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Bring a Loupe 米軍支給サブマリーナーのペア、ブレゲ パーペチュアルカレンダー、ユニバーサル・ジュネーブ コンピュールなど

これらを含む注目の時計を、今週のHODINKEEコラム“What's Selling Where(どこで何が売られているか)で紹介。

改めてBring A Loupeへようこそ。前回はドレスウォッチが中心だったが、今回の人気コラムは、あなたのお気に入りエディターによって基本に立ち戻り、幅広いジャンルの時計を取り上げる。ミリタリー仕様のヴィンテージサブマリーナーから、ネオヴィンテージのブレゲ パーペチュアルカレンダー、1930年代製のユニバーサル・ジュネーブ クロノグラフまで、誰もが楽しめるアイテムがそろっている。しかもeBayからもちゃんと選ばれているのでご安心を。それでは、続きをどうぞ!

 まずは先週の結果を振り返ろう。ファンシーラグを持つ1950年代製のトゥルノーと、サインのないタンク サントレはそれぞれ1900ユーロ(日本円で約30万円)および3495ドル(日本円で約50万円)で希望価格のまま完売した。shopgoodwill.comでは競り合いがあり、1970年代製のJLCエトリエが1002ドル(日本円で約15万円)で落札。eBayに出品されていたフランソワ・ボーゲル製ケースのドクサは410.06ドル(日本円で約6万円)で落札された。

 さて、過去の結果はこのあたりにして、今週売りに出されている最高のオールドウォッチを紹介しよう!


チューダー サブマリーナのペア Ref.7928 米陸軍支給品、1966年製

 チューダーのRef.7928は、チューダーとロレックスのサブマリーナーのなかでも私のお気に入りのひとつだ。1959年から1960年代後半にかけて製造されたこのモデルは、今日のサブマリーナーのケースデザインがロレックスによって完成されたことを示すモデルでもある。数週間前に紹介した1959年製の美しい“スクエアリューズガード”の個体に見られるように、これはリューズガードを備えた最初のチューダー サブマリーナであり、生産期間中に細かな調整が繰り返された。

A pair of Tudor Submariners

 一方でロレックス サブマリーナーの場合、Ref.5512は特定のシリアル番号や製造年に絞り込む必要があるが、チューダー 7928はシンプルで扱いやすい。サブマリーナーが半世紀かけて進化してきたケースの変遷を、ひとつのモデルのなかで見ることができる。

 ケースの微調整だけでなく、7928にはサブマリーナーのなかでも特に興味深い文字盤バリエーションがある。通常はマット仕上げのダイヤルだが、チューダーの“ギルト”ダイヤルは魅惑的だ。さらにローズクラウンや6時位置に配された“スマイリーテキスト”といった細かなデザインディテールも個人的に気に入っている。1966年のごく短い生産期間中、チューダーは実験的に光沢のある“ギルト”仕上げを採用した。これはヴィンテージチューダーのサブマリーナーにおいて、唯一の光沢仕上げの文字盤だ。もちろんロレックスは1967年ごろまで一貫して光沢仕上げを採用していた。

A Tudor Submariner
A Tudor Submariner with gloss dial
A Tudor Submariner lug

 この2本のチューダー サブマリーナー 7928はほぼ同一だ。どちらも光沢のある“ギルト”ダイヤルを備え、1966年製である。実際、ケースのシリアル番号が連番になっており、少なくともこの2本のケースは連続して製造されたと考えられる。どちらも出自をたどると、米陸軍クォーターマスター部隊訓練センター(QUTC)のウィリアム・M・ベネット(William M Bennett)軍曹に行き着く。QUTCは陸軍の武器、弾薬、輸送手段を除くすべての一般補給物資の配給を担当していた。そのためベネット軍曹は、これらのチューダー サブマリーナーのような役目を終えた腕時計を入手することができたのだ。厳密に言えば、おそらくベネット軍曹がこれらの腕時計を“借りる”ことは許されていなかっただろうが、それでもこうして現存している。詳しい経緯はわからないが、この2本の腕時計はベトナム戦争中に米陸軍の所有物だったものだ。

 このサブマリーナーに見覚えがあるなら、ベトナムで銃弾を受けたチューダーを取り上げたHODINKEEの特集、The Long Returnを思い出すかもしれない。The Long Returnのサブマリーナーをよく見ると、同じ1966年製の光沢のある“ギルト”ダイヤルに気づくだろう。両者の最大の特徴は“T SWISS T”の文字の位置だ。これによりこの2本のサブとThe Long Returnのチューダーは同じシリアルレンジに属し、同じバッチで製造された可能性が高いと確認できる。

A Tudor Submariner that was shot by a bullet in Vietnam

 販売者であるDial Back Vintageのジョン(Jon)氏は、この2本のチューダー サブマリーナーをペアで出品した。価格は2本で4万5750ドル(日本円で約670万円)。詳細はこちらから。


ブレゲ Ref.3050BA パーペチュアルカレンダー、1980年代製

 ブレゲのパーペチュアルカレンダーの歴史は過小評価されがちだが、この分野ではほかのどのブランドにも引けを取らないほど豊かだ。もちろんアブラアン-ルイ・ブレゲ(Abraham-Louis Breguet)は2世紀以上前に、No.160 マリー・アントワネットのようにこの複雑機構を備えた重要な時計をいくつも手がけた。ネオヴィンテージ期にはショーメの支援を受けた名匠ダニエル・ロート(Daniel Roth)が、ブレゲを現代的なブランドへと再生させた。

A Breguet 3050 perpetual calendar

 ブレゲのサインが入ったロートの初めての時計は、パーペチュアルカレンダー懐中時計だった。Ref.3050はこの懐中時計をモデルにしている。ちょうど今、私のデスクにはブレゲのパーペチュアルカレンダーに関する膨大な資料がある。次号のHODINKEE Magazineでは、このテーマについてさらに深掘りする予定だ。

 今のブレゲ パーペチュアルカレンダーへの熱があるにせよないにせよ、私は長年ネオヴィンテージのブレゲがきわめて過小評価されていると感じてきた。ここ数年で、この時代のほかの時計とともに価格が上昇したとはいえ、パテック Ref.3940の価格を考えると4万ドル(日本円で約590万円)未満で手に入るのは非常に魅力的だ。さらにブレゲのほうが3940よりも先に登場し、製造数もはるかに少ない。

A Breguet 3050 perpetual calendar
A Breguet 3050 perpetual calendar
A Breguet 3050 perpetual calendar

 販売者は、この時計を初期製造モデルのひとつとして紹介している。ややマットな質感のオフホワイトダイヤルや特徴的なラグの形状がその証となる。すべてのコレクターズウォッチと同様、製造時期が早いモデルには通常プレミアムがつく。そのプレミアムによって時計マニアのなかでも、最もこだわる人々を満足させる“より希少”な1本を手にすることができるのだ。特にこの3050の初期モデルは、ゴールドケースにパティーナが生じやすく、私はその風合いに強く引かれる。

 販売者であるThe Keystoneのジャスティン・グルーエンバーグ(Justin Gruenberg)氏は、このブレゲQPを3万8500ドル(日本円で約570万円)で出品している。詳細はこちらから。


ショパール エトリエ イエローゴールド、1970年代製

 先週の鐙(あぶみ)型JLCは大きな反響を呼んだ! なんと、第1面を飾るトップニュースになったのだ。ニューヨーク・タイムズの記事を見ただろうか? “Goodwillが驚くべきルクルト エトリエをオークションに出品”と報じていた。大真面目な話、この1年あまり特徴的なシェイプを持つドレッシーで小型の腕時計が人気を集める一方で、エトリエはやや影を潜めていた。当初は“レディース”モデルとしてデザインされたが、パテック Ref.96やカルティエの多様なシェイプを好むコレクターが増えていることを考えると、エトリエのデザインもますますユニセックスに楽しめるようになってきた。

A 1970s Chopard Étrier
A 1970s Chopard Étrier
A 1970s Chopard Étrier

 先週のJLCはおそらくオリジナルで、少なくともエルメスを念頭に置いてデザインされたと噂されている。一方、このショパールの鐙型デザインは十分に個性があり、私の目を引いた。ブレゲと同様にショパールも、特にネオヴィンテージモデルが過小評価されがちだ。1990年代のCal.96.01はいくらか注目されてきたが、それ以外のブランドの歴史は比較的知られていない。エトリエや2ムーブメントのデュアルタイムなど、ショパールの時計は優れた価値を持つ。

 販売者であるパリのOtottoiのジュリアン(Julien)氏は、このショパールを2800ユーロ(日本円で約45万円)で出品している。詳細な写真や問い合わせはこちらから。


ロレックス オイスター パーペチュアル Ref.6286 ファセットベゼル、1953年製

 1950年代に製造された希少かつ興味深いロレックス オイスター パーペチュアル Ref.6286は直径34mmで、“セミバブルバック”オイスターケースデザインを採用し、ロレックスではとてもレアなファセットベゼルを備えている。私が知る限り、この特徴的なベゼルデザインを持つロレックスはこのモデルのみで製造数もごくわずかだった。

A 1953 Rolex

 初期のロレックス オイスターケースの魅力に引かれているなら、これは絶好の選択肢だ。エナメルダイヤルなどを除けば、オイスター パーペチュアルの各リファレンス間に大きな違いはない。この珍しいベゼルに対して高額なプレミアムがつくことはないだろう。それよりも重要なのはコンディションだ。

 その点、この時計は魅力的だ。ケースには使用感があり、おそらくポリッシュされているもののシェイプは美しく保たれている。一方“ハニカム”ダイヤルは美しく経年変化している。ラジウム夜光塗料の時代につくられた時計である以上、文字盤のパティーナにはある程度寛容であるべきだ。全体のトーンが均一で、大きなシミや針が長時間同じ位置に留まることで生じる深い焼け跡がなければ、私はこの時計にお墨付きを与えてもいいと思っている。

A 1953 Rolex Oyster Perpetual

 差し押さえ資産の清算売却により市場に出たが、保険評価額が高いためエスティメートもかなり高めに設定されている。少なくとも、まだいくつか入札の余地はありそうだが、この時計は価格に見合う価値がある個体だ。少し頑張ればロレックスの歴史的1本を手にできるかもしれない!

 このロレックス Ref.6286は、3月8日(土)午前9時(東部標準時)に開始されるConfiscated Assets AuctioneersのNo Reserve Ordered Fine Jewelry Liquidation Auction、ロットナンバー248で出品される。オークションの詳細はこちらから。


ユニバーサル・ジュネーブ コンピュール ブラックスネイルダイヤル、1930年代製

 ユニバーサル・ジュネーブ(UG)に関しては、1930年代から1940年代にかけて製造されたクロノグラフが個人的にお気に入りだ。もちろん、ポールルーターや“ニナ・リント”コンパックス、“エリック・クラプトン”トリコンパックスも大好きだが、それ以前のモデルにはまた別の唯一無二の魅力がある。さらにご存じのように、ユニバーサル・ジュネーブは現在、ブライトリングの傘下で復活の途上にある。

A 1930s UG Compur

 ブランド復活後の初リリースや、人づてに聞いた話を総合すると、今後の展開は上記のモデルや1960年代のほかのモデルに絞られるようだ。それはおそらく正しい判断であり、そこからどんなモデルが登場するのか楽しみにしている。ただこの1930年代製のコンピュールに関して言えば、現行のUGがこうした時計を近いうちにリリースすることはまずないだろう。手に入れたいなら自分で本物を探すしかない。

 これらのコンピュール、特にブラックのスネイルダイヤルを持つものはかなり希少で、コレクターでも偶然見つけるのは難しい。しかし幸いなことにLoupe Thisがその作業の大部分を担ってくれているので、かなり手間が省ける。コンディションという点では、この時計はまさに理想的な状態で見つかったものだ。使い込まれてはいるが酷使されたわけではなく、文字盤もきれいな状態を保っている。こうした時計を買うならダイヤルコンディションにはこだわりたい。この個体はその条件をしっかり満たしている。

A 1930s UG Compur
A 1930s UG Compur
A 1930s UG Compur

 オークションを主催するLoupe Thisはロサンゼルスに拠点を置き、この記事の公開時点での最高入札額は4700ドル(日本円で約70万円)。オークションは3月12日(水)午後12時(東部標準時)に終了した。詳細はこちらから。


ジャガー・ルクルト アスプレイ販売の9Kイエローゴールド、1968年製

 小売店のサインは一般的に賛否が分かれる。私は個人的に大好きだが、小売店のサイン入りの時計は絶対に買わないし、ましてやプレミアムを支払うなんてありえないというコレクターもいて、ずっと驚かされてきた。私にとってはティファニー、ギュブラン、カルティエ、そしてもちろんアスプレイのような名門小売店のほうが、縁もゆかりもないストックホルムのような場所の小売店よりはるかに魅力的に映る。アスプレイの歴史は1781年までさかのぼり、時計界におけるその地位は非常に高い。たとえばアスプレイのサインが刻印されたパテック 2499は2018年に388万ドル(当時の相場で約4億2800万円)で売却されたし、ロレックスとの関係も世界有数の歴史を誇る。特に、中東向けに販売されたユニークな時計の多くは、アスプレイを通じて流通しており、ハンジャルロゴが刻印されたモデルや、私にとって史上最高のジェムセッティングウォッチであるロレックス デイトナ Ref.6270もその一例だ。

A 1968 JLC retailed by Asprey
A 1968 JLC retailed by Asprey
A 1968 JLC retailed by Asprey

 デイトナ 6270やパテック 2499ではないものの、この時刻表示のみのシンプルなJLCは、私のなかではそれらの名品と同じ文脈に位置付けられる。裏には当時の英国の大手鉄鋼メーカー、ジョン・サマーズ&サンズ社の従業員に贈られたことを示す美しい彫刻が施されており、こうした背景を持つ時計はやはり特別な魅力がある。素材は英国市場向けとして正しい9Kイエローゴールドで、裏蓋の内側には英国市場向けであることを示す正しいホールマークが刻まれている。さらに、この時期のJLCの輸入業者であったドゥ・トラバースを表す“DTE”の刻印も入っている。この時計のコンディションは素晴らしい。ケースはシャープなラインを保ち、風防は軽く磨けばさらによくなりそうだ。メッキブレスレットの摩耗は気にしなくていい。私ならすぐに外してしまうから。

 英国・リーズのeBay販売者が、このアスプレイ JLCを3月9日(日)午後5時(東部標準時)に終了するオークションに出品され、この記事の公開時点で入札額は541ドル(日本円で約8万円)に達していた。詳細はこちらから。