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クイック解説
シチズン プロマスターは1989年の登場以来、陸・海・空の分野で活躍するプロフェッショナルたちに向け、高い耐久性と卓越した機能性を有するアクティブな時計を作り続けてきたブランドだ。ダイヤルやリューズに施された矢印型のアイコンはより高い空の上、より深い海の底への挑戦を示すものであり、その意志は昨今のプロダクトに至るまで機能やスペックの面で徹底して反映されている。そんなシチズン プロマスターは2024年、生誕35周年を迎えた。そして記念すべき年の始まりを祝し、航空分野にフォーカスした“SKY”カテゴリに2本のニューモデルが投入される。それが、1月25日(木)に発売を控えたブランド初の機械式GMTウォッチ、メカニカル GMTだ。
プロパイロットの使用を視野に入れたSKYシリーズからは、これまでもワールドタイム機能を搭載したモデルが数多く輩出されてきた。だがそのなかに、4本目の針、すなわちGMT針をゼンマイの力で動かす古典的なGMTウォッチは見当たらず、例えば1994年にリリースされたナビホーク(SKYシリーズの記念すべき1本目だ)からしてすでに液晶とサブダイヤルを併用したデジタル制御のワールドタイマーを採用していた。あらかじめモジュールに登録されている都市の時刻をリューズとボタン操作で呼び出すことで、簡単に第二時間帯やUTC(協定世界時)を表示できる仕様だ。その後、2000年台には電波受信方式による調整を取り入れたモデルやGPS衛星電波時計搭載モデルなども続いたが、SKYシリーズとしては基本的に電子制御によるワールドタイム表示の形を取ってきた。
まあこれは、プロマスターが高精度で高機能なプロフェッショナルツールにこだわってきたことの表れかもしれない。しかしブランド35周年にして、プロマスターは初めて機械式ムーブメントによって駆動する“Flyer”GMTウォッチを発表した。44.5mm径のソリッドなステンレススティール(SS)製ケースにグレーのメッキを施した固定式の24時間表示ベゼルが装着されていて、GMT針がこのベゼルを指し示すことで第二時間帯を知らせてくれる極めてアナログな時計だ。
フランジ部分は既存のSKYシリーズ同様に回転計算尺となっており、8時位置のリューズで操作することが可能だ。また、ベゼルの丸みを帯びた形状は航空機の機体をイメージしており、バンドのエンドピースに入れられた斜めのカットは翼断面に着想を得て空気の流れを表現したものだという。“プロマスター初の機械式GMT”という新たな取り組みを示す冠がついてはいるが、各ディテールはこの時計があくまでプロマスターのSKYシリーズに属するモデルであることを主張しているようにも見える。なお、ヘアライン仕上げを主体としたケースには要所にポリッシュによるミラー仕上げが施されており、全体のルックスにメリハリと高級感を生み出している。
防水性能は20気圧。搭載しているムーブメントはCal.9054で、最長約50時間のパワーリザーブと第2種耐磁を備えている。なお、今回のリリースでは、ベゼルのみにメッキを施したSSモデル Ref.NB6046-59Eと、ブレスを含めて全体にメッキを施したNB6045-51Hの2型が用意された。価格は前者が13万2000円(税込)、後者が13万7500円(税込)となっている。
ファースト・インプレッション
シチズンは同社のなかでも特に機械式時計に注力するブランドであるシリーズエイトから、2023年にFlyer GMT機能を搭載する880 メカニカルを22万円(税込)という価格でリリースした。2017年のチューダー ブラックベイ GMTの登場以来続いているFlyer GMT民主化の流れに、シチズンも合流した形だ(880 メカニカルについては、僕が去年、ジェームズが今年Hands-On記事を書いている。チェックして欲しい)。そして今回発売されるシチズン プロマスターのメカニカル GMTは、プロマスター SKYシリーズの正統進化というよりも、880 メカニカルに搭載されていたCal.9054を用いながら無骨なパイロットウォッチのパッケージで再構築したものだと僕は捉えている。
2003年のプロマスター エコ・ドライブ電波時計。
強いて言えば、メカニカル GMTは2003年にリリースされたプロマスター エコ・ドライブ電波時計を思い起こさせるデザインとなっている。針とインデックスの組み合わせにインナーベゼルの回転計算尺、リューズのローレット加工や特徴的なカッティングが入ったエンドピースなど、共通点は多い。だが、シチズンからのリリースには該当モデルの復刻やオマージュを匂わせる内容は一切見受けられない。直近のSKYシリーズを見てみても、デジアナ表示に43都市のワールドタイムを搭載し、それらをエコ・ドライブ光発電によって駆動させるハイスペックなモデルが目立っている。メカニカル GMTのデザインは、昨今の流れからするといささか唐突に見える。今作においてはプロマスター SKYシリーズのデザイン文脈を踏襲し、パイロットウォッチとしての“らしさ”を追求した結果、2003年のモデルに近いデザインに帰着したのではないかと考えている。
どちらかというとメカニカル GMTは、880 メカニカルに続く機械式GMTウォッチカテゴリの拡充に投じた一石としての意味合いが強いように思う。ムーブメントはそのままに、デザインの方向性や価格帯までも調整し、異なる層にアプローチをかけたというわけだ。880 メカニカルで特徴的だった情緒的な文字盤のあしらい(東京の夜景を表現したロマンチックなものだった)やツートンベゼルはその面影もなく、カラーと装飾を抑えたマッシブなデザインに終始している。
個人的には、この選択肢は非常に魅力的だと感じている。シチズンのFlyer GMTに価値を見出しつつも、880 メカニカルのコンセプチュアルなルックスがマッチしなかった人もいたのではないかと思っていた。(わかりやすいツールウォッチが好き、という僕の好みは置いておいても)シンプルなダイヤルデザインは、万人に受け入れられる受け皿として確実だ。また、税込で14万円を切る価格帯も注目すべきだろう。もちろんシリーズエイトは金属の表面仕上げに定評があるブランドではあるし、メカニカル GMTは固定式ベゼルのために第三時間帯まで表示できないといったデメリットもあるが、これまでFlyer GMTのベンチマークにされがちであったミドーのオーシャンスター GMTを大きく下回るプライスだ。GMTウォッチに求めるスペックが明確なら、メカニカル GMTは有力な候補となる。
ちなみに、個人的にはブレスまでブラックメッキで統一したRef.NB6045-51Hを推したい。リリースの画像では、サンレイダイヤルは控えめなグレーに見えるし、ダイヤル上の“GMT”表記やGMT針も全体に馴染むようモノトーンに抑えられている。まだGMT針の視認性にありがたみをおぼえるくらい旅をしていないからかもしれないが、視認性を重視する既存のSKYシリーズには見られないこのアプローチはかえって新鮮に映った。実際の色味がどうか、というところは実機で確認をしてみたい。
懸念すべきポイントがないわけではない。SKYシリーズとしては当たり前の寸法だが、直径44.5mmをどう捉えるかはあると思う。参考までに、ムーブメントを同じくする880 メカニカルは両回転式ベゼルを備えて直径41mmに収めていた(もちろん、880 メカニカルは10気圧防水でメカニカル GMTは20気圧防水と、ケースサイズはスペックにも反映されているのだが)。比較的小径が求められる昨今において、往年のパネライに迫るようなサイズ感は手首の上でどのように感じられるのだろう。写真を見た限りだがラグは短めに取られているし、厚みも12.7mmと少し控えめだ。より幅広い層に受け入れられる14万円以下のFlyer GMTにおいて、このサイズがどう影響するかは、タイミングがあれば追ってお伝えしたい。
基本情報
ブランド: シチズン プロマスター(CITIZEN PROMASTER)
モデル名: メカニカル GMT
型番:NB6046-59E、NB6045-51H
直径: 44.5mm
厚さ: 12.7mm
ケース素材: ステンレススティール
文字盤色: ブラック
インデックス: アプライド
夜光: 時分針、GMT針、インデックス
防水性能: 20気圧
ストラップ/ブレスレット: ステンレススティール
ムーブメント情報
キャリバー: 9054
機能: 時・分・秒表示、3時位置にデイト表示、GMT針による第二時間帯表示
パワーリザーブ: 約50時間(最大巻上げ時)
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 24
価格 & 発売時期
価格: 税込13万2000円(NB6046-59E)、税込13万7500円(NB6045-51H)
発売時期: 2024年1月25日(木)
限定: なし
詳細はシチズン プロマスターのWebサイトをご覧ください。