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クイック解説
ブルガリが日本の文化に敬意を払い、様々な分野のアーティストと精力的にコラボレーションモデルを展開してきたことはご存知かと思う。その最新作として、現代美術家・宮島達男氏をゲストに迎え、 「ブルガリ オクト フィニッシモ 宮島達男 日本限定モデル」を先日発表。チタンとセラミックケースの自動巻きはそれぞれ120本限定、ミニッツリピーターは3本限定と、いずれもコレクタブルなアイテムとして熱い視線が注がれている。
世界的に高い評価を得ている宮島氏の作品は、「それは変化し続ける」「それはあらゆるものと関係を結ぶ」「それは永遠に続く」 という3つのコンセプトから生まれる。代表作のひとつであり、その名を一躍有名にしたのが、LED(発光 ダイオード)のデジタルカウンターを使用した作品群である。
作品のモチーフであるデジタル数字は、決して0を表示せず、1から9の変化を永遠に繰り返す。これが意味することは、人間であれば誰もが直面する生と死の問題であり、「輪廻」という東洋的な概念と現代的なテクノロジーを融合させることで、視覚表現として時間の永遠性、連続性を示唆している。
「ブルガリ オクト フィニッシモ 宮島達男 日本限定モデル」のダイヤル上に配された7つのセグメントで構成されるデジタル数字は、宮島氏の作品と繋がる重要なシンボルにほかなからない。1から9までの数字のなかから選ばれた「8」は、ラテン語で8を意味する「オクト」のモデル名に由来するものであり、ヨーロッパでは無限大・永遠・再生の象徴として、アジアでも縁起のいい数字だと言われている。
日本を代表する現代美術家による力強いメッセージが込められた稀有なタイムピースは、流行や時代を超越する普遍性を宿しているようだ。
ファースト・インプレッション
近頃、オークションハウスの競売を見ていて思うことがある。それこそ絵画のような高値で腕時計が落札されていく様子はとても興味深い。出品された希少なタイムピースの数々は、美術工芸品さながらのオーラを放ち、世界的な熱狂を生み出しているわけだが、やはり腕時計とアートは似て非なるものだと言わざるを得ない。
なぜなら、腕時計は商業など目的に考案されたデザインが主流であって、少なからずアート作品とは根本的な成り立ちからして別物だと考えられるからだ。この点を踏まえると、腕時計をひとつのキャンバスのように見立てることで、数々のアーティストとのコラボレーションを成功に導いたブルガリの功績は極めてユニークな事例だと思えてならない。
そこで、今回のコラボレーションの主役であり、日本を代表する現代美術家である宮島氏に話を伺える機会を得たことは幸運だと言うしかない。
「普段はあまり腕時計をしなくて、今まで分刻みで生きるような生活もしてこなかったので、そこまで必要性を感じなかったんですね。そんなこともあって、ブルガリからお声がけいただいた時はちょっと驚いたのですが、友人にアニッシュ・カプーアというイギリス人の彫刻家がいて、彼を含め、過去に多くのアーティストとコラボレーションをしていた実績から、アートに対する造詣が深い会社だとわかっていたのでオファーを受けさせてもらいました」
腕時計はおろか、機械式時計とほぼ無縁だった宮島氏が、どのようなコンセプトを介して答えを導き出したのだろうか。
「僕自身、LEDを用いた作品の影響からデジタル人間に思われがちなんですが(笑)、作風もそうですが、実はすごくアナログ的な部分も多い。ですから、あくまで作品を表現するためのモチーフとしてデジタル数字を取り入れているわけなんです」
このモデルにおいて、7つのセグメントで構成されるデジタル数字とは、いわゆるグラフィックデザインではなく、アートの世界と機械式時計を結びつける架け橋の役割を果たしている。
「商業的なプロダクトとは、機能が全面的に出てくるものだから比較的理解がしやすい。それに対してアートはわからないことが多く感じられると思いますが、その難解な部分と向き合うことで想像力の翼を広げることができる。それこそが、アートならではの魅力なのです」
すなわち、宮島氏がこの時計で創造したのは、機能とは別の「何か」なのである。「『オクト』という時計のルーツに繋がる文字盤の中央に置かれた数字の8は、光の反射によって違う数字に見えることがあって、それはすべて見る人に委ねられています。1秒1秒を刻んでいく時計としての機能とともに、大きな枠組みでの時間、無限の宇宙に思いを馳せて欲しい。そのような意図がこの時計には込められているのです」
機械式時計としての機能とアートの性格を併せ持つバランス感覚。この難題を物の見事にクリアした時計を実際に手にして、その完成度の高さに氏は驚嘆したという。超薄型のミニッツリピーターをひと目見ればわかるが、ブルガリの開発チームは宮島氏の期待に対し、120%で応えるプロダクトを仕上げている。「オクト フィニッシモ」が7年連続で極薄・超複雑機構ウォッチの世界記録を塗り替えているという実績は伊達ではないのだ。
稀代の現代美術家への貴重なインタビューと、用の美を体現するイタリアンスタイルを目の当たりにして、すべてが腑に落ちた。お互いを尊重し合う信頼関係の構築こそが、ブルガリが名だたるアーティストたちとのコラボレーションを成功し続けている理由なのだろう。次回作が今から楽しみだ。
基本情報
ブランド: ブルガリ(Bvlgari)
モデル名: オクト フィニッシモ 宮島達男 日本限定モデル(Octo Finissimo Tatsuo Miyajima Japan Limited Edition)
型番: SAP 103569(チタニウム)、SAP 103563(セラミック)、SAP 103568(ミニッツリピーター)
直径: 40mm
厚さ: 5.0mm (チタニウム) / 5.5mm(セラミック) / 6.6mm(ミニッツリピーター)
ケース素材: チタン、ブラックセラミック
文字盤色: レーザーテクスチャリング加工で“8”の字が施されたチタニウム製ダイヤル(チタニウム)/ “8”の字をレーザーテクスチャリング加工し、さらにPVDコーティングが施されたセラミック製ダイヤル(セラミック) / “8”の字にくり抜いたチタニウム製スケルトンダイヤル(ミニッツリピーター)
インデックス: なし
夜光: なし
防水性能: 3針モデル 30m / ミニッツリピーター 50m
ストラップ/ブレスレット: ケース素材にあわせたブレスレット
ムーブメント情報
キャリバー: Cal. BVL138(3針モデル)、Cal. BVL362(ミニッツリピーター)
機構: 時、分、スモールセコンド(3針)、時、分、スモールセコンド、ミニッツリピーター(ミニッツリピーター)
直径: 36.6mm(3針)、28.5mm(ミニッツリピーター)
厚さ: 2.23mm(3針)、3.12mm(ミニッツリピーター)
パワーリザーブ: 約60時間(3針) / 約42時間(ミニッツリピーター)
巻き上げ方式: 自動巻き(3針)/ 手巻き(ミニッツリピーター)
振動数: 2万1600振動/時
クロノメーター認定: なし
追加情報: ケースバックに宮島氏のサインをプリント
価格 & 発売時期
価格: チタニウム 202万4000円、セラミック 221万1000円、ミニッツリピーター 2277万円(すべて税込)
発売時期: 1月(3針)/ 11月(ミニッツリピーター)
限定: あり、3針モデルは各120本、ミニッツリピーターは各3本
詳細は、ブルガリ公式サイトへ。
Photographs:Hiroyuki Suzuki Words:Tsuneyuki Tokano
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