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Hands-On シチズン “ツヨサ”、日本未上陸モデルと既存モデルを徹底的に比較してみた

スモールセコンドとギヨシェ風ダイヤルの魅力に抗えず、海の向こうから初めての“ツヨサ”を取り寄せることにした。

Photos by Yusuke Mutagami, Masaharu Wada

シチズンがのちに“ツヨサ(TSUYOSA)”というユニークな名称で呼ばれるメカニカルウォッチを初めて発表したのは、実は2021年のこと。その時はアジアでの販売で、その後他国でも展開が進むなかで“ツヨサ”というニックネームがつくようになった。僕がこのモデルを認識したのは2023年にアメリカでリリースされたときだったが、日常使いに適した40mmのケース径と豊富なダイヤルカラーを備えたブレスレット一体型モデルに僕はすぐに心引かれ、同年9月の日本上陸までInstagramや海外の記事から情報を集めながら照準を定めていた(HODINKEEでもダニーが紹介記事を執筆していた)。

 ツヨサのラインナップを見たときに、真っ先に競合として思い浮かんだのはティソのPRX パワーマティック 80だった。もちろん80時間のパワーリザーブにニヴァクロン製ヒゲゼンマイを持つパワーマティック 80と、ツヨサ NJ015シリーズに搭載されているパワーリザーブ約40時間のCal.8210では少々スペックに開きがある。しかしこの記事の執筆時でPRXは10万7800円、ツヨサは6万3800円(ともに税込)という価格設定になっていて、より手軽にブレスレット一体型のカラーダイヤルウォッチに手を出せるという点でツヨサはとても魅力的だ。

 ブレスもどことなくプレジデントブレスのようでおもしろい。価格的にも何かしら1本は手に入れたいと考えていた。しかしご存じかもしれないが、ツヨサは基本的に新作が日本で販売されるまでに数カ月のラグがある。シチズンのアメリカサイトにアップされていながら、日本未上陸のカラーも少なくない(個人的にはゴールドカラーケースのモデルを心待ちにしている)。仕方ないことなのだが、Instagram上でツヨサの新作が次々にアップされているのを見ていると、そちらのほうが気になってしまいどうしても購入に踏み切れなかった。

 しかしこの1本をSNS上で見つけたときに心は決まった。2024年5月に海外展開が始まったばかりの、ノンデイトのスコールセコンドモデル(Ref.NK5010-51X)だ。残念ながらシチズンのアメリカサイトからは日本への配送を指定できず、海外の通販サイトを駆使してなんとか取り寄せることができた。なお参考までに、この記事の公開時点でアメリカサイトでは既存のデイト付きのツヨサ(NJ0150)が450ドル、今回僕が手に入れたスモセコ付きツヨサ(NK5010)が595ドルとなっている。日本円で約2万2000円ほどのプレミアがついているわけだ。この差額はどこから来たものか、日本でも展開のある既存モデルと私物の新型を並べ、各ポイントで比較を行ってみることにした。

シチズン ツヨサ比較1:ケースとダイヤルの仕様

 まずはもっとも目につくところから比較をしていこう。ケースサイズはどちらも直径40mmで、厚さも11.7mm(NK5010の厚さは編集部調べ)と変わらない。小振りなリューズは4時位置に埋め込まれるように配置されていて、正面から見たときのシルエットを崩さないようになっている(このリューズが巻き上げにくく引き出しにくいという話もよく分かる。美観とトレードオフだ)。上面にサテン仕上げが施されたケースはラグに向かってカットされたようにエッジが立っており、鏡面仕上げが施されたベゼルとのコントラストを描いている。ブレスについては後半で言及するが、ここまで新作もツヨサのデザインをしっかりと踏襲しており変化はない。

NK5010:スモールセコンド搭載モデル

NJ0150:デイト付き3針モデル

 一方でダイヤルの違いは一目瞭然だ。既存モデルのダイヤルでは光沢が強いサンレイ仕上げを施していたが、新作ではバーリーコーン(グレンドルジュ)風のパターンがあしらわれている。ギヨシェ彫りではなくプレスによる表現だと思うが、ダイヤルに高級感が生まれている。秒表示はセンターセコンドから6時位置のスモールセコンドに変更され、デイトレンズとともにデイト窓も排された。溌剌とした印象だったダイヤルカラーも、新型では少し中間色的なニュアンスカラーになっている。ちなみにカラーバリエーションは僕が購入したグリーン(グリーン……? ブロンズやゴールド、ライトなブラウンといった表現のほうがしっくりくる)とブルー、そしてグレーだ。総じて既存のデイト付きモデルのほうがスポーツウォッチとしてのテイストが強く、新型はそこにエレガントさや少しの品のよさを加えているように見える。まあしかしギヨシェ風のパターンは非常に加工精度が高く、新型のほうが圧倒的に手がかけられているのは確かだ。

シチズン ツヨサ比較2:搭載ムーブメント

 ダイヤルデザイン比較の項目で、スモールセコンドの位置が気になった人がいたかもしれない。僕ももう少し大きく下寄りに配置してくれればバランスがよかった(そうしたら、ザ・シチズンのCal.0210モデルっぽくなったかも)と思いもしたが、これは採用ムーブメントのCal.8322によるものだ。Cal.8322は2019年12月以降、シチズン コレクションを中心に搭載されてきた実績のあるムーブメントだ。振動数は2万1600振動/時とほかのモデルと変わらないが、パワーリザーブはCal.8210の40時間から60時間へと大幅に伸長している。

NK5010:スモールセコンド搭載モデル

NJ0150:デイト付き3針モデル

 なお、せっかくのスケルトンバックなのだからムーブメントの外観にも言及しておきたい。Cal.8210が温かみのある真鍮の質感を残したルックスであったのに対し、Cal.8322はストライプを施したうえでスケルトンローターを採用している。Cal.8322のほうが仕上げとしては気が配られていてスタイリッシュな印象だ。しかし(こればかりは好みの問題だが)個人的には、質感やローターの形状や仕様に温かみのある(CITIZEN WATCH CO.の文字がプリントではなく刻印されている)Cal.8210も捨てがたい。パワーリザーブが伸びたとはいえ、ツヨサはカラーやデザインを重視して選びたい時計だ。精度やその他のスペックに差はないので、裏から見たときのフィーリングに従って手に取るのもいいだろう。

シチズン ツヨサ比較3:ブレスレットの形状と仕様

(左)NK5010:スモールセコンド搭載モデル、(右)NJ0150:デイト付き3針モデル

 ある意味ダイヤル以上に変化を感じたのがブレスレットだった。正直なところ新旧並べてみるまで気が付かなかったが、上の写真を見ると大きく違うことがわかるだろう。ポイントは大きくふたつ、(1)中ゴマのサイズ、そして(2)テーパーの幅だ。なお誤解のないように言っておくが、ツヨサのブレスはそもそも作りがいい。内側にはサテン仕上げが施されていて、汗ばむ季節でもベタつきにくい。3連ブレスは大きな遊びもなく手首にフィットする。それを前提としたうえで話をしていこう。

 まずはポジティブな面から解説する。新作において中ゴマの幅が大きく広がったことで、手首の上での安定感は増したように思う。コマ間の遊びがより少なくなり、さらにホールド感が増した印象だ。またダイヤルの主張が強くなった分、ブレスの存在感が増してバランスが取れているように見える。ちなみに新型においてテーパーはまったくなくなったわけではなく、リンクのひとコマ目から4コマ目にかけて2mmほど絞られている。しかし、既存のデイト付きモデルと比べるとそのインパクトは少ない。

NK5010:スモールセコンド搭載モデル

 さらに推せるポイントとしては、新型でツヨサとしては初めてクイックリリースシステムが搭載された。シチズンのアメリカサイトではレザーストラップも単体で販売されている(記事公開時の価格で95ドル、日本円で約1万4000円)ので、合わせて購入すれば換装も容易だ。

 そしてネガティブな面にも触れておきたい。まずはルックスについてだが、元々ツヨサのエッジのたったケースと丸みの強いコマの形状はデザイン的なギャップが強い印象があった。それが新型では中ゴマが広がったためにより強調されたように見える。加えてテーパーが弱くなった分、単純にブレスの重量が増している。既存モデルの着用感も知っているために(慣れかもしれないが)長時間の着用では疲れを感じてしまった。

NK5010:スモールセコンド搭載モデル

 バックルにも変化が見られた。既存のデイト付きモデルはプッシュ式の3つ折れバックル、新作は両開きのバタフライバックルだ。バタフライバックルは外側から見たときに目立ちにくく美観の面で貢献している。着脱の容易さでは3つ折れバックルのほうがイージーだが、バックル部の美観に関する配慮は新型の選択を評価したい。

(下)NK5010:スモールセコンド搭載モデル、(上)NJ0150:デイト付き3針モデル

NJ0150:デイト付き3針モデル

 バタフライバックルの選択は好みだったものの、テーパーのバランスなど総合的に見るとデイト付きモデルのブレスのほうが時計本体とのバランスがとれているように思う。新型の主張の強さを考えると中ゴマは多少大きくてもいいと思うが、ギヨシェパターンを入れることでより品よくなったダイヤルをさらに活かすなら、テーパーはもう少し目立つ形で入れてもよさそうだ。今回実物に触れることはできなかったが、新型のレザーストラップタイプ(Ref.NK5010-01H)も試してみるべきだったかもしれない。機会があればレザーストラップだけでも取り寄せてチャレンジしてみたい。

シチズン ツヨサ比較4:着用イメージ

NK5010:スモールセコンド搭載モデル

NJ0150:デイト付き3針モデル

 ケースの形状やデザインコードは同じながらも、着用した印象は大きく異なる。ダイヤルデザインの項目でも述べたが、既存のデイト付きモデルのほうがスポーティさが強く、新型はダイヤルカラーも相まってジャケットにも合いそうな品のある雰囲気に仕上がっている。しかしやはり、ブレスレットの骨太さが気になるところだ。僕は手首のサイズが日本人の平均値(手首周り17cm)なのだが、僕より手首ががっしりとしている人のほうが似合いそうな印象はあった。Instagramで海外の着用写真を見た際にも、筋肉質な男性の手首に似合っているように見えた。スモールセコンドモデルは日本未発売であることを考えるとそれでもいいのだろうが、数カ月後に日本での発売があるようなら間違いなく1度試着したほうがいい。それぐらい着用感も着用イメージも新型は別モノだ。

NJ0150:デイト付き3針モデル

 さらにもう1点挙げると、ポリッシュ仕上げの中ゴマのサイズ変更でブレスの主張もだいぶ変違う。上の写真は既存のデイト付きモデルだが、サテン仕上げの面積が広いためにブレス単体では落ち着いて見える。ツヨサはその顔ばかりに目が行きがちだが、気に入ったカラーがあったならぜひブレスとのバランスも考慮に入れて選んでもらいたい。

最後に

 結論としてはデイト付きモデルのNJ0150、スモールセコンドモデルのNK5010はツヨサというシリーズのなかにあってまったく異なる存在だ。NJ0150のイメージで今回海外から取り寄せた僕は非常に驚いたし、しかしそのうえで両者にそれぞれ長所短所があることも理解できた。個人的には、この先のブレス交換も視野に入れて使っていくなら新型をおすすめしたい。デイト付きモデルとの差額分はダイヤルの仕上げ(執筆しながら改めて眺めているが、ダイヤルパターンの緻密さは本当に素晴らしい!)およびムーブメントのスペックでお釣りがくるほどだと思うし、ニュアンスカラーはシーンを選ばず取り入れやすい。ただ、日常的にヘビロテするなら既存モデルのブレスのほうが疲れにくく、日本人の細腕にもフィットしやすそうだ。ファッション的には鮮やかなイエローやブルーは挿し色として効果的だし、2023年ごろにロレックスなどで見られたカラーダイヤルを、カジュアルにオマージュしたいならぴったりだ。

 2023年の登場以来、ツヨサは加速度的にそのバリエーションを増やしつつある。この時計を撮影している最中にもInstagramでチタンのスモールセコンドモデル(しかもブレスはフラットリンクだ!)を見つけて心揺れていた。シチズンの新作はその時その時のトレンドを的確に押さえて反映したものが多い傾向にあるのだが、ツヨサもその流れを着実に汲んでいると思う。惜しむらくはその大半がまだ日本未上陸なことだ。今目をつけているツヨサのうち次は何が日本に届くのか、楽しみにしながら引き続きアメリカのサイトもチェックしていきたい。

シチズン “ツヨサ” Ref.NK5010-51X。ステンレススティールケース、40mm径、11.7mm厚(編集部調べ)、5気圧防水。自動巻きムーブメントのCal.8322搭載、時・分表示、スモールセコンド、約60時間パワーリザーブ、2万1600振動/時。価格は595ドル(日本円で約9万2000円)。日本での展開は未定。

詳しくはアメリカのシチズン公式サイトにて。