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Bring A Loupeへおかえりなさい。今週のセレクションは、私自身も(おそらく読者諸兄姉も)見たことのない時計からスタートする。そしてカルティエ ロンドンの友人たちによるオールドクラシックス、そしてもちろんモバードへと続く。しっかり準備を整えて欲しい。
その前に先週の結果について。これまで市場に出たなかで最も素晴らしいチューダー サブマリーナーのひとつが8万ドル(日本円で約1200万円)で新しい持ち主を見つけたことを報告したい。1930年代製のジュネーブ・スポーツ クロノグラフは、希望価格の6300ドル(日本円で約95万円)で比較的早く売れた(ピート・アロンさん、おめでとう!)。eBayでは、オールドイングランド “ジャンボ・ベニュワール”があっという間に199ドル(日本円で約3万円)で売れ、ハーシー・チョコレート・カンパニーのブローバ アキュトロンが749ドル(日本円で約11万円)で落札された。全体として、先週のコラムは5つのうち4つが成約となった。素晴らしい結果だ。みんな、よくやった!
それでは今週のピックアップを見ていこう!
ショパール パーペチュアルカレンダークロノグラフ バイレトログラード “ユニークピース”、1996年製
2003年、ショパールの共同社長であるカール-フリードリッヒ・ショイフレ(Karl-Friedrich Scheufele)氏は『ヨーロッパスター』誌のインタビューで、「マニュファクチュールであるか、そうでないのか。その中間はないのです」と語っている。1990年代のショパールの時計を見ると、この言葉の精神を感じ取ることができる。この時ショイフレ氏が語っていたのは主に、ショパール初の自社製ムーブメントであるCal.1.96の開発についてであったが、この時計を現在の目で見てみると、1990年代に“真の”マニュファクチュールであるためにショパールが取った包括的なアプローチがうかがえる。つまり、高品質なタイムオンリームーブメントを製作しなければならないし、それは完璧な仕上げでなければならないということ。一方で顧客が非常識な要求をしてきた場合、エボーシュをベースにその要求を実行する能力も必要だ。
まず最初に言っておくが、この“ユニークピース”は控えめに言っても正真正銘のユニークな時計である。外観は驚くほど個性的で、仕上げ、オープンワーク、希少性に目を引かれた。それからケース、プッシュボタン、リューズを見て、正直言ってこの時計にはあまり引かれなくなった。しかしそうは言っても、深く見るほどにこの非常に高価な一点物のショパールに惚れ込んでいった。
このバイレトログラード パーペチュアルカレンダー クロノグラフの複雑機構は比較的新しいものだ。私の知る限り、この時代に同様の機構を搭載したブランドはほかにロジェ・デュブイだけである。両ブランドとも同じエボーシュを使用しており、それが伝説的なレマニア2310であることは注目に値する。簡単に言えば、あなたのお好みのクロノグラフはおそらくこれと同じレマニアのキャリバーをベースにしているだろう。パテック(5004、3970、5970、5070)、オメガ スピードマスター、ヴァシュロン コルヌ・ドゥ・ヴァッシュなど、そのほかにも多くのモデルがある。そこにロジェ・デュブイを引き合いに出すことに抵抗はない。1990年代にはロジェ・デュブイに匹敵するレベルの時計を製造していたブランドはほとんどなかったのだから。ロジェ・デュブイの時計を手にしたことがある方なら、私が言わんとすることがわかるだろう。このショパールをそのレベルと並べて語るのは、本当に称賛に値する ということだ。
技術的なスペックや仕上げ以上に、この時計をじっくり観察し、調べれば調べるほど、私はその90年代的な美学に惚れ込んでいった。丸みを帯びた“文字盤”の縁や、それを外側のチャプターリングに固定しているネジがたまらない。とても魅力的だ!
出品者であるルナオイスターのキリル(Kirill)氏が希望する価格は7万5000ドル(日本円で約1100万円)。詳細はこちらから。
カルティエ ロンドン タンク アロンジェ、1974年製
イギリスの小さなオークションでカルティエ ロンドンの品々が大量に出品されているのを目にしたとき、私は強く興味を引かれた。よく調べてみると、そのうちのいくつかには不満や懸念がある。針や文字盤が交換されている可能性といった、ヴィンテージカルティエウォッチにありがちな難点だ。とはいえ、このタンク アロンジェは私の目には問題なく見えるし、結果的に出品されたなかで最も希少な1本であることが判明するかもしれない。
第2次世界大戦後にカルティエ ロンドンの経営を引き継いだジャン-ジャック・カルティエ(Jean-Jacques Cartier)は、しばらくして落ち着いてから腕時計への情熱を追求し始めた。カルティエ一族のほとんどがジュエリーに重点を置いていたのに対し、タンク、タンク ルイ カルティエ、サントスなどのデザイナーであるルイ・カルティエ(Louis Cartier)とジャン-ジャックが生粋の“ウォッチガイ”であることは比較的容易に見て取れる。現在、カルティエといえば、このふたりのどちらかが手がけたデザインやモデルが思い浮かぶだろう。タンク アロンジェは1960年代のカルティエ ロンドンの広告にいくつか登場しており、ジャン-ジャックがこのブランドのクラシックなスタイルに初めてアレンジを加えた作品のひとつと言われている。私がロンドン工房の作品を愛してやまないのは皆が知るところだ。私は常に市場をフォローし、新しい出品物を探している。このモデルはこれまで2~3回しか見たことがなく、そのうちのひとつはホワイトゴールド製でコレクションの一部、もうひとつはカルティエ社の所蔵品であるイエローゴールドのものだが、それら以外にもうひとつ見たことがあると思う。
このモデルをタンク“ミニ”アロンジェと表記している出品者もいるが、私ならそれをそう分類するかどうかは疑問だ。オークションハウスは横17mmとしか記載していないが、縦はおよそ30mmくらいあり、実際に腕に巻くとかなりいい感じだろう。細身でやや小振りなタンクを受け入れられるなら、このモデルは完璧だ。当時ミニサイズやレディース用としてつくられたものではないことは確かである。
このカルティエ ロンドン タンク アロンジェは、ドレウィッツ(Dreweatts)が2025年3月20日に開催するFine Watches, Pens and Luxury Accessoriesオークションのロット427である(カレンダーのリマインダーを設定しておこう。少し早めの紹介になるが、チェックして欲しい!)。詳細はこちらから。
ポルシェデザイン by IWC ウルトラ スポルティボ、1990年代製
ここで少し流れを変えてみよう。このポルシェデザイン(PD)のウルトラ スポルティボは、1000ドル(日本円で約15万円)以下でPDを身につけることができる素晴らしいアイテムだ。ポルシェデザインとIWCの提携は1978年から1997年まで続いた。その初期に発表されたPDクロノグラフ1やコンパスウォッチが最も注目を集めたが、私は常にこれら1990年代の後期モデルに興味をそそられてきた。この時期、両社の提携はひとつのコレクションへと成長する。PDは“普通の”時計であるウルトラ スポルティボ、ダイバーズウォッチのオーシャン、世界初のチタン製クロノグラフのタイタン、そしてコンパスウォッチをラインナップに加えていた。これら4つのうち、ウルトラ スポルティボのさまざまなバリエーション(ウブロ風のストラップと、今回紹介するようなフルチタン製ブレスレットの両方がある)は、PDのデザイン言語に親しむためのいちばんの近道である。
提携末期になると、これらの時計のブランディングに変化が見られる。IWCよりもポルシェデザインのデザイン言語に明確にシフトしていくのだ。文字盤の12時位置には筆記体の“International Watch Co Schaffhausen”ではなく“PORSCHE DESIGN”の文字が大きく誇らしげに配され、6時位置に小さく“by IWC”と書かれている。この変化の理由は興味深い。90年代初頭には、ポルシェデザインのラインナップはIWCの売り上げの20%を占めていたと言われ、かなり好調な売れ行きだった。その結果、PDは時計製造により多く投資しようと考えた。ポルシェ一族はこの時期にIWCの買収を検討したが、JLCやマンネスマンの支配を揺るがせることさえできなかった。さらにヴァシュロンにもオファーを出したと言われている。結局、ポルシェデザインは1995年にエテルナを買収した。
ポルシェデザインがエテルナの立ち上げを本格化させるなか、PDの文字盤でIWCの文字を目立たせることにあまり興味を示さなくなった。この時計に非トリチウム夜光塗料が使われている点を考慮すると、IWCとの提携の最後の数年間に製造されたものだと推測される。予想どおり、ウルトラ スポルティボはクォーツ駆動で超薄型。装着感がとてもよく、レトロな雰囲気も漂う直径32mmの腕時計である。日常使いに最適で、ポルシェデザインの歴史においても興味深い一品だ。
ウィスコンシン州マディソンのeBay出品者がこのモデルを出品している。詳細はこちらから。
モバード フランソワ・ボーゲル製防水ケース、1950年代製
初期のパテック フィリップ カラトラバへの関心が高まりつつある今、同時代の同様にエレガントなタイムオンリードレスウォッチにも関心が集まるのはもはや必然に思える。常連の読者諸兄姉ならよくご存じのように、私はモバードの、そしてケースメーカーのフランソワ・ボーゲルの大ファンである。後者はパテックのスティール製Ref.96ケースの多く、およびすべてのRef.565ケースのサプライヤーだ。このモバードは1940年代後半または1950年代前半に製造されたもので、ボーゲルのスクリューバックケースのおかげで文字盤に“sport”と刻印されていることもある。ボーゲル製ケースのモバードはよく見かけるが、このモデルはほかのものより少し早い時期のもので、1950年代や60年代によく見られる角ばったデザインではなく、より丸みを帯びたミドルケースとラグを備えている。
ラジウム夜光塗料がたくさん使われているのでその点は留意すべきだが、この時計のコンディションは素晴らしいものに見える。夜光塗料には魅力的なエイジングが見られ、ケースはしっかりとした厚みを保っているようだ。さらに、当時のクールなモバードの箱まで付いているのだ! 直径34mm、厚さ10mmのこの時計は2025年に着用するのに非常に適しており、多くの手元にとって小さすぎることはないように思う。
このモバードは、Bamfords Auctioneers & Valuersが2025年2月27日に開催するThe Bakewell Watch Auctionのロット1033である。詳細はこちらから。
オメガ スターリングシルバー製パースウォッチ、1930年製
締めくくりに、eBayから楽しい一品をご紹介しよう。このアール・デコ調のパースウォッチ(編注;旅行用のトラベルウォッチ)は、我々が通常取り上げる腕時計とはひと味違う。マーク(・カウズラリッチ)には秘密だが、私は今でも懐中時計が少し苦手だ。“嫌い”という言葉の強い意味で嫌っているわけではなく、標準的な丸い懐中時計を見ると目が霞んだようになってしまうのだ。しかしパースウォッチは(あるいは特徴的な形の懐中時計なら)、デザイン的な観点から見てもう少し私の好みに合っている。ここで紹介するのはクラシックなパースウォッチのケースデザインで、“時計”の部分が上からスライドして出てきて蝶番で開くことで、まるでトラベルウォッチのような構造になっている。純スターリングシルバー製で、1930年製だ(ケース仕上げや文字盤のデザインからすでにおわかりかもしれないが)。
“パース”という言葉に惑わされないでほしい。当時の紳士たちの多くは、腕時計や標準的な懐中時計よりも、このような時計をポケットに入れておくことを好んだ。“パース”という名前は単に俗称が定着したものに過ぎない。
ベルギーのeBay出品者が、このアール・デコ調のオメガを999ドル(日本円で約15万円)で出品している。詳細はこちらから。