ケース。200m防水。シンガーにインスパイアされたブラックダイヤルに、イエローのインダイヤルと夜光付きインデックスを配置。スーパールミノバを施したSS製針。自動巻きのETA バルジュー7750搭載、時・分・スモールセコンド表示、カムレバー式クロノグラフ(30分積算計)、約42時間パワーリザーブ。サテン仕上げのSS製ブレスレット(フォールディングクラスプ付き)または、10種類のストラップ(レザー、ファブリック、ラバー)から選択可能。価格は2180ドル(日本円で約32万円)