trophy slideshow-left slideshow-right chevron-right chevron-light chevron-light play play-outline external-arrow pointer hodinkee-shop hodinkee-shop share-arrow share show-more-arrow watch101-hotspot instagram nav dropdown-arrow full-article-view read-more-arrow close close email facebook h image-centric-view newletter-icon pinterest search-light search thumbnail-view twitter view-image checkmark triangle-down chevron-right-circle chevron-right-circle-white lock shop live events conversation watch plus plus-circle camera comments download x heart comment default-watch-avatar overflow check-circle right-white right-black comment-bubble instagram speech-bubble shopping-bag

Business News アワーグラス銀座、“和”をコンセプトとした新たなサロンがオープン

多くのブランドブティックが揃う銀座でも屈指の高級時計サロンが、今夏“和”のコンセプトのもとに新店オープンを果たした。

Photos by ©2024 THE HOUR GLASS.

高級時計店、アワーグラス銀座が誕生したのは2002年5月3日のこと。マルチブランドストアとしてオープンした同店は以降二十数年にわたり銀座・並木通りのアイコン的な存在であり続け、2021年には創業25周年を機にリニューアル、よりゆとりのあるエクスクルーシブな空間へと進化した。顧客とのコミュニケーションを重視した営業方針に魅力を感じる時計愛好家も多く、社長や特定のスタッフを目的に来店する方も少なくないという。

 そんなアワーグラス銀座がこの夏、5丁目の旧店舗から程近い場所に新たなサロンをオープンした。旧店舗跡は2024年1末にパテック フィリップの銀座ブティックとして生まれ変わるとのことだが、アワーグラス銀座はひと足早くさる8月7日にグランドオープン。前日には関係者を招いてのお披露目会も行われ、ザ アワーグラス ジャパン代表取締役社長の桃井 敦氏の口から直接新店舗に関する話を聞いた。

1600年代、江戸城の石垣に使われていたという石からできたつくばい。天井から落ちる雫は壁の裏のパイプで循環しており、仄暗い空間に風流な音を響かせる。

 新店舗の場所は並木通り沿い、旧店舗から1区画ほど歩いたHULIC &New Ginza Namiki6.ビルの8階だ。エレベーターが開くと、そこには老舗料亭の入り口のような、仄暗くも静謐なエントランスがある。右手にはつくばい(蹲踞、日本庭園の添景物のひとつで茶庭に設置される)が設置されており、背後でエレベーターが閉まると檜の匂いが香り、水の落ちる音が静けさを打つ真っ暗な箱のなかにいるような印象を受ける。銀座の喧騒から離れ、心を落ち着けて左手にある呼び鈴を押すと、一転して白木を基調とした明るい“和”の空間が目の前に開かれる。

サロンに入ってすぐ目に飛び込んでくる、開かれたラウンジスペース。

 「誰もやったことがないことを、そんなコンセプトを持って今までお店作りをしてきました」と語るのは社長の桃井氏だ。2002年にアワーグラス銀座が開店した当時、何千万円もするような超高級時計はカタログで眺めるか、年に1回のフェアのときに実機を見ることができないほどに貴重なものであり、常時店頭に並ぶようなものではなかった。「しかし、腕時計とは身につけるもの。購入にあたって本物が見られないというのはやはりおかしいと思ったのです。ですから投資だと考えて高級機を仕入れて、店頭に並べた。大変な出費にはなりましたが、時計愛好家のあいだでアワーグラスなら実機を見られるという話が広がり、多くのお客様のご来店につながりました」。また、ただ店内にはめ込んでいくだけだったブランド什器を、独自の世界観を崩さずに統一感をもたせた空間作りも業界に先駆けて行っている。「そのため今回のリニューアルも、時計売り場というよりは“和”をテーマとしたサロンのような方向を目指しました。ヨーロッパを意識したような“洋”のコンセプトでのお店づくりはもう当たり前になってしまっていますし、せっかく日本の地で営業しているのですから、海外から日本的なものを求めて来られた方にもそれを感じて欲しいのです」

栃の木の1枚板から作られたというテーブルが置かれた空間。

 

 また、桃井社長は「お客様にとって時計を見に来る、買いに来るというのは楽しい体験です。その場を提供して差し上げるのが、私たちの仕事だと思っています」と語る。「内装について考えるとき、ショーケースや時計の陳列にばかり気を配りがちです。しかしせっかくの楽しい場ですから、シャンパンやビールもあって欲しいなと思うんです(笑)」。そのような考えから、既存のアワーグラスの店舗にも見られたバーカウンターは移転後のサロンにも設置された。もみの木の1枚板でできたカウンターを挟んだ壁際には、プロも舌を巻くような希少な銘柄がずらりと並んでいる。「楽しみ方は人それぞれです。それに寄り添うことができるサロンになったかと思います」

ロマネ・コンティにペトリュス、ルイ13世に数々のジャパニーズウイスキー……。銘酒を傾けながら時計を眺める時間は至福だろう。

店内の随所に、日本的なあしらいが見られる。

 この日は銀座サロンのリニューアルに合わせて来日していたアワーグラス本社の代表、マイケル・テイ氏にもお話しをうかがうことができた。「私はどの国、どの都市であっても、その土地の文化を尊重し敬意を払うことが重要だと考えています。しかし、日本には1000年以上にわたる独自の文化が存在するにもかかわらず、それが十分に生かされていない。私自身が昔から杉本博司氏のようなアーティストに憧れを抱いてきたこともあり、銀座店のリニューアルの話があがってきたときに“何か特別なことをしたい”と考えたのです」。それが、時計専門店の世界に伝統的な日本の建築様式を取り入れるという発想の出発点となった。「同時に、このサロンは時計の魅力を再発見するための場として設計されています。時計を単に見るだけでなく、実物を手にして触感やその存在を感じて欲しいのです。そのためオーディオにも投資をしました。ドイツに拠点を置くオーディオ界の最上位ブランド、mbl(エムビーエル)のHi-Fiシステムをご存じでしょう。ここはただラグジュアリーを求めるだけの場所ではなく、ライフスタイルに質を求める人々に向けたフィロソフィーが詰まっています」

 なお、アワーグラスでは1980年代から独立時計師や職人たちとの取り組みを積極的に続けている。そのなかにはロジャー・スミス氏やフィリップ・デュフォー氏、カリ・ヴティライネン氏などの名前もある。「私たちは現代で最も重要な職人たちと協力関係を築いています。規模的には決して大きなものではありませんが、商業的な文脈に縛られず革新的な作品を作り続けていることが大きな魅力だと思っています」。この45年間、アワーグラスグループとしては独立系時計ブランドを支持し続けてきたが日本での展開は少々遅れていた。しかし、マイケル氏は今まさにそのタイミングが回ってきたと考えているという。「以前は日本の消費者が独立系時計ブランドと接触すること自体が難しかったかと思います。ですが、現在では英語を話せる方も増え、インターネットの普及もあり直接コンタクトを取ることが可能となってきました。消費者とブランドが密接になってきているからこそ、独立時計ブランドのトレンドはより強いものになっていくのではないでしょうか」。なるほど、サロンの随所に設置されたショーケースには氏の考え方を示すかのように、大手メゾンと並び今をときめく独立系ブランドの時計が陳列されていた。

JCビバー キャリオン トゥールビヨン ビバー(左)と、キャリオン トゥールビヨン オープンワーク(右)。

 

 アワーグラス銀座は路面店という形態から離れることで、より“サロン”としてのスタンスが強調されたように思う。「従来のお客様だけでなく、新しくアワーグラスを知ったという方にもこの空間を目当てに来ていただけるようになるといいですね」と桃井氏は語る。1度に多くの顧客を入れず、来店した顧客にゆっくりとくつろいで欲しいという思いは新店にも受け継がれており、それは事前のアポイントメント制にも表れている。時計店という枠を超えた、五感をとおして時計を“体験”できる希少な空間にぜひ足を運んでみて欲しい。

アワーグラス銀座

住所: 東京都中央区銀座6-6-5 HULIC &New Ginza Namiki6. 8F
お問い合わせ: 03-5537-7888
営業時間:12:00〜19:00(完全予約制)

詳細は、アワーグラス公式サイトへ。