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我々が知っていること
初めてコレクティブ・オロロジー(Collective Horology)を取り上げた際、それはシリコンバレーを拠点とするプライベートな時計クラブであった。このクラブは主にシリコンバレーのテック業界のメンバーで構成されており、最初のコラボレーションとして発表されたのは、ゼニスとの限定モデルであった。38mmのエル・プリメロ クロノマスターをベースに、カラーパレットを徹底的に整理し、モノクロームながらも新鮮な明るさを持つデザインに仕上げた。このコラボレーションは、その成功と完売により注目を集めただけでなく、招待制クラブでしか手に入らないという希少性によっても関心を引いた。
それから5年後、コレクティブ・オロロジーは独立系時計を扱うオンライン小売業者としての役割も持つようになり、その活動をより幅広い層に広げている。ただし、コラボレーションは取り扱いブランドに限定されず、自由な発想で行われている。現在コレクティブ・オロロジーの創設者であるアッシャー・ラプキン(Asher Rapkin)氏とゲイブ・ライリー(Gabe Reilly)氏は、ゼニスとのパートナーシップを再び実現し、同クラブの10作目となるコラボレーションモデルを発表した。それがデファイ スカイラインシリーズをベースにコレクティブらしさを体現したデファイ スカイライン C.X エディションである。
デファイ スカイラインシリーズは、2022年にデファイシリーズのサブラインとして誕生した。同シリーズは、1960年代後半から1970年代初頭にかけて登場したオリジナルのゼニス デファイモデルにインスパイアされている。現代的な特徴としては、洗練されたシルエット、文字盤にあしらわれた四角形の星型モチーフ、そして10秒で1回転する針を備えたインダイヤルが挙げられる。
標準のデファイ スカイラインと新しいコレクティブエディションを比べると、同じラインの特徴を共有していながら、まったく異なる印象を与える点に気づく。この違いは、小さな変更を積み重ねることで生まれたものだ。素材面では、ステンレススティール製のケースとブレスレットが全面的にサンドブラスト仕上げとなり、マットな質感がとなっている。この仕上げにより、12角形のベゼルが持つ攻撃的な印象が和らいでいる。通常のデファイ スカイラインでは、傾斜のあるミドルリング部分がすべてポリッシュ仕上げされているが、コレクティブ版ではトップとミドルの面がサンドブラスト仕上げとなり、ベゼルリングの側面だけがポリッシュされている。ケースサイズは直径41mm、厚さ11.6mmで、ラグからラグの長さは46.3mm(ブレスレットやストラップが広がる部分を除く)となっている。
最大の変更点は、マットなシルバーグレーの文字盤にある。通常のデファイ スカイラインでは星型モチーフが均一に配置されているが、C.X エディションでは、モチーフに動きが加えられている。よく見ると、新しい文字盤では星型の刻みが中心に向かうほど深く、外側に向かうほど浅くなっていることがわかる。この工夫により、控えめながら放射状のグラデーション効果が生まれているのだ。この効果は初見だと目立たないが、ルーペで見ると鮮明に感じられる。さらに星型モチーフが文字盤の端まで広がらないようデザインされ、余白が追加された点も注目すべき変更点である。これにより全体のデザインがよりバランスよく、洗練された印象を与えている。
時計収集家コミュニティの要望に応える形で(ゼニスとの最初のコラボレーションと同様に)、日付表示窓は省かれている。この変更により、新しい文字盤レイアウトのバランスを取るために、10分の1秒計測用のインジケーターサブダイヤルが従来の9時位置から、より伝統的な6時位置に移動している。この配置自体は目新しいものではなく、ゼニス デファイ スカイライン スケルトンモデルですでに採用されている。しかし、ソリッド(非スケルトン)文字盤でこの配置が使われるのは今回が初めてである。さらにインダイヤルの“10”のマークは鮮やかなオレンジ色でプリントされており、同じ色がインジケーター針の先端にもあしらわれている。
裏蓋にはサファイアクリスタル製のシースルーバックを採用。そこからインダイヤルの新しい位置に対応するために改良された、高振動エル・プリメロCal.3620が見える。このムーブメントは毎時3万6000振動/時(5Hz)で駆動し、約60時間のパワーリザーブを備えている。よく観察すると現代のゼニスキャリバーに共通する特徴である、紫色のシリコン製ガンギ車も確認できる。私が撮影したのはプロトタイプであり、市販モデルに刻まれる予定の“C.X”マークや“ONE OF 200(限定200本)”といった刻印は、裏蓋のリング部分にまだ入っていなかった。
このデファイ スカイラインは現代のゼニスらしく、クイックチェンジシステムを備えた一体型ブレスレットを採用している。サンドブラスト仕上げのSS製ブレスレットに加え、C.X エディションにはデファイ スカイライン専用の一体型ラバーストラップも付属。このラバーストラップは、文字盤のアクセントカラーに合わせた鮮やかなオレンジ色で仕上げられている。ただしラバーストラップ用のSS製デプロワイヤントバックルはサンドブラスト仕上げではなく、通常のデファイ スカイラインモデルと同様サテン仕上げが採用されている。
デファイ スカイライン C.X エディションの販売価格は168万3000円(税込)で、200本限定にて販売。コレクティブ・オロロジーの公式サイトおよびゼニスのオンラインブティックで購入が可能だ。
我々の考え
これこそデファイ スカイラインの理想的な姿だ。標準モデルには個人的にいくつか違和感を覚えていた。特に文字盤全体を広げて見せるように感じられる星型モチーフのデザインや、9時位置に配置された10分の1秒計が気になっていた。このインダイヤルはかなり大きいが、その対となるような要素が存在せず、唯一のバランス要素である日付窓も十分な役割を果たしているとは言えなかった。
今回の新しいコラボレーションで最も気に入っているのは、一見すると些細に思える変更点だが、文字盤中央部分に余白を増やし、エングレービングが中心に向かうほど深くなるよう調整された点である。このわずかな工夫により、星型モチーフが驚くほどエレガントに見え、大きな文字盤を埋めるだけの装飾ではなく、意図されたデザイン要素として際立つようになっている。この改良はまさに見事だ。
実物を見ると、この時計はスタンダードモデルにはない洗練された工業的な美しさが感じられる。これこそが今回のデザインで目指した方向性なのだろう。サンドブラスト仕上げのケースやブレスレットは、時計デザインに現代的な感覚を加えるもので、以前から個人的に好きだった。それゆえ、ゼニスの通常ラインナップのなかでもクロノマスター リバイバル シャドウは特にお気に入りのモデルのひとつだ。とはいえサンドブラスト仕上げは均一に再仕上げするのが非常に難しいため、多くのブランドがこの仕上げを積極的に採用していない理由も理解できる。それでも今回のモデルでこの仕上げが採用されているのは喜ばしいことだ。この仕上げはきわめてコレクティブらしい特徴を持っており、エル・プリメロのオールホワイトとグレーデザインの精神的な後継者とも言えるだろう。
実際に手首につけてみると、この時計は41mm径、11.6mm厚というスペックどおりのサイズ感で、一体型ブレスレットの短いラグが手首に沿うようにカーブしてしっかりフィットする点が特徴的だ。一方で鮮やかなオレンジのラバーストラップを装着すると、時計全体がややコンパクトに見える。ただしストラップ中央部分に星型モチーフがデザインされている点については、個人的にはあまり好みではなかった。
この時計はサンドブラスト仕上げの魅力を存分に楽しむためにも、ブレスレットで使い続けたいモデルだ。通常であればもう少し小さいケースサイズを望むかもしれないが、この41mmケースのまま、工業的でモダンなゼニスらしさをあえて強調している点が自分にはしっくりくる。決して大きすぎる時計ではなく、適度な存在感がありながらも非常につけ心地が良い。特にケース仕上げには、光を反射してケース全体を輝かせるような独特の質感がある。コラボレーションモデルとして、この時計はデファイ スカイラインをまったく新しい視点で解釈し、プロポーションや余白の使い方、そして惜しみなく採用されたサンドブラスト仕上げによって独自の魅力を際立たせている。
基本情報
ブランド: ゼニス(Zenith)
モデル名: デファイ スカイライン C.X エディション(Defy Skyline C.X Edition)
型番: 06.9300.3620/06.I001
直径: 41mm
厚さ: 11.6mm
ケース素材: ステンレススティール
文字盤: シルバー
インデックス: アプライド
夜光: あり、スーパールミノバ
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: SS製ブレスレットおよびデプロワイヤントバックル付きラバーストラップ
ムーブメント情報
キャリバー: エル・プリメロ 3620 SK
機能: 時・分表示、10分の1秒計測インジケーター
パワーリザーブ: 約60時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 3万6000振動/時
価格 & 発売時期
価格: 168万3000円(税込)
発売時期: コレクティブ・オロロジーおよびゼニス ブティックにて販売
限定: あり、世界限定200本
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