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NAOYA HIDA & Co.は、30年以上にわたり高級時計の販売とマーケティングに携わってきた飛田直哉氏が2018年に立ち上げた日本の独立時計ブランドです。1930年から1960年代のヴィンテージウォッチのデザイン要素を取り入れた飛田氏が理想とする腕時計を、現代の技術を用いて作り上げています。毎年改良が加えられたアップデート版が新作としてリリースされており、昨日5月12日に新作発表会を開催。今年はなんと、ブランド初のコラボレーションウォッチが登場しました。
タッグを組んだのは、香港とニューヨークにメンズウェアショップを構える“アーモリー”(The Armoury)。アーモリーと言えば、H.モーザーとのコラボウォッチも話題になりましたが、デザインを手掛けたのは、そのときと同じ二人の人物。熱心な時計コレクターであり、いちはやくNAOYA HIDA & Co.に注目していたアーモリーの共同創設者であるマーク・チョー(Mark Cho)氏と彼のデザインパートナーであるエリオット・ハマー(Elliot Hammer)氏です。
コラボレーションによって誕生したのは、同社のセンターセコンドウォッチのNH TYPE2C”をベースに"“NH YPE2B”の文字盤の構造を組み合わせた“NH TYPE2C-1”です。主な違いは、新しいインデックスデザインと文字盤6時位置に刻印された“THE ARMOURY”の文字、それにケースバックの刻印表示です。
「きっかけは、2020年に香港のアーモリーで開催したトランクショーです。コラボレーションの話を初めて交わしたのは、そのときだったと思います」と飛田さんは語ります。「パンデミックのさなかに進めるため、Zoomをつないだり、2Dや3Dのファイルをやり取りしながら進めました。完成まで2年かかりましたね」。
「どんなコラボレーションにするか考えるため、まずコレクション全体を見てみることにしました。実際かなり幅広く、それにそれぞれに素晴らしいデザインなのです」とマーク氏。
現在のNAOYA HIDA & Co.のラインナップは、スモールセコンドウォッチの“TYPE1”、センターセコンドの“TYPE2”、そしてムーンフェイズを備えたTYPE3の3種類。いずれも直径37mmのケースに手巻きムーブメントを搭載したモデルです。コラボレーションのベースにTYPE2が選ばれた理由についてマーク氏は 「飛田さんのブランドを知った人は、まずTYPE1に飛びつきますよね。もうすでに皆が注目していました。そして、もう一歩踏み込んだようなものを求める人は、TYPE3に飛びつく。でも実はTYPE2こそ本当に注目に値するものだと思っています。身につければつけるほどTYPE2を気に入ったんです。だからもっと自分の好奇心を満足させようと思いこのモデルを選択しました」。
「取り掛かってみてすぐにわかったのは、飛田さんのデザインは、本当にバランスが取れていて、ちょっと変えただけで完成するようなものではないということ。実際、今回採用した書体を飛田さんの他の時計にあててみたのですが、まったくうまくいきませんでした」とマーク氏は続けます。「だからエリオットと一緒に、飛田さんがどのようにデザインを構成したかを考え、それを解体し、僕たちらしい方法でまた組み直す必要がありました」。
NH TYPE 2C-1のインデックスは、NH TYPE 2Bが偶数飛びインデックスであるのに対して、12個すべてがアラビア数字になっています。採用されている書体は、Lettercutterと呼ばれるアーモリーのオリジナル。
「最初はもっと細い別の書体を試してみたんです。でもそれだとエングレーバーの加納さんの仕事が生かされない。最大限に技術を引き出すような、そんな書体にするにはどうしたらいいかと考えていたとき、エリオットが石に文字を彫るレターカッターという職業について話してくれたんです。石を彫るわけだから細いものは作れません。いくつかのアール・デコのフォントからインスピレーションを受けて完成したのが、このエッジの効いた太く力強い“Lettercutter”なのです」。
インデックスは、これまで同様すべて手作業によって彫られており、彫った部分に合成漆(カシュー)が流し込まれています。カラーは通常のブラックではなく、ネイビーが選択されており、光の加減で完全にブラックになったり、鮮やかなブルーが表れたりするのです。このインデックスの選択に対して飛田さんは、「本当に驚きました。インデックスにこんなあり方があるだなんて、自分では考えもしなかった新しい発想でした」と話します。ふたつのブランドの化学反応がなければ絶対に実現しないというものが見られるのは、間違いなくコラボレーションウォッチの醍醐味でしょう。
TYPE2C-1の文字盤は、ミニッツトラックが別体構造のTYPE2Bを踏襲しています。非常に小さなディテールですが、よく見てみると5分毎のマーカーは、インナーベゼルまで延長されています。これらはすべて全体のバランスを取るためであり、こだわりなのです。
ケースは、同社が第3世代と呼ぶ新しいケースデザインが採用されました。これは、今年発表された全モデルに適用されています。一番大きな違いは、スクリューケースバックが採用された点です。 「私はスナップバックとスクリューバックが大好きなんです」と飛田さん。「普通は防水性能を高めるために採用しますが、私の場合はとにかくこの見た目が好きだからという理由です。その証拠に防水性能は、前のモデルと変わらず5気圧なんです」と説明してくれました。
スクリューバックの選択にあわせてケースサイドの造形もやや薄型化されています。さらにラグも細くなり、全体的にヴィンテージウォッチのルック&フィールが強化された印象を受けました。またケースバックは、通常モデルとは異なる書体と配置のテキストがありますが、中央は空白のまま留められたまま。「結局のところ時計は人のものであって自分のものではありません。だから少しでもその人らしさを表現できる余地があったほうがいいと思って、ロゴを大きく入れたりしなかったのです」とマーク氏は話します。確かに彼のIntagramで紹介されていたアーモリーの顧客が入れたエングレービングを見れば納得です。
世の中には数多くのコラボレーションしたプロダクトが存在しますが、素晴らしいものはふたつの会社・ブランドの哲学が一致したときにしか生み出されません。NAOYA HIDA & Co.とアーモリーは、ヴィンテージやクラシックなデザイン、卓越したクラフツマンシップ、そして何より時計への熱い情熱が高い次元で共鳴しあっています。これほど完璧な組み合わせはないと思います。
NH TYPE2C-1は、限定ではありませんが、生産本数は限りがあります。2022年から2023年は10本が生産される予定で、価格は253万円(税込)。The Armouryでのみ販売され、NAOYA HIDA & Co.のWebサイトや、カミネ神戸におけるトランクショーでは販売されません。
基本情報
ブランド: NAOYA HIDA & Co.
モデル名: NH TYPE 2C-1
直径: 37mm
厚さ: 10.8mm
全長: 44mm(ラグからラグ)
ケース素材: ステンレススティール(904L)
文字盤色: シルバー(洋銀製)
インデックス: アーモリーの“Lettercutter”フォント、手作業によるエングレーヴィング
夜光: なし
防水性能: 5気圧
ストラップ/ブレスレット: ハンドステッチが施されたジャン・ルソー社製のシュランケン カーフレザーストラップ
追加情報: スクリューケースバック、裏面に無反射加工が施されたカーブド サファイア風防
ムーブメント情報
キャリバー: Cal.3020CS
機構: 時、分、秒
直径: 30mm(13 1/4ライン)
厚さ: 5.0mm
パワーリザーブ: 約45時間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 2万8800振動/時(4Hz)
石数: 22石
クロノメーター認定: なし
価格 & 発売時期
価格: 253万円(税込)
発売時期: The Armoury の公式サイトにて受注限定: なし(2022年〜2023年は10本を生産予定)
限定: なし(2022年〜2023年は10本を生産予定)
詳細は、The Armoury公式サイトへ。