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Bring a Loupe ロレックスのプレデイトナ、ギャレットのハーバード モノプッシャー、そして怪しいパテック フィリップなど

今週のHODINKEEコラム、“What's Selling Where(どこで何が売られているか)”では、これらを含む時計を紹介。

Bring A Loupeにようこそ! インターネットでヴィンテージウォッチの買い物をすればするほど、“低品質の”時計を目にする機会も増える。“どの時計にも、ふさわしい手首がある”というフレーズを過去に耳にしたことがあるが、実際のところ私にはそれが正しいとは思えない。単に経験的に不可能であるというだけではなく、なかにはもはや手遅れな時計もあるからだ。今日のコラムで取り上げるのは、欠陥はありつつも着用は可能な“入札者要警戒”のパテックだ。この時計にふさわしい手首はあるだろうが、まずは詳細を確認するべきだ。ここに書いてあることを読んで気に入ったなら、コメントを残して欲しい。私はこうした欠陥のある時計から、完全にひどいもの、手遅れなもの、さらには紛う方なき偽物まで“低品質の”時計ばかりを1週間特集することを考えている。

 だけどまずは結果だ! 連番のシリアルを持つ米軍支給のチューダー サブマリーナ2本は、新しい持ち主のもとへ。提示価格は4万5750ドル(日本円で約680万円)だった。オークションでは、ファセットベゼルを備えたロレックス Ref.6286が2750ドル(日本円で約40万円)、ユニバーサル・ジュネーブ コンピュールがLoupeThisで9350ドル(日本円で約140万円)で落札された。eBayではアスプレイのサイン入りジャガー・ルクルトが1299ドル(日本円で約19万円)で落札された。

 さて、それでは今週の時計に移ろう!


ロレックス Ref.6238 “プレデイトナ”、1966年製

 このリファレンスには特別な魅力がある。過去数年間、ほかのどのヴィンテージロレックスよりも6238について尋ねられることが多かった。ユニークな外観、比較的珍しい存在、そしてコレクターの高い需要...それらが絶妙に重なった結果かもしれないが、理由はどうあれこのリファレンスは常に熱望されている。一部の資料によると、6238の生産数はおよそ3000本とされている。ただしこれはヴィンテージロレックスの話であり、デイトナやプレデイトナの生産数を正式に記した書籍はまだ発行されていないため、実際のところは不明だ。それでも市場の動向を見る限り、6238はのちに登場したデイトナリファレンスよりもはるかに希少なようだ。

A Rolex ref. 6238 with a silver dial

 希少性はさておき、6238は理想的なポジションにある。 それ以前の“プレデイトナ”は文字盤に複数の目盛りがあったり、“矢じり型”のインデックスやラジウムがたっぷり塗られた大きな針など、クセのあるデザインが多かった。だが6238はデイトナそのものではないものの、これほどデイトナに近いモデルはほかにない。

 一部のコレクターにとって、ヴィンテージデイトナをつけることはある種のメッセージを発することになる。だが6238は“ヴィンテージロレックスに本気でハマっている”とか“自分は筋金入りのマニアだ。デイトナなんて5年前の話だ”といった雰囲気を醸し出す。少し言い過ぎかもしれないが、どんな理由で6238をつけても構わない。どうであれ口を挟むつもりはない!

A Rolex ref. 6238 with a silver dial
A Rolex ref. 6238 with a silver dial
A Rolex ref. 6238 with a silver dial on the wrist

 このシルバーダイヤルを備えた個体は適正な価格で市場に登場し、全体的に良好なコンディションを保っている。ケースはしっかりしており、軽くポリッシュされた形跡はあるものの、特に気にするほどではない。針と文字盤の夜光塗料はしっかりと残っており、経年変化によって味わい深いクリーム色へと変化している。これまで見てきた6238の多くは夜光が劣化していたり一部が剥がれ落ちていたりすることが多かったが、この個体では大きな問題はなさそうだ。販売者によると文字盤表面に斑点があるとのことだが、まあ目に入るものの個人的にはさほど気にならない。

 販売者のMann About Timeのロビンは、このロレックス プレデイトナRef.6238を3万5000ポンド(日本円で約680万円)で出品している。まだ新着アイテムでウェブサイトには掲載されていないが、こちらのInstagramで確認できる。


ロレックス オイスター Ref.2416 18Kイエローゴールド、1934年製

 引き続きロレックスの話題だが、今回は初期のオイスターケースを紹介しよう。バブルバックが登場する前の時代に作られた手巻きモデルで、フラットな裏蓋を備えたRef.2416は、滅多にお目にかかれない。あまりに珍しいため正直なところ語れることもそれほど多くない。ロレックスが1950年代にカタログを確立する前は、このような短期間しか生産されなかったリファレンスが数多く存在していた。この時代のロレックスで興味深いのは、“いかにもロレックス”とは言えないデザイン言語が用いられている点だ。クッションケースにツートンのアール・デコ調ダイヤルなど、当時のほかのブランドが採用していたデザインに近く、後年のロレックスとは異なる雰囲気を持つ。のちのモデルでは市場の他社製品とは明確に一線を画すロレックスらしさが確立されていくが、この時期のモデルはその過渡期にあたる。

A Rolex Oyster in 18k yellow gold

 この時計を見て真っ先に思い浮かんだのは、昨年11月のジュネーブオークションシーズンで目にしたRef.3139だった。アンティコルムに出品されたこのステンレススティール製クッションケースのロレックスは、そのシーズンの“隠れた注目株”だと考えていた。結果はまずまずで、4000スイスフラン(日本円で約70万円)で落札されたが、市場全体で見れば決して高額とは言えない。この2416はゴールドであるため、多少のプレミアムがつくことを考慮しても同じような価格帯になると予想している。それでも想像以上に手ごろな価格で、非常に興味深いロレックスを手に入れることができるだろう。

A Rolex Oyster in 18k yellow gold
A Rolex Oyster in 18k yellow gold
A Rolex Oyster in 18k yellow gold

 文字盤には、南アフリカのケープタウンの小売業者、Murdock’sのサインが入っている。現在も営業を続けるMurdock’sは、“ケープタウン最古の宝飾店”を自負しており、その創業は1897年にまでさかのぼる。ケースには多少の研磨痕があるものの、ケース側面と1時位置のラグ上に刻まれたホールマークはしっかりと残っており判読も可能だ。これを確認したことで、この時計が18Kゴールド製であることがわかった。

 このロレックス Ref.2416は、3月14日(金)から19日(水)まで開催されたSchuler Auktionen AGのArt, Antiques, Vintage & Lifestyleセールのロット2124で出品。エスティメートは2000~3000スイスフラン(日本円で約34万~50万円)。オークションリストはこちらから。


ギャレット ハーバード レギュレーター モノプッシャークロノグラフ、1940年代製

 時計業界の公然の秘密が、ついに正式なニュースとなった。ブライトリングがギャレットを買収したのだ。ブライトリングによる“公式な”ギャレット復活の発表がされた今、私のお気に入りのヴィンテージモデルのひとつを紹介するには絶好のタイミングだと思った。本個体の文字盤にはギャレットの名前は見当たらないが、当時ギャレットはこのレギュレーター仕様のデザインと、ビーナス製Cal.140ムーブメントの独占権を有していた。そのため異なるブランド名がついていたとしても、それは紛れもなくギャレット製なのだ。

A Harvard chronograph by Gallet

 ムーブメントに刻まれているとおり、ハーバード(インペリアル・ウォッチ・カンパニー)はこの時代にクロノグラフを主軸としたブランドで、ギャレット製のモデルをいくつか展開していた。現在ではギャレットの時計には少しプレミアムがつく傾向があるが、同じモデルでもハーバードの名がついたものは一般的に低価格で取引される。だが実際のところ希少性はむしろ高い。ケースサイズは直径34mm、ラグ・トゥ・ラグで38mm。私の目にはこのケースデザインは、パテックのRef.96に近しいように感じられる。特にベゼル上部のフラットなエッジが魅力的だ。

A Harvard chronograph by Gallet

 レギュレータークロノグラフはあまり市場に出回らない。職場での業務や週末のカーレースなどでクロノグラフを頼りにしていた時代において、このレギュレーターはストップウォッチ機能を優先し、1日の時刻表示は12時位置のインダイヤルに追いやられている。ギャレットはこの時計をふたつのバージョンで製造した。ここで紹介する第1世代は、モノプッシャー仕様であることがひと目でわかるが、第2世代は一般的なスタート/ストップとリセットのレイアウトになっている。

 ニューメキシコ州アルバカーキのeBay出品者が、このハーバード クロノグラフをオークションに出品。終了日時は東部時間3月16日(日)午後5時49分。記事の公開時点では、900ドル(日本円で約13万円)の開始価格にまだ入札はなかった。詳細はこちらから。


モンディア(ミニ)ダイバー、1970年代製

 モンディアは以前にもBALのページで取り上げたが、ここで関連する話を簡単に紹介しよう。1971年にモバードとゼニスが合併した際、実は3社目としてモンディアも加わっていた。しかしこの合併について語られる際には、モンディアの存在がほとんど言及されないのが実情だ。モンディアは規模の小さなブランドで、デザインを重視しながらも既製品のキャリバーを活用していた。私が見つけたモデルの多くもそうだが、どうやらモンディアはイタリア市場を意識した展開をしていたようだ。

A Mondia Mini Diver
A Mondia Mini Diver movement
A Mondia Mini Diver

 これは直径30mmのダイバーズウォッチでブランド名はモンディアだが、ハングタグには“Mondia é una marca di Zenith(モンディアはゼニスのブランド)”と記されている。ムーブメントはゼニス製ではなく、ア・シルト製のものを搭載。1970年代の短期間、モンディアはゼニスにとってチューダーのような位置づけのブランドとして展開されていた。組み立てはゼニスが行っていたが、ムーブメントには“スタンダードな”エボーシュが採用されていた。ほぼ新品同様のコンディションに見え、小型のユニークなダイバーズウォッチを探しているなら、350ドル(日本円で約5万円)未満で手に入る理想的な1本だ。

 イタリア、ナポリのeBay出品者がこのハーバード クロノグラフを299ユーロ(日本円で約5万円)の即決価格で販売している。詳細はこちらから。


入札者要警戒: パテック フィリップ カラトラバ Ref.565 ステンレススティール、1950年代製

 私のお気に入りのヴィンテージカラトラバのリファレンスのひとつなので、565が市場に出たりオークションに出品されたりするのを見逃すことはほとんどない。35mm径の耐水ケースを手がけたのは、ほかならぬフランソワ・ボーゲル(François Borgel)だ。この時計は多くの点で、パテック初のスポーツウォッチと呼べる存在だ。現代の基準では“ドレッシー”な印象だが、もし1940年代に万能なタイムオンリーのパテックを求めていたならこのモデルが最適だったはずだ。この個体は、Cal.27SCを搭載することでセンターセコンド仕様となっており、SS製のケースに誰もが愛するブレゲ数字を備えている。これだけの条件を満たしているにもかかわらずなぜ入札者要警戒としたのか?

A Patek reference 565

 この565が最後に販売されたのは、2001年にアンティコルム・ジュネーブで行われたオークションだった。それからの24年間で、どうやら厳しい扱いを受けてきたようだ。当時の文字盤は許容範囲の状態で、一見するとオリジナルのラジウム夜光に若干のくすみがあり、針の夜光も少し暗くなり、軽い経年変化が見られただけであり特に問題はなかった。しかしその後、この時計は新しい夜光塗料で再塗装されたようだ。色味は以前よりも白っぽく、あるいは緑がかったものになっている。オリジナルの夜光ではないというだけでなくその色合いが個人的には魅力的に感じられない。

A Patek reference 565

Left image courtesy of Antiquorum.

 まあ夜光塗料の再塗装はよしとしよう。だがさらに詳しく見ていくと、文字盤の外周部分に雑な再印刷が施されているのがわかる。最もわかりやすいのは、6時位置の“30”の“3”の上部が丸くなっている点、“50”の“5”、そして“10”の“0”だ。興味深いことに、一部のアウタートラックは“20”や“25”のようにオリジナルのまま残っているように見える。プリントが重なっていることから、再印刷は部分的に施され、元のトラックと数字の上に直接印刷されたのだろう。2001年の写真を確認すると当時のトラックはオリジナルのままだったようだ。

 最後に、“Patek Philippe Geneve”のサインが24年前と比べて明らかに薄くなっている。これは文字盤がヤスリがけされた証拠だ。このサインはもともとエナメル象嵌で施されており、その目的のひとつは文字盤の研磨やクリーニングが可能になるようにすることだった。しかし今回はやりすぎてしまったようで、サインのエナメルはほとんど残っていない。

A Patek reference 565
A Patek reference 565
A Patek reference 565

 これらの手がかりを総合すると、目の前のこの時計は壊滅的な出来事とずさんな修復の結果だと推測できる。ひょっとすると、水がケース内に入って文字盤が損傷したのかもしれない。そのあと誤った“修復専門家”に依頼され、人に見せられる状態へと復元されたのだろう。理由はどうであれ、入札を検討するならこの文字盤の印刷がオリジナルとはかけ離れていることを理解しておくべきだ。

 こちらがオークションのリンクだ。入札者要警戒。クリックは自己責任で。