Auctions: アンソニー・ボーディンの時計コレクションがオークションに出品中 - Hodinkee Japan (ホディンキー 日本版) trophy slideshow-left slideshow-right chevron-right chevron-light chevron-light play play-outline external-arrow pointer hodinkee-shop hodinkee-shop share-arrow share show-more-arrow watch101-hotspot instagram nav dropdown-arrow full-article-view read-more-arrow close close email facebook h image-centric-view newletter-icon pinterest search-light search thumbnail-view twitter view-image checkmark triangle-down chevron-right-circle chevron-right-circle-white lock shop live events conversation watch plus plus-circle camera comments download x heart comment default-watch-avatar overflow check-circle right-white right-black comment-bubble instagram speech-bubble shopping-bag

Auctions アンソニー・ボーディンの時計コレクションがオークションに出品中

ロレックスやパテック フィリップを含む同氏コレクションの収益金は慈善事業に寄付される。

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 フードジャーナリストのアンソニー・ボーディン (Anthony Bourdain) 氏の時計コレクションが、現在iGavel Auctionsでオンライン出品中 (10月30日まで) となっており、ロットが記載されたリファレンス番号をスクロールしたり、最新の入札を確認したりする姿は、まるで覗き見をしている気分だ。
 このような愛好家のコレクションは神聖であり、往々にして秘蔵もの。腕時計は、人生における最も私的な瞬間や最悪の時期を示すものである。いつ何時でもその腕に巻かれているものだからだ。そしてボーディン氏の場合には、コレクションのそれぞれにまつわる驚きのストーリーが存在するものと確信しているが、我々がそのストーリーを知ることは決してないであろう。もし彼がTalking Watchesのゲストであったなら、「コレクションを褒めそやすのはくだらない」とか「これらの腕時計は『たまたま選んだ些細なもの』にすぎない」と、大いに謙遜して語ったのではないであろうか。しかし彼には、これらアイテムが世界をより小さいものへと変え、素晴らしい食事を分かち合うのと同じような形で、人と人とをつなげるということが分かっていると思う。
 腕時計は我々を饒舌にする。食事と同様に、腕時計には国境や政治を超越する力がある。

 ボーディン氏が残した桁外れの遺産を考えると、彼の腕時計の価値を語るのは、ほとんど意味がないように思える。マーロン・ブランド (Marlon Brando) のGMTマスターや、伝説的なポール・ニューマン (Paul Newman) のデイトナなど、何十年も前に亡くなったハリウッドスターの腕時計の売り出しとは訳が違うのである。
 ボーディン氏が亡くなったのはわずか1年前のことである。しかしながら、同氏の腕時計コレクション販売の収益金の多く (40%) が、カリナリー・インスティテュート・オブ・アメリカの奨学金に充てられることになる。収益金の残りは、彼が残した家族へと渡る。現在の入札額は、既にコレクションの予想入札額をはるかに超えている。この記事を書いている時点で、 文字盤がブルーのオイスターデイトの入札額は約90万円であった。予定入札額は約22万円から約43万円となっている。

 オイスターデイトの他にも、コレクションにはパテック フィリップのカラトラバや、ボーディン氏がおそらく父上から受け継いだヴィンテージ物のロレックスが含まれる。この腕時計のケースの裏側には1930年の日付が刻まれている。そこには、「Sun Offices' Birminghamの同僚からH.D. ボベット (H. D. Bobbett) に寄贈」と書かれている。ボベット氏とはいったい誰なのか、ボーディン氏とはどのような関係があったのであろうか? はっきりとしたつながりは不明であるが、1932年に発行されたThe Post Magazine and Insurance Monitorによると、センチュリー保険のバーミンガム事業所に属するノーサンプトン支店で、ボベット氏は常駐調査員を務めていたようである。どういうわけか、この腕時計はイギリスからアメリカへと渡り、最終的にボーディン氏のコレクションに落ち着いたらしい。

 私は、HODINKEEに入社し、時計ライターとして仕事に打ち込む以前、旅行と食べ物についての記事を書いていた。驚くことでもないが、それらの間には何の隔たりもないことを発見した。私はボーディン氏に触発されて、20代の6年間を海外での生活と遠く離れた場所への訪問に捧げ、執筆を通して国境を打ち破ろうとした。ボーディン氏の「Grandma Rule」では次のように書かれている:
 「あなたは七面鳥をこれっぽっちも好きでないかもしれない。でも、これは『おばあちゃんの七面鳥』だよ。そして、あなたはおばあちゃんの家にいるのだから、つべこべ言わずにお食べなさい。食べた後は『おばあちゃん、ありがとう。はい、もちろんお代わりをください』と言うんだよ」

 このまさに哲学ともいえる話は、私の以前の生活におけるYouTubeシリーズにも影響を与えた。あのニュージャージー出身の生意気な若造が、食を通じて世界をつなぐことができたのなら、このニュージャージー出身の生意気な若造でもそうすることができるであろう。しかし、私のストーリーはちっともユニークではない。ボーディン氏は紛れもなく英雄であり、刺激を与えてくれた人物である。
 彼の偉業は時と共にその大きさを増す。一人の男がどのようにして何百万人という人に影響を及ぼし、旅に出てテーブルを囲んで座ることを通じて、「見知らぬ人」を知るようにを促したかというストーリーは、これからも重みを増すばかりである。

 そして、彼の腕時計もまた然りである。