今年初め、グランドセイコーはヘリテージコレクション 44GS 55周年記念限定モデルを発表した。ピンクダイヤルに、通常より小さい36.5mmのケースサイズという驚異的なモデルである。ほとんどの人がこれを見て、女性向けの時計だと思ったようだ(ダイヤルの色から)。また「性別に関係なくカッコいい」「これからが楽しみ」という意見もあった。その期待に応え、グランドセイコーは今回ヘリテージコレクションに同デザインのダイヤルバリエーションを2種類加えた。ただし、限定品ではない。シルバー(SBGW291)とチョコレート(SBGW293)のサンレイダイヤルの新モデルは、継続して販売される。
どちらも1967年に発表された、このブランドにおいて非常に有名な44GSの基本理念を、より小型化したモデルに表現している。この新しい時計は、よく知られている角ばったケースデザイン、目をひく12時位置のインデックス、フラットなダイヤルなど、44GSの特徴的なデザインを踏襲しているのだ。36.5mmというケースサイズは、グランドセイコーにおいて最小の44GSデザインであり、薄型化も実現している。これは少なからず手巻きCal.9S64の力による(ご覧のとおりだ)。
ムーブメントはクローズドバックのケースに収められ、72時間のパワーリザーブと日差+5/-3秒の精度を備えている。ダイヤルに話を戻すと、ブランドが「わずかな光線も反射し、角度を変えるごとに変化する無数の光と影のコンビネーションを生み出すようデザインされている」と語る、シグネチャーであるGS のバトンマーカーを搭載している。
ケースはザラツ研磨(鏡面研磨)を得意とする同ブランドが、ヘアライン仕上げの表面と合わせ、極めて高いレベルでさまざまな仕上げを施した製品となっている。SBGW291、SBGW293ともに、フォールディングクラスプ付きレザーストラップ、ラグ幅は19mmで、価格は税込60万5000 円(SBGW293は海外専用モデルのため、日本国内の取り扱いはなし。5200ドル/約70万2000円)である。
グランドセイコーは、シンプルなものを刺激的にする方法を知っている。 かなり小さなサンレイダイヤル、夜光塗料を使わないマーカー、効果的に研磨された(小さな)ケースデザイン、そしてクローズドバックケース。それでも、デザイン上の決定ひとつひとつが、この時計を成立させているように思えてならないのだ。我々はよく「ケースサイズがこうだったら……」などと新作を嘆くことがある。しかし、この時計はGSのデザインの信念を忠実に再現しているように感じる。
44GSのような歴史的に重要なモデルをベースに、ヘリテージモデルをサイズダウンさせた時計というのは、なかなか思いつかない。むしろ、そうでないことのほうが多い。多くの場合、トリビュートモデルはより大きく、より厚いケースデザインになる。だからこそ36.5mmというサイズに萌えを感じ、感嘆の声を漏らしてしまう。
36.5mmのケースは、私のなかでこのモデルを重要なリリースとして確固たるものにした。現在の時計界では、36mmがモダンなテイストにおけるギリギリのラインのような気がする。本当に小さい時計と呼べるのは、このサイズまでなのだ。この0.5mmの差はGSのスタットパディング(意図的な水増し)のようなものだ。オリジナルは37.5mmで、これはこれでちょうどいいサイズだが、44GSにインスパイアされたこの時計はさらに小さく、手抜きのないところが魅力的なのだ。
もちろん、私はこれを完璧に判断するために実機で見るのを待つことはできない。しかし今のところ、私はこのリリースに深い興奮を覚えている。私にとって、シルバーダイヤルはクラブハウスでの勝者だ。オリジナル、ヴィンテージの雰囲気を醸し出し、この時計の美学を文字どおり輝かせている。そしてポリッシュ仕上げのケースとバトンマーカーがシルバーダイヤルにシンプルに映え、そのコントラストに驚かされる。
とはいえ、チョコレートカラーのサンレイダイヤルにも興味がないわけではない。HODINKEEのオフィスのなかには(私のボスのように)チョコレートがいいと思っている人もいるのだ。
とりあえず、色の議論は横に置いといて。というよりも、ぜひコメント欄で盛り上がって欲しい。36mm径の腕時計を愛用している私としては、近いうちにこの腕時計をつけるのが楽しみなだけだ。
基本情報
ブランド: グランドセイコー(Grand Seiko)
モデル名: ヘリテージコレクション 44GS現代デザイン
型番: SBGW291&SBGW293
直径: 36.5mm
ケース素材: ステンレススティール
文字盤: シルバー、またはチョコレートサンレイ
インデックス: アプライド
夜光: なし
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: レザーストラップ
ムーブメント情報
キャリバー: 9S64
機能: 時・分表示、センターセコンド
パワーリザーブ: 72時間
巻き上げ方式: 手巻き
石数: 23
価格 & 発売時期
価格: 税込60万5000円(SBGW293は海外専用モデルのため、日本国内の取り扱いはなし。5200ドル/約70万2000円)
発売時期: 2022年9月発売予定
限定: なし
話題の記事
WATCH OF THE WEEK アシンメトリーのよさを教えてくれた素晴らしきドイツ時計
Bring a Loupe RAFの由来を持つロレックス エクスプローラー、スクロールラグのパテック カラトラバ、そして“ジーザー”なオーデマ ピゲなど
Four + One 俳優である作家であり、コメディアンでもあるランドール・パーク氏は70年代の時計を愛している