trophy slideshow-left slideshow-right chevron-right chevron-light chevron-light play play-outline external-arrow pointer hodinkee-shop hodinkee-shop share-arrow share show-more-arrow watch101-hotspot instagram nav dropdown-arrow full-article-view read-more-arrow close close email facebook h image-centric-view newletter-icon pinterest search-light search thumbnail-view twitter view-image checkmark triangle-down chevron-right-circle chevron-right-circle-white lock shop live events conversation watch plus plus-circle camera comments download x heart comment default-watch-avatar overflow check-circle right-white right-black comment-bubble instagram speech-bubble shopping-bag

Hands-On ミン アベンチュリンダイヤルを持つ37.08 “スターライト”の実機レビュー

ブランドのタイムオンリーコレクションに、魅惑的な文字盤を備えた比較的手頃な価格の新作が登場した。

ADVERTISEMENT

もう皆さんご存じかもしれないが、ミンはマレーシアを拠点とし、スイスで生産・製造される時計ブランドだ。友人のなかにはこのブランドの時計を持っている人が何人かおり、そのうちのひとりは最大級のミンコレクションを持っている。その友人、ジェームス・コン(InstagramではWaitlistedその人)氏は、ブランド創設者ミン・テイン(Ming Thein)氏の作品を研究することで時計の撮影を学び、その知識を私に伝えてくれた。そのため私が時計撮影について学んだのは、主にミンと彼の時計のおかげだと言える。しかしこのアベンチュリンダイヤルを持つ新作37.08 “スターライト”が登場するまで、私はミンの時計を本格的に撮影したことがなかった。

Ming 37.08 Starlight

 ミン・テイン氏は今でもブランドのプレス写真のために自身で時計を撮影しており、その技術的なレベルにおいては否定しようのないほど見事だ。この素晴らしくも新しい時計を撮影し始めたとき、まず最初に思ったのは“自分は一体何に巻き込まれてしまったのだろう?”ということだった。時計の撮影が好きな人が、どうしてこれほど撮影が難しいものをデザインするのか信じられなかったのだ。また読者のためにいい写真を撮りたいだけでなく、テイン氏の作品と比較されることを考えると、失敗したくないというプレッシャーも感じた。しかし結果として、私の写真ではなく、37.08そのものが圧倒的に美しかった。

Ming 37.08 Starlight

 アベンチュリンはかつてH.モーザーのような高級時計にしか使われなかった。クォーツァイト(珪岩)の一種であるこの石は、鉱物の内包物がキラキラとした輝きを与える。最近では、アベンチュリンと言えばオメガを思い浮かべることが多い。オメガは232万1000円するブルーセラミックケースのスピードマスター ムーンフェイズから、8119万1000円(ともに税込)する超複雑な(そしてただ単に巨大な)クロノチャイムまで、アベンチュリンを幅広く使用している。さらにコンステレーションラインでも広く用いられているようだ。A.ランゲ&ゾーネのサクソニア・フラッハも、シルバー無垢ダイヤルにダークブルーのゴールドストーン層を用いてこの効果を再現しているが、実際にはアベンチュリンではない。

 アベンチュリンのインパクトは劇的で、まるで銀河がダイヤルに収められているかのようだ。上の写真では、内包物が夜空の星のようにきらめき、ミラーポリッシュ仕上げの表面が周囲の環境から色を拾い上げ、ときに多色星雲のようになっているのが分かる。幸運なことにこれらのストーンダイヤルは多くのブランドにとって身近なものになりつつあり、そのため顧客にとっても手頃な価格になっている。例えばクリストファー・ウォードのようなブランドはより低価格でこの素材を取り入れることができるようになった。ミンの新作37.08 スターライトは、4500スイスフラン(日本円で約80万5000円)と比較的手ごろな価格で推移し、私のお気に入りのオプションになりそうだ。確かに予算内の買い物ではないが、特別なもののために貯金している人にとっては素晴らしい選択肢である。この時計は300本限定で、2024年6月28日午後1時(GMT)から予約受付が開始され、50%のデポジットが必要となる。

Ming 37.08 Starlight

 ダイヤルから1歩引いて全体像を見てみると、37.08はオリジナルの17シリーズケースから引き継がれた37シリーズの対称的なデザインを採用しているのが分かる。316Lステンレススティール製ケースのサイズは直径38mm、厚さ10.9mm、ラグからラグまで45.5mmだ。いつもの幅広かつドラマチックなラグもあり、幅は20mm。クイックリリース機能を備えた第2世代のSS製ユニバーサルブレスレットにフィットする。

Ming 37.08 Starlight
Ming 37.08 Starlight

 このモデルはミン向けに製作されたセリタ SW210.M1手巻きムーブメントを搭載。同ムーブメントは約40時間のパワーリザーブを持つほか、アンスラサイトのスケルトナイズブリッジにコントラストのあるロジウムサーキュラーブラシ仕上げを施している。インダストリアルな仕上げだが、4500スイスフラン(日本円で約80万5000円)では手仕上げの高級時計を期待するのは現実的ではない。しかし標準のセリタムーブメントとは異なる、個性的な特徴を持っているのは確かだ。

Ming 37.08 Starlight

 ミンのリリースにおける慣習として、トップクリスタルの内側にハイセラムのインデックスが配置(ダイヤルにはインデックスがない)されているほか、針にはライトゴールドのスーパールミノバX1がコーティングされているためブルーグリーンの光を放つのも特徴だ。

 37.07 モザイクやモノリスを見たことがあるなら、この時計の大枠はおおよそ把握できるだろう。手頃な価格帯でこれが優れた選択肢である理由のひとつは、パッケージ全体の完成度が非常に高い点にある。ただ今回最も重要なのはダイヤルなので、この部分について少し詩的に語ることをお許しいただきたい。その前に時計の撮影について少しお話しをしよう。

Ming 37.08 Starlight

 アベンチュリンの輝きを通常の時計撮影方法で捉えるのは難しい。ミン・テイン氏のように、私も“カメラの中”で完璧に仕上げることを好んでおり、これまでに撮影した写真のなかで合成したもの(複数の写真を組み合わせたもの)は1枚もない。明るく光沢のある表面はいつも時計撮影においては厄介なものである。通常、時計撮影ではソフトライトを使用して壁や天井に光を反射させたり、光の配置やレフ板、黒い板を巧みに使って反射をブロックし、“ネガティブフィル”を加えることでダイヤルの光を調整する。また暗いダイヤルと明るい針を組み合わせると、写真撮影はさらに難しくなる。さらにアベンチュリンの内包物は、明暗の混ざり合いを引き起こすため捉えるのが難しい。直射日光を使うとホコリや汚れが目立ち、レタッチが難しくなるだけでなく、ダイヤルにきつい影をつくることもある。しかしソフトライトとハードライトを組み合わせ、レンズに星のエフェクトを生み出すフィルターを使用することで、夜空の星々のような輝きを再現することができ、明るい太陽の下で見る37.08 スターライトの体験に近づくことができる。

 下にある写真は、屋内で撮影した星のエフェクトをより一般的な方法で捉えたものだ(完璧ではないが)。影の中でも星が見え、周囲の光を拾っている。次の写真のように、より極端な角度から見ると、37.08のダイヤルが周囲の環境を取り込み、星雲のような雰囲気を醸し出しているのがよく分かる。赤くもやがかかったバラのような色合いは、おそらくレフ板を持っていた私の腕か、部屋の暖色系の色調によるもので、その赤みがかった雲のような効果を生み出したのだと思われる。写真撮影のミスだって? そうかもしれないがいい効果だと思う。

Ming 37.08 Starlight
Ming 37.08 Starlight

 次にミンの有名な“インバージョン(反転)”ショットだ。ミンの時計の特徴である、クリスタルの内側にあるインデックスにより、明るく白い面(写真撮影時にセッティングする光拡散板のようなもの)で反射すると、黒からほぼ白に“反転”し、インデックスの黒い影をダイヤルに映し出す。この効果を生み出すべくダイヤル上にサファイア層を追加しているほかのミンのモデルと異なり、アベンチュリンのポリッシュ仕上げだけで石の輝きを見せつつも自然にこのショットが撮影できる。撮りやすい時計をデザインすると、当然ながらチャレンジングな要素だけでなく時計の特徴も失われ、平凡で退屈なものになってしまうという事実がある。明らかに、それはミンのスタイルではない。たとえ彼がカメラのうしろで自らの作業を難しくしているとしてもだ。

Ming 37.08 Starlight

 時計のほかの部分について言えば、37シリーズ全体が腕にしっくりとなじみ、非常によく考えられたデザインであることから、私のなかで手頃な価格のアベンチュリンダイヤルとしてトップに躍り出ている。ただ正直なところ、ドレッシーなスタイルが好みでなくても、現時点ではどの37シリーズの時計も堅実な選択肢と言える。37.07 モザイクやモノリス、複数のバージョンの37.05 ムーンフェイズ、そして購入しなかったことを後悔している37.07 サンドなど、さまざまなモデルを実際に見てきたが、どれも17シリーズからの改良点が素晴らしく、つけ心地のいい時計になっている。

Ming 37.08 Starlight
Ming 37.08 Starlight

 最後に触れておきたいのが、ミンが今回の時計に組み合わせた20mmのユニバーサルブレスレットについて。このブレスレットは通常650スイスフラン(日本円で約11万6000円)の追加料金で販売されているが、現在は在庫切れとなっている。今回手にするまで実物を見たことはなかったが、オンライン上ではよく見かけていた。このブレスレットは驚くほど快適で、クイックリリース機能があるため交換も簡単、サイズ調整も付属のドライバー1本で完結する。ストラップよりもブレスレットを好む私としては素晴らしい選択肢だと感じる。もちろん、ブランドとして公式に認められているわけではないが、このブレスレットはほかの多くのブランド、特にF.P.ジュルヌにもよく合うようだ(ジュルヌのブレスレットに非常に似ている)。

Ming 37.08 Starlight
Ming 37.08 Starlight

 正直なところ、ミンが短いブランドの歴史のなかで一貫したデザイン言語を作り上げそれを維持している能力には感心している。世代やシリーズごとに行われる細かな改良の一つ一つが、デザインを強化しつつ、“ミンをミンたらしめる”ものを保ちながら創造性を発揮しているのだ。

Ming 37.08 Starlight

ミン 37.08 スターライト。直径38mm、厚さ10.9mm、ラグからラグまで45.5mm。316Lステンレススティール製ケース、100m防水。アベンチュリン製ダイヤル、トップクリスタル内にハイセラムインデックス、スーパールミノバX1コーティング針(ライトゴールド)。セリタベースの手巻きムーブメントMING SW210.M1搭載、時・分表示、約40時間パワーリザーブ、コントラストロジウムのサーキュラーブラシ仕上げを施したアンスラサイトのスケルトンブリッジ。ラグ幅20mmの第2世代ユニバーサルSSブレスレット(クイックリリース機能付き)。価格は4500スイスフラン(日本円で約80万5000円)。50%のデポジット有り、残金は納品時。受注はGMT標準時で2024年6月28日午後1時から開始。

詳しくはこちらをご覧ください。