我々は知っている。GSはロレックスやオメガの競合として、ケースや文字盤における仕上げの限界に挑戦し、特に正確な計時を得意としている。一方、セイコーはバリューの世界を重視する。一部のコレクションを除き、セイコーは10万円以下で販売される時計を製造する傾向があり、堅牢な耐久性と機械式時計の入門機を提供しているが、正確さに注力しているとは言えない。
ここ数年、セイコーは、華麗な文字盤デザインやムーブメント的にも素晴らしい限定復刻版など、ラグジュアリーウォッチに対抗するような時計を次々と発表している。つまり、その差は縮まりつつあるのだ。そして先月、1960年代半ばから(スタイリッシュに)テレポートしてきたキングセイコーから新しい自動巻きモデルが発表されたのだ。
では、この堂々とした名前について、セイコーのブランディングはどうなのか? セイコーとグランドセイコーの隙間を埋める、あるいはセイコーのカタログにない明確なセグメントを表現していると言いたいところだが、このワイルドな時計の世界のすべてのものと同様に、それはもっと複雑なのだ。
キングセイコーは、リバイバルと定義するのが最もふさわしい。GSが独立したブランドであるのとは異なり、このブランドはセイコーの傘下にある。本機は1965年に発売されたキングセイコー KSKの復刻モデルで、実際、その時計をほぼ1対1で再現していると言っていい。
プロスペックス、プレザージュ、セイコー5 スポーツといったサブコレクションがあるなかで、本当に別ブランドのセイコーは必要だったか。おそらくそうではなかったのだが、キングセイコーはカルト的な人気を誇っている。そして、この新しいセイコーのサブコレクション(いくつかのダイヤルカラー)が先月発表されたときのオンライン上での反響から判断すると、セイコー愛好者たちはこの新しいラインを大いに歓迎したようだ。
本日は、シルバーの文字盤カラーにスティールブレスレットを組み合わせたSDKS003をご紹介したい。すべてのバリエーションのなかでこのモデルが一番気になり、レビューのために取り上げる必要があると思ったのだ。ミッドセンチュリー的な感性に溢れたストレートで無駄のない文字盤デザインは、キングセイコーのエスプリを最もよく表していると思う。
さて、私はキングセイコーの熱心なファンではないし、かつてそうだったこともない。なので、このハンズオンには、清廉潔白な良心を持って臨む。KS(そう、我々は今そう呼ぶ)で最も印象的だったのは、それがデザインピースとしていかに自信を持っているかということだ。ブレスレットから、ケースのファセットラグ、シンプルな-日付のない-ダイヤル、6時近くのレトロな「King Seiko」のワードマーク、ロゴ入りリューズまで、すべてが調和している。
この時計には余計なものが一切ないが、場合によってはそれが欠点になることもある。例えば、文字盤のどこにも夜光がないことにお気づきだろうか。つまりこれは、この時計が日中専用の時計であり、夜行性ドラキュラ族のメンバーはわざわざ購入する必要がないことを意味している。クラスプが見えないことで、エレガントなデザインに仕上がっているが、これはバタフライ式のエンクロージャーを採用していることを意味する。私は概してバタフライには反対だ(自然界ではなく、腕時計に)。なぜなら、バタフライは腕時計の着脱を直感的に行う手段ではないから。私は日中、時計を見るために常に時計を外しているので、頭を使わなくて済むようなあのメカニズムが必要なのだ。
しかし、これらは小さな不満にすぎない。なぜなら、最終的にこの時計は、上品で懐古的な、『マッドメン』スタイルのドレスウォッチ、つまりオフィスウォッチになることを意図しているからだ。1960年代のマディソンアベニューのオフィスの明るい蛍光灯の下で、誰が夜光を必要とするのだろうか?
文字盤は、夢のようなシンプルさの極致だ。これほど見事なサンレイシルバーであれば、白樺の模様(メナンシオさん、ごめんなさい)も、派手なエフェクトも必要ないだろう(縦方向のサテン仕上げも悪くないが)。12時付近にはSeikoのロゴが入り、King Seikoの文字はブラックでプリントされている。マーカーはアプライドで、12時は、他のマーカーに比べて2倍の幅があり、コントラストがなくても視認性が高い。基本的にこの時計はすべてシルバートーンで統一されている。
腕にはめると、角ばったケースは37mmという抜群のサイズ感で心地よくフィットする。しかし、そこにはセイコーらしさも感じられる。遠くから見ると、スタイリングが似ているロレックスのオイスター パーペチュアルのような感触だと思われるかもしれないが、そうではない。ロレックスは丸みを帯びたソフトな装着感だが、KSはシャープな印象だ。感触と言うより、そう思う。クラスプはともかくとして、ブレスレットはとてもいい。ジュビリーのようでもあるが、ケースに感じた多角形の感触に近いものがリンクのひとつひとつにもある。
裏を返すと、King Seikoの文字が刻印されたクローズドタイプのケースバックが目に入る。シースルーのケースバックはすべてのヴィンテージ感を追い払ってしまうので、クローズドのケースバックデザインに忠実であり続けたこのブランドに賛辞を贈りたい。ケースのなかにはセイコーのCal.6R31が搭載され、1日あたり25秒から-15秒の「よいが素晴らしいとは言えない」精度(特に19万8000円・税込のプライスタグを考慮)と70時間の輝かしいパワーリザーブを提供している。ひと月の誤差15秒を誇るグランドセイコーのスプリングドライブとこの時計を比較はしないが、キングになりたいなら、もう少しタイトにしてほしいところだ。
これは1965年のキングセイコーのカーボンコピーなのか? いや、違う。むしろ現代的な品質を犠牲にすることなく、かつての時計に限りなく近づいたと言えるだろう。これはクリーンなデザインの、ヴィンテージ風セイコーの最高傑作だ。ジョン・ハム(Jon Hamm)氏にモデルになってもらえなかったのが残念だ。代わりに私で我慢してくれ。RJD2『マッドメン』のテーマソングをどうぞ。
キングセイコー SDKS003 37mmのSS製ケース。セイコーCal.6R31自動巻きムーブメント、2万1600振動/時。時、分、秒表示。SS製ブレスレット、鏡面仕上げとヘアライン仕上げ。価格:19万8000円(税込)。発売中。
All photos, Kasia Milton