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モダン フィフティ ファゾムスの歩み
ブランパンのフィフティファゾムスは、1953年に登場して以来、ダイバーズウォッチの技術とデザイン的な基準の確立に貢献してきた先駆者的な存在です。クォーツ革命によってブランドが休業状態になり、フィフティファゾムスの生みの親であるジャン=ジャック・フィスターの退陣後には、同モデルの歴史も一旦途絶えることとなりました。
ブランパンが新章を開いた1980年代は、ムーンフェイズの再導入を含むコンプリケーションの開発に力を入れた結果、ダイバーズウォッチの生産は一時的に停止されることとなります。再びフィフティ ファゾムスの名が現れるのは、1997年のこと。GMT、エアコマンドとともに陸海空の限定のトリロジーコレクションのひとつとして一時的に復活しました。
それから6年後、フィフティ ファゾムスが50周年を迎えた2003年に150本の限定モデルが発表されます。今ではアイコニックなフィフティ ファゾムスを構成する重要な要素のひとつとなっているベゼルトップのサファイアクリスタルは、このときに初めて与えられました。このアイデアを取り入れたのは、2002年から現在まで社長兼CEOを務めるマーク A. ハイエック氏。彼は幼少期から海に魅了された熱心なダイバーであり、当時から自身の経験を活かしたアップデートを加えていました。
50周年記念モデルの大成功を受けて、ブランパンは2007年にフィフティ ファゾムス Ref.5015を発表します。これまでのような限定モデルではなく、ついにレギュラーモデルとして完全復活を遂げました。内部に新開発ムーブメントのCal.1315が搭載されたことで、ケースサイズは直径40.3mmから45mmへと拡大。Cal.1315は2万8800振動/時で駆動し、パワーリザーブはなんと約5日間。基本的な外観は前モデルに似ていましたが、インデックスの3、6、9、12 時位置のアラビア数字はそのままに他のスクエアインデックスはレクタングルに変更されるなど、ディテールに変更も加えられました。
当初は日付表示機能を備えたスティールのみで展開されたRef.5015は、その後チタンやゴールドといった異なる素材やクロノグラフやトゥールビヨン、ビッグカレンダーやコンプリートカレンダーなどさまざまな複雑機構が搭載されるようになり、フィフティ ファゾムスコレクションはブランドの根幹を担うコレクションへと拡大していきます。また一方で、フィフティ ファゾムス トリビュート・トゥ MIL-SPEC、フィフティ ファゾムス バラクーダやフィフティ ファゾムス ノー ラディエーションのように直径40mmのより小さいケースを採用し、主にヴィンテージピースにインスパイアされた限定版や特別版も次々と登場していきました。
昨年、モデル創立70周年を記念して、ブランパンから魅力溢れる3つのモデルがリリースされました。特に第一弾モデルである限定のフィフティ ファゾムス70周年記念 Act 1は、新設計の42mm径のスティールケースが採用され、過去を振り返るだけでなく、注目すべき新シリーズの序章として位置づけられました。
そして今年は非限定の42mmバージョンが新たにコレクションに加わりました。スペックシートには直径42.3mm、厚さ14.3mm、ラグ幅は21.5mmとあります。サイズは変更されましたが、全体にサテン仕上げが施されたケース、逆回転防止ベゼル上の特徴的なドーム型のサファイアクリスタル、インデックスだけでなくベゼルまで塗布された夜光などフィフティ ファゾムスのファミリーに属していることはひと目見てわかります。内部のムーブメントにも変更はありません。ケース素材にスティールモデルはなく(少なくとも現時点では)、グレード23チタンと18Kレッドゴールドのみです。
小径化されたとはいえ42.3mmは依然としてそれなりの大きさを保っていることに変わりはありません。ですが2.7mmの小径化と1.3mmの薄型化は、手首へのフィット感と視覚的な効果に与える影響は大きなものがあります。大き過ぎず小さ過ぎず、ヴィンテージ過ぎず、かといって新し過ぎることもない。少しでも時計の存在感を増したい方にとっては魅力的な選択肢になり得のではないでしょうか。
着用感に関するインプレッションは、マークのIntroducing記事「ブランパン 42mm径の素晴らしいフィフティ ファゾムスがレッドゴールドとチタンで復活(編集部撮り下ろし)」に任せるとして、僕はこの42mmというモデルが一体なにを意味するのかを考えてみたいと思います。
なぜ42mmのフィフティ ファゾムスなのか?
42mm径のフィフティ ファゾムスのリリースを聞いたとき、16cm弱と細い手首を持つ僕は「40mmだったらもっと良かったのに!」と思いました。でもそれから少し考えてみました。その結果導き出された解は、45mmから42mmのサイズダウンはフィフティ ファゾムスの小径化としては、最善のアウトプットなのではないかということです。
直径45mmと42mmのフィフティ ファゾムスに共通して使用されているCal.1315は、直径30.6mm、厚さは5.65mmです。ケース径をより小さくしたい場合は、これよりも小さなムーブメントでないと実現できません。ブランパンのムーブメントポートフォリオを見てみると、該当する自動巻きのCal.1151があります。これはフィフティ ファゾムスコレクションのなかでは、先述の直径40mmの日付表示なしの限定モデル、兄弟機でより小径サイズ38mmのフィフティ ファゾムス バチスカーフやヴィルレ エクストラスリムのようなドレスウォッチに採用されるムーブメントです。ではそれをフィフティ ファゾムスのさらに小径モデル実現に使えばいいじゃないか! と思われるかもしれませんがちょっと待ってください。両ムーブメントを比較しやすいように表にまとめてみました。
上の表からスペックが大きく異なることがわかると思います。最も大きな違いはパワーリザーブです。Cal.1151が約100時間のパワーリザーブであるのに対して、Cal. 1315はそれをさらに上回る約120時間という驚異的な性能を誇ります。振動数がより高いのにも関わらずです。さらに付け加えるとCal.1151は、フレデリック・ピゲ(現在のマニュファクチュール・ブランパン)が1980年代後半にリリースしたCal.1150をベースにしたもので、Cal.1315はブランパンによる完全な自社製キャリバーでもあります。
これはマーク A.ハイエック氏本人に聞かなければわからないことですが、彼にとってブランドの核となるコレクションのスペックをダウンするという選択肢はなかったのではないかと僕は考えます。なぜなら同氏は、フィフティ ファゾムスを復活させた立役者であり、プロフェッショナルダイバーでもあるからです。フィフティ ファゾムス 70周年記念 Act 2 テック ゴンベッサで、現代のダイバーのための最先端の機械式ダイバーズウォッチを作り、Act 3でヴィンテージスタイルの“MIL-SPEC”をリイシューする際もブロンズゴールドの採用などアップデートを施したことがその例です。
では直径40mmの限定モデルの存在は? それらはいずれもヴィンテージモデルのデザインからインスピレーションを得たものです。復刻という時点で当時のスペックからはもちろん大きくアップデートされているのでこれもクリアでしょう。そして、最後にもうひとつ、1953年の初代フィフティ ファゾムスのケースサイズが直径41mmだったことを忘れてはいけません。42.3mmというサイズは十分にオリジナルに近く見た目においてもその差が大きく感じられることはないと思います。すでにある直径40mmのフィフティ ファゾムスが存在することから条件反射的になぜ? という問いが頭に浮かびましたが、こうして考えてみるとこのサイズ選択は必然だったように思えます。
価格:NATOストラップにチタン製ピンバックル:247万5000円、セイルキャンバスまたはトロピカルラバーストラップにチタン製デプロワイヤントバックル:272万8000円、チタン製ブレスレット:287万1000円、NATOストラップにRG製ピンバックル:459万8000円、セイルキャンバスまたはトロピカルラバーストラップにRG製デプロワイヤントバックル:509万3000円(すべて税込)
ブラックダイヤルコーデ ブルゾン 5万9950円/ネズヨウヒンテン(にしのや☎︎03-6434-0983)レザーシャツ 11万円/アルマ(トレメッツォ☎︎03-5464-1158)カットソー 1万450円/モクティ(ドナ☎03-5799-6924︎)パンツ 4万9500円/タンジェント(タンジェント https://tangentclothing.com/)
ブルーダイヤルコーデ ジャケット 10万8900円/チルコロ 1901、ニット 2万8600円/フィリッポ デ ローレンティス、シャツ 4万700円/ジャンネット(すべてトヨダトレーディング プレスルーム☎︎03-5350-5567)
Photos:Tetsuya Niikura(SIGNO) Styling:Hidetoshi Nakato Model:Hideki Asahina(donna models)
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