Photos by Will Holloway
ブランパン×スウォッチによるスキューバ フィフティ ファゾムスがついに登場した。スウォッチ本社でひっそりと、“スキューバ フィフティ”と呼ばれているこの新しいグループ内コラボレーションは、大ヒットを記録した前作、ムーンスウォッチほどエレガントな名前ではないが、ある意味素晴らしいものであり、それを見たときやり遂げたなスウォッチ、と思った。スウォッチとバイオセラミックのコラボレーション第2弾が実現したいま、何でもできるのだと確信した。記念の年ということで、次はオメガのシーマスターだろうというのが大方の予想だったが、ブランパンにとっても今年はお祝いの年である。歴史的にみても重要なダイバーズウォッチであるフィフティ ファゾムスの70回目の誕生年なのだ。ブランパンのスウォッチが実現するとは夢にも思っていなかったが、彼らはやってくれた。
私は幸運にもこの新作を実際に手に取ることができた。そしてそれはそれは素晴らしいものだった。正直なところ、このブランドは盛大なお祝いの仕方を心得ている。この1週間、我々は見事な宣伝キャンペーンを目にした。まず、アメリカのニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、LAタイムズなど世界41の新聞に、不可解な二面広告を掲載した。それから数日後、ブランパンとスウォッチがタッグを組むという正式な発表があった(これも同じ新聞に掲載された)。どちらにも、9月9日に何かが起こると予告されていた。さらに世界中のスウォッチとブランパンの店舗には、共同ブランドのロゴが入った黄色いジップタイのペリカンケースが置かれた。中に何が入っているのか誰も知らなかったが、ようやくこれで判明したというわけだ。
さて、それは何だろう。まさに想像のとおり、ブランパンのフィフティ ファゾムスがスウォッチになったのだ。昨年は天体をテーマにしたムーンスウォッチが11本登場したが、今年は海をテーマにした、5色のスキューバ フィフティがラインナップされた。大西洋モデルはブルー、太平洋モデルはイエローオレンジ、北極モデルはベージュ(ベゼルはオレンジ)、インド洋モデルはグリーン、南極モデルはホワイトだ。なぜこのような色なのか、そしてなぜブラックのスキューバ フィフティがないのか不思議に思うかもしれないが、それはスウォッチがバイオセラミックで使用したことがある、既存の色を使用しないと決めたからである。
手元にあるのは、ブルーのアトランティックエディションだ。文字盤上部にはモダンなブランパンのロゴとワードマーク、そしてスウォッチのロゴが配されている。その下には、SCUBAの字と、クラシックなフィフティ ファゾムスのテキスト、そして防水性のレーティング(実際には具体的な深度表示)がある。91m(300フィート)とあるから、ちょうどフィフティ(50)ファゾムスに相当する。また三角形のインデックスと12・3・6・9のアラビア数字が特徴だ(このデザインはブランパンの限定モデルにも採用されている!)。これらすべてが、エッジの暗い部分から中央の明るい部分へとグラデーションがかかったフュメダイヤル風の上に配置されている。
このデザインは、ディープブラックのベゼルインサートを備えたイエローオレンジモデルと、オレンジのアクセントを備えたグリーンモデルに共通する。残りのアークティック(北極)とアンタークティック(南極)のモデルではデザインが大きく変わっている。この2つのモデルには、アプライドの円形インデックスや、フラットなレタリングを施したオールドスクールなブランパンロゴなど、ヴィンテージ回帰的な要素を取り入れている。ただそれ以上に素晴らしい点がある。アークティックは、あのブランパン フィフティ ファゾムスのノーラディエーション(放射性物質未使用)をほうふつとさせ、アンタークティックはブランパンとのコラボレーションモデルにも採用されている湿度インジケーターを備えているのだ。また、両モデルともに日付表示がない。
5つの時計のケースはすべて同じサイズで、直径42.3mm、厚さ14.4mm、ラグからラグまでは48mmだ。ラグには穴が開けられており、リサイクルされた漁網から作られたNATOスタイルストラップをセット。典型的なブランパンのスタイルを踏襲して、ケースサイドにはスウォッチのロゴが刻まれている。
しかし、特徴はほかにもある。スウォッチグループがブランパンを使ってなお、クォーツ時計を作るのではないかと思うかもしれない。心配することはない、ジャン-クロード・ビバーの言葉は信じていい(1735年の創設以来、ブランパンのクォーツ時計は一度も存在しない。そしてこれからも出ることはないだろう)。クォーツのブランパンは存在しないため、本機にはスウォッチのムーブメント、システム51が搭載されている。これは1本ネジのデザインと、約90時間パワーリザーブを備えた密閉構造で有名なムーブメントだ。
このムーブメントはシースルーバックから鑑賞可能で、それぞれの時計には精巧にレーザーエッチングされたウミウシが、隠し要素的に配されている。ウミウシはこの時計とつながりのある特定の海に生息する海の生き物だ。ムーブメント自体にも、特定の水域のレーザープリントが施されている。これは高級時計的要素ではなく、昔ながらの遊び心から来ている。
この時計が9月9日にどうなるかは誰にもわからない。ブランスウォッチ(BlancSwatch)によって世界中に行列ができるかどうかは予測できないが、この時計を見たときの私の反応は非常にポジティブなものだった。この反応は2つの部分で起こった。最初の瞬間は、5つのモデルを見たとき、高級ブランドであるブランパンがバイオセラミックという形で移植されたのを実感したときで、もうひとつは自動巻きであるのに気づいたときだ。今にして思えば、システム51のムーブメントが搭載されていることは明らかだったが、それでもその瞬間、私は息を呑んだ。
NATOスタイルのストラップは快適ではあるが、かなり長く、しっかりとフィットさせるために遊環を通すのに少し苦労した。幸いなことに、設けられたドリルラグのおかげでストラップはいつでも簡単に交換ができる。
ムーンスウォッチは非常に特殊なデザインをしている。基本的にはムーンウォッチなのだが、文字盤のレイアウトを大きく変更することで、明らかに別物になった。一方で、これは基本的にスウォッチ化されたフィフティ ファゾムスだ。そのためムーンスウォッチよりもはるかに高級感がある。だからその分価格も高くなっている。ブランパン×スウォッチ スキューバ フィフティ ファゾムスは、今週土曜日に店頭に並び、小売価格は6万500円(税込)で販売される。ムーブメントや文字盤だけでなく、高品質なベゼル(完全な夜光付き)なども考慮すると、3万3550円(税込)のムーンスウォッチよりも高い設定となっている。
これらのディテールの多くは、愛好家向けという感じがする。しかし、スウォッチはブランパンとの協力関係において、ここで何をしようとしているのかを理解していると思わざるを得ない。この時計によって、ブランパンの名前と歴史的に重要なフィフティ ファゾムスというダイバーズウォッチが、たくさんの視線を集めることは間違いない。あと2、3日すれば、その誇大広告の度合いがわかるだろう。ひとつ確かなことは、もしあなたがこの土曜日に並んでも初日に時計を手に入れるのが遅すぎたとしたら......スウォッチの痛みを感じることになる。ひどいジョークを言う前に付け加えておくと、ムーンスウォッチ同様、このモデルは限定バージョンではない。スウォッチストア(のみ)で、兄弟モデルであるムーンスウォッチとともに順次発売される予定だ。
このリリースがどう転ぼうとも、高級時計(そして歴史的に重要な時計)の民主化のために、コラボレーションが続くことは素晴らしいことだ。また次はどんな時計が登場するのだろうかと考えさせられる。今のところ、我々にはスキューバ フィフティがある。今週末に行列に並ぶ予定の方は、写真を送って欲しい。そしていつものように、みんなの幸運を祈ろう。
基本情報
ブランド: スウォッチ×ブランパン(Swatch x Blancpain)
モデル名: スキューバ フィフティ ファゾムス(Scuba Fifty Fathoms)
型番: SO35N100(アークティックオーシャン)、SO35P100(パシフィックオーシャン)、SO35A100(アトランティックオーシャン)、SO35I100(インディアンオーシャン)、SO35S100(アンタークティックオーシャン)
直径: 42.3mm
厚さ: 14.4mm
ケース素材: バイオセラミック
文字盤: ブルー、イエロー、ベージュ、グリーン、ホワイト
インデックス: アプライド
夜光: あり
防水性能: 91m
ストラップ/ブレスレット: NATOスタイルストラップ
ムーブメント情報
キャリバー: システム51
機能: 時・分・センターセコンド、日付表示(SO35P100、SO35A100、SO35I100のみ)
パワーリザーブ: 約90時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万1600振動/時
価格 & 発売時期
価格: 6万500円(税込)
発売時期:2023年9月9日発売
限定: なし、ただしスウォッチ実店舗でのみ購入可能
HODINKEE Shopはスウォッチの正規販売店です。スキューバ フィフティ ファゾムスの詳細については、スウォッチの公式ウェブサイトをご覧ください。