本記事は2017年11月に執筆された本国版の翻訳です。
2017年はグランドセイコーにとって、ある種の分水嶺となる年だった。グランドセイコーの歴史上初めて、セイコーウォッチの一部門ではなく、独立したブランドとして位置づけられるようになったからだ。この方針転換は、グランドセイコーの時計が非常に特殊な方法で、非常に特殊な土地で製造されているという、長年にわたる現実を反映したものだ。
グランドセイコーの機械式時計は、すべて岩手県盛岡市にある「雫石高級時計工房」で組み立てられている。このことは、GSマニアのあいだではよく知られている。一方、クォーツやスプリングドライブのグランドセイコーの時計は、長野県塩尻市にある「信州 時の匠工房」という独立した工房を持つことは、あまり知られていないかもしれない。信州 時の匠工房には、クォーツとスプリングドライブのグランドセイコーの製造・組立工場があるだけでなく、グランドセイコー全モデルのケースや針、文字盤を製作する工房も併設されている。
この3回シリーズで、塩尻の信州 時の匠工房に潜入し、グランドセイコーの時計づくりを支える技術や手法、そして職人技を詳しくご紹介したい。また、このシリーズの製作にあたっては、信州 時の匠工房を取材拠点としているため、特にグランドセイコーのスプリングドライブがどのように作られ、1999年に最初のスプリングドライブが発表されるまで、長く、時には非常に困難な開発過程を経てきたのかにも焦点を当てる。
グランドセイコーの時計は、クォーツ式、機械式、スプリングドライブのいずれにおいても、一人の時計職人が組み立てていることが大きな特徴だ。信州 時の匠工房には、その匠の技が息づいている。信州 時の匠工房には、マイクロアーティスト工房の組立師である中澤 義房氏がいる。この小さな工房で、最も複雑で、技術的にも美的にも洗練されたスプリングドライブの時計が、中澤を中心とした小さなチーム(中澤氏は一人の弟子に丹念に彼が持つ技術を伝承している)によって、手仕上げと手技により組み立てられているのだ。
スプリングドライブのミニッツリピーター、ソヌリ、そして叡智シリーズの年間生産数はわずか数本だが、中澤氏がこれらの時計に込めた哲学は、スプリングドライブ全般の特徴である、技術的な独自性と時計製造技術に対する日本独自のアプローチを映し出している。
グランドセイコーコレクションの詳細については、グランドセイコー公式Webサイトをご覧ください。