ADVERTISEMENT
Photos by TanTan Wang
我々が知っていること
昨年、私はF1チームのアルピーヌ・モータースポーツとの継続的なパートナーシップにおいて、モーザーが見せた興味深いアプローチについて書いた。その際に発表されたのが、ストリームライナーの2モデルで、そのなかには、モーザーにとって初のアナデジモデルとなるストリームライナー メカニクスエディションも含まれていた。このモデルは、自己充電できるスマートウォッチの開発に注力するスイスの時計ブランド、セクエントと共同開発されたもの。モーザーはアルピーヌのメカニックチーム向けに、自己充電機能を持たない新たなストリームライナーをコネクテッドウォッチとして発表した。一般向けには、メカニクスエディションを500本限定で発売した。
このモデルは明らかに成功を収めたようで、モーザーは今回、このアナデジ仕様のストリームライナーにふたつの新しいリファレンスを追加し、オフ-グリッドというコレクションとして展開する。もちろん、モーザーの機械式時計のほうが、充電が必要な時計よりも原理的にははるかに“オフ-グリッド”だという皮肉は見逃せない。モーザーはこういうところを楽しむブランドでもあるので、少なくともある程度はユーモアを込めたネーミングなのだろう。まあ、それはさておき。今回のオフ-グリッドもストリームライナーらしいシルエットは健在で、ケース径42.6mm×厚さ14.4mmというサイズ感も、そろそろおなじみになってきたはずだ。直径だけを見ると大きく感じるが、ラグらしいラグがないため、実際のラグ・トゥ・ラグはかなりコンパクトに収まっている。ストラップはケースに直接取り付けられる構造だ(私の6.5インチ/約16.5cmの手首に着けた様子も見て欲しい)。
本作はいずれもスティール製で、ブルーPVDとブラックPVDの2種類が用意される。ブルーPVDモデルは、昨年の初代モデルの雰囲気をより色濃く受け継いだ仕様で、“Blackor”のフュメダイヤルを採用。一方、ブラックPVDモデルには燃えるようなレッドのダイヤルが組み合わされる。どちらも小さな針と立体的なセラミック製のインデックスにスーパールミノバを施している。H.モーザーのロゴは透明なラッカーで隠されているため、近くで見たときだけ浮かび上がるようになっている。
前作のメカニクスエディションと同様に、“デジタル”要素は、6時位置に配された小さなモノクロのデジタルディスプレイで表現されている。今回のオフ-グリッドで目を引くのは、いわばスケルトナイズされたフロント部分だ。機械式ではない内部構造をあえて前面に押し出し、ダイヤルフレームの幾何学的なラインによって生まれた開口部から、その内部を覗かせるデザインになっている。
ケースの両側にプッシャーが配置されている。より頻繁に使うことになる右側の3つのプッシャーでは、デジタルディスプレイに表示されるメニューや各種機能を操作できる。そこには、いわば“コンプリケーション”と呼べる機能がすべて含まれており、国を選択できるGMT表示、スプリットセコンド・クロノグラフ、パーペチュアルカレンダー(当然、そうであって欲しい)、ムーンフェイズ、日の出・日の入り時刻、タイマー、バイブレーション式のアラームなどを備えている。左側のプッシャーを押すとトラベルモードが起動し、国を選択すると、21言語に対応した10語の辞書を時計上に表示できる。今回のモデルに、当然ながら初代に搭載されていたF1モードはない。このモードにはカウントダウン機能に加え、チームからのアラート通知機能も備わっていた。私の理解では、オフ-グリッドはスマートフォンと接続できるものの、連動した通知機能は一切搭載していないという理解だ。
オフ-グリッドは12気圧(120m)の防水性能を備えている。バッテリー駆動時間についてはユーザーによって使い方が大きく異なるため、ひとつの数値で示すのは難しい。そこで、ここでは公表されているスペックをそのまま引用しておこう。“時刻表示のみのモードでは12カ月。時刻表示に加えて、アラームを30日間、クロノグラフを(6時位置のデジタルディスプレイを起動して)1時間使用した場合には6カ月”。要するに、Apple Watchよりはるかに長く使える一方、ソーラー充電のG-SHOCKにはかなわない。充電は付属のケーブルを使って行う。
本作は1本3900スイスフラン(約74万円)で、各色1000本の限定生産だ。モーザーの既存顧客は9月23日まで、一般顧客は9月24日から10月5日まで(注文受付期間終了日、または完売の場合はそれ以前に)注文を受け付けている(編注;現在すでに完売している)。
我々の考え
今回このモデルが登場したことは、個人的にもかなり興味深い。モーザーがアナデジ仕様のストリームライナーを単発の試みで終わらせなかったことが示されたことで、M.A.D.エディションやグローネ オールデンザールとのつながりがすぐに頭に浮かぶ。今回のオフ-グリッドは、モーザーにとって(比較的)エントリーレベルの製品を目指した試みにも見える。またこうした時計を手がけるなら、モーザーほど適任のブランドはないだろう。そこは素直に評価したい。実際、時計そのものもかなり格好いい。電子的な内部構造をダイヤルデザインにうまく落とし込んでいるからだ。プッシャー(実際にはボタン)は、手にしたときの操作感もしっかりしている。機械式クロノグラフで味わえるような気持ちのいい“カチッ”という感触こそないものの、フィット感や仕上げのクオリティは十分に高い。
とはいえ価格は75万円近く、しかも各カラー1000本というかなり大規模な生産本数を考えると、なかなか野心的なモデルだ。本作について私がまず思い浮かべるのは、モーザーの熱心なコレクターが、旅先で“安心して使える”時計として持っていく姿だ。しかしこれまでモーザーに特別な思い入れがなかったとしても、このアナデジという興味深いアプローチに惹かれる人はきっといるだろう。とはいえ、手に入るのは紛れもなくモーザーらしいデザインとハードウェアだ。そこに価値を見いだす人にとっては、それだけでも十分に意味がある。高級時計を選ぶ際、ほとんどすべての要素よりもデザイン言語を重視する人を、私は決して責めるつもりはない。いつかオフ-グリッドのオーナーに会って、なぜこの時計をコレクションに加えようと思ったのか、その理由を直接聞いてみたいものだ。
基本情報
ブランド: H.モーザー(H. Moser & Cie.)
モデル名: オフ-グリッド(Off-Grid)
型番: 6DI0-1202(ブルー)、6DI0-1205(ブラック)
直径: 42.6mm
厚さ: 14.4mm
ケース素材: スティール
文字盤色: “Blackor”またはレッドのフュメダイヤル
インデックス: スーパールミノバを塗布したセラミック製の3Dインデックス
夜光: あり
防水性能: 12気圧
ストラップ/ブレスレット: ブラックまたはホワイトの一体型ラバーストラップ
ムーブメント情報
キャリバー: セクエントと共同開発したH.モーザー専用のD10
機能: 時・分表示、GMT、スプリットセコンド・クロノグラフ、パーペチュアルカレンダー&ムーンフェイズ、日の出・日の入り時刻、バイブレーション式アラーム、タイマー、オフ-グリッドモード
パワーリザーブ: 時刻表示のみのモードでは12カ月。時刻表示に加えて、アラームを30日間、クロノグラフを(6時位置のデジタルディスプレイを起動して)1時間使用した場合には6カ月
巻き上げ方式: バッテリー式、付属のケーブルで充電
追加情報: AndroidおよびiOSに対応
価格&発売時期
価格: 3900スイスフラン(VAT別 約74万円)
発売: 9月23日までは既存のモーザー顧客向け、その後10月5日まで一般販売
限定: あり、各1000本限定(編注;現在すでに完売している)
詳しくはこちらをご覧ください。
話題の記事
Introducing H.モーザー オフ-グリッド(編集部撮り下ろし)
アスファルトの静寂に刻むタイム──THE MAGARIGAWA CLUBで反芻する、ロレックス コスモグラフ デイトナの本質
クレドールはなぜ薄型ムーブメントを作り続けるのか――68系の設計思想と匠の技