タグ・ホイヤーは、世界で最も認知された時計ブランドのひとつである。しかし、長年にわたって時計愛好家から見放されてきた。その流れが今年、直径39mmのタグ・ホイヤー カレラ “グラスボックス”が発表されたことを機に変わったかもしれない。そのことは、ここ数年で最高のタグ・ホイヤーとさえ呼ばれていることからもわかる。長年カレラを愛用者してきた私(ヴィンテージのカレラを数本所有)としては、かねてから実際に賞賛に値するのかどうか1週間着用してみたいと思っていた。
表面的には、ホイヤーの伝統をやりすぎ感なく受け継いだ、程よいサイズのモダンな時計に見える。しかし、私はこのカレラ グラスボックスが一体何なのか、そしてタグ・ホイヤーの方向性にとってどのような意味を持つのか、さらに深く掘り下げてみたいと思った。タグ・ホイヤー カレラ グラスボックスの39mm、ブラックの新作とともに、A Week On The Wristをお届けしよう。
カレラ略史
ホイヤーが、カレラを発表したのは1963年のことだ。60年代に製造された手巻き式の初代カレラは、私のお気に入りのクロノグラフのひとつである。ジェームズ・ステイシーの言葉を借りれば、1本筋の通った純粋なクロノグラフであり、それ以上でもそれ以下でもない。
2023年初め、40本以上のカレラを取り上げたReference Pointsで、ホイヤーのヴィンテージカレラについて深く掘り下げた。そのストーリーは、手巻き式のカレラから始まる。詳しくはこちらをご覧いただきたい。
ジャック・ホイヤーはカレラをデザインし、伝説的なレース“カレラ パナメリカーナ”にちなんでこのモデルを名付けた。彼が我々に説明してくれたように、この時計は最大限の視認性を念頭に置いてデザインされた。外側の目盛(アウタースケール)の長さや太さに至るまで、すべてにおいて視認性が優先されている(詳しい説明はリンク先の動画をご覧いただきたいが、“3分の1ルール”がその肝となっている)。ホイヤーはまた、風防を固定し、防水性を高める小さな外側のリング、テンションリングの使用権を獲得したばかりだった。つまり、ホイヤーはクロノグラフのアウタースケールをテンションリングに加えたことで、大きくてすっきりとしたダイヤルを実現することができたのである。
カレラは、同時代のモデル、すなわちオメガ スピードマスター、さらにはロレックス デイトナと多くの共通点があった。デイトナとカレラはともにバルジュー72を採用し、ダイヤルはシンガー社製であった。これは3レジスターのレイアウト、アワーマーカー、フォントが似ていることに起因する。よく見ると、これらのディテールの一部はグラスボックスにも採用されている。カレラは常に私のお気に入りだ。デザインはすっきりしているし、選びきれないほどバラエティに富んでいるし、ホイヤーのカーレースとの結びつきは実に深い。
おそらく最も重要なのは、これらのヴィンテージカレラが、ロレックスやオメガの同種のモデルよりもはるかに手頃であるということだ。ジェフ・スタイン氏がOn the Dashで正確に解説しているように、聖杯ともいうべきカレラは何本かある。インディアナポリスでインディ500を観戦しながら育った私としては、スピードウェイの翼と車輪のロゴが入ったホイヤーは個人的なお気に入りだ。しかし、このような傑作でさえ、オークションの開催日によっては5万ドル(日本円で約750万円)かそれ以上にはならない。まともなヴィンテージデイトナをその値段で探すことは不可能だろう。私は何年ものあいだ、ヴィンテージカレラを何本か所有してきたが、今でもお気に入りのヴィンテージウォッチのひとつである。直径36mmのケースはコンパクトだが、ポリッシュ仕上げの長いラグが手首に独特のエレガントな存在感を与えてくれる。タグ・ホイヤーが現代のカレラでこのバランスを再現するのを待ち望んでいたことは言うまでもない。
カレラという名は60年代に遡るが、タグ・ホイヤーは2015年に“グラスボックス”を発表した。39mmケースの新しいドーム型サファイアクリスタル風防は、あのヴィンテージカレラのドーム型プラスチック風防を思い起こさせるデザインだった。2015年から2023年まで、ホイヤーは39mmのグラスボックスケースを8つのリファレンスに使用したが、それらはあくまで限定モデルだった(ダートとスキッパーのふたつはHODINKEE限定モデルだった)。6時位置の“Heuer”のみのロゴが示すように、これらは通常、歴史的なデザインを直接参照したものであった。これらの限定モデルには、ちょっとしたバグも共通して存在した。真正面から見るとタキメーターが見えにくいのだ。だが、安心して欲しい。今回は違う。
カレラ誕生60周年にあたる2023年、タグ・ホイヤーは第2世代の39mmグラスボックスを発表した。最も重要なのは、第1世代のグラスボックスとは異なり、限定モデルではなく通常生産モデルであるということだ。
スペックシート
アップデートされたタグ・ホイヤー カレラ“グラスボックス”は、直径39mm、ラグからラグまでの全長は46mm、厚さ14mmだ。ベゼルレス構造で、グラスボックスの風防はミドルケースに直接はめ込まれている。ラグはポリッシュ仕上げ、ミドルケースはサテン仕上げが織りなしている。このサイズ感は装着感のよさに直結しているのだが、欠点がないわけではない(それについては後述する)。ダイヤルは窪んだ形状で、アウタースケールはダイヤルのスロープのかかった部分に、数字は上部に配置されている。これは特に斜めから見ると、ドーム型風防を埋め尽くすような視覚効果をもたらしている。空白部分をどうするかという“課題”に対するグラスボックスのデザインが提起した奇想天外な解ではあるが、1週間を通じて私を圧倒的に魅了した特徴である。これまでのグラスボックスダイヤルのいずれとも異なるが、初代カレラに3D効果を与えたオリジナルのリテンションリングを現代風にアレンジしたように感じられる。一般的なテーマとして、タグ・ホイヤーは新しいグラスボックスのために伝統的なインスピレーションをふんだんに取り入れたものの、やり過ぎ感はいささかも覗かせていない。
ブラックのカレラ グラスボックスは、快適なパッド入りレザーストラップを装着し、パンチング加工が施され、昔のレーシングストラップを思い起こさせるものだ。ストラップは20mmから18mmへとテーパードがかかっており、ダブルセーフティプッシュボタン付きフォールディングクラスプで取り付けられている。パッドが入って厚みがあるため、フォールディングクラスプに通すのは少し難しいが、歯間フロスを扱える程度の器用さがあれば、このクラスプのサイズを調整することは可能だ。ストラップはカレラのレースのコスプレ感をわずかに感じさせるものの、それはそれでいい。時計、特にヴィンテージウォッチというものは、とにかくコスプレ的要素に溢れたものなのだから。
私はブラックダイヤルを選んで1週間を過ごしたが、よりモダンな印象のブルーダイヤルもある。ブルーダイヤルを好む人(ダニー・ミルトンと読み替えて欲しい)がいるのはわかるが、私は6時位置のデイト窓に割って入るスモールセコンドがどうしても好きになれなかった。
ブラックダイヤルバージョンは、ホイヤーの伝統からさらに多くのヒントを得ており、Ref.2447NST直系のブラックダイヤルとシルバーインダイヤルを備えた逆パンダ仕様となっている。針とアプライドアワーマーカーの上の夜光プロットには“フォティーナ(フェイク・パティーナ)”風夜光が塗布されている。私はこの夜光塗料の控えめさに違和感を覚えなかった。針の中央にはブラックストライプが走っているのは、視認性を高めるために同様の加飾が追加された初代カレラの第2世代を思い起こさせる。インダイヤルは、シンガー社が製造した初代カレラのダイヤルをほうふつとさせるフォントと相まって高度に再現されている。
もちろん、デイト窓の配置についても触れなければならない。デイト窓は12時位置にあり、ダイヤルのほかの部分と比較的うまく調和している。しかし、それゆえにクロノグラフ針が帰零すると、デイト窓が部分的に遮られ、読みづらくなるのである。もしデイト窓をあまり好まないのであれば、これを逆にポジティブに捉え、この時計を実質デイト窓なしのモデルとして解釈することもできよう。批判的な(そしてより現実的な)見方としては、基本的にデザイン上の欠陥というものだ。
おもしろいことに、ホイヤーは60年代にダート Ref.3147で初めてカレラにデイト窓を採用した際、同じように12時位置の上に配置した。ホイヤーはすぐにこの視認性の欠陥に気づき、デイト窓を9時位置に移動させ、愛好家たちに愛され、スキッパーとダートのHODINKEE限定モデルのインスピレーションとなった、現在のダートを作り上げたのである。時には、過去の失敗から学び漏らすこともある。
先代の39mmグラスボックスには、古い“Heuer”のロゴが使用されていたが、新世代のグラスボックスにモダンな“TAG Heuer”ロゴが入っているのを見たときは嬉しかった。これはヘリテージモデルではなく、初代カレラを徹底的に現代的にアレンジしたものだ。タグ・ホイヤーが作るべくして作った時計なのだ。タグ・ホイヤーは40年近い歴史を持つ。一方では、プラズマ・トゥールビヨンのような最先端の時計(タグはアヴァンギャルドの頭文字から構成される)を製作し、他方では、限定モデルのヘリテージ・リメイクで時計愛好家を満足させようとしている。カレラ グラスボックスは、タグのこのふたつの側面のバランスを見事に取っている(マリオカートとのコラボレーションが、なぜか私にも同じように響いたことを認めよう。なぜなら、タグがレースの伝統というものをもっと気楽に捉えていることを示しているからだ)。
完璧ではないが、カレラ グラスボックスはタグ・ホイヤーにとって正しい方向への大きな1歩である。これまでのグラスボックス限定モデルの成功をもとに、現代の消費者にふさわしいカレラ グラスボックスを作り上げたのだ。
「私たちは、(これらの時計が)ヴィンテージモデルの復刻版とみなされていることで、可能性が狭められていると感じていました」と、ブランドCEOのフレデリック・アルノー氏は、今年初めに新しいグラスボックスを発表した際に、初代グラスボックスについて語った。「このモデルを現代らしい時計にするために、どのように進化し続けることができるだろうか? と自問自答したのです」
カレラ グラスボックスの内部には、自社製キャリバーTH20-00が搭載されている。2万8800振動/時(4Hz)の振動数と80時間のパワーリザーブを誇る、素晴らしい自動巻きクロノグラフムーブメントだ。この点については競合モデルのセクションで説明するが、このムーブメントはクラス最高のものであり、この価格帯では比類のないものである。Cal.TH20-00は、タグ・ホイヤーが2017年に発表したキャリバーホイヤー02の次世代型ムーブメントである。コラムホイールと垂直クラッチ機構を備え、まさに高級自社製クロノグラフムーブメントに求められる機能を備えている。ムーブメントはシースルーケースバック越しに眺めることができる。このムーブメントに施された工業的な仕上げはともかく、コラムホイール(クロノグラフ機構のオン/オフを担うパーツ)が作動しているのを眺めるのは、いつ見ても楽しいものだ。
垂直クラッチにより、プッシュボタンを押したときのクロノグラフの挙動はスムーズだ。バターのような滑らかさとまではいかないが、クロノグラフをスタートさせるときの反動の感触は満足のいくものだ。
ア・ウィーク・オン・ザ・リスト
A Week On The Wristのコンセプトは、レビュアーが朝から晩まで、カジュアルからドレススタイルまで、丸7日間時計を着用し続けてその感触を確認するというものだ。毎晩6時にタキシードを着るという儀式を体現したいのは山々だが(俺を一体誰だと思っている?農夫か?)、ボタンダウンのシャツとスラックス以外の服を着ることはない。しかし、カレラ グラスボックスは、どこにでもつけて行けるモダンなスポーツクロノグラフとして、その期待に応えてくれる。ヴィンテージのカレラが欲しいのなら、その代わりに現行カレラを買えばいいのだ(2レジスターのカレラなら、グラスボックスとほぼ同じ値段で手に入るだろう)。また、これは先代のグラスボックスや90年代のCS3110のような復刻版ではない。これは完全にタグ・ホイヤーの現行モデルであり、着用にあたり、特別な配慮は必要ない。
最大の疑問に答えよう。厚さはそれほど問題ではない。厚さは14mmで、約3mmはドーム型風防によるものだ。角ばったラグ、より正確にはラグの長さと直径の比率(という物差しがあるとすれば)には少しがっかりさせられた。説明しよう。初代カレラは直径36mmだが、ポリッシュ仕上げの長いラグのおかげでラグからラグの全長は約45mmだ。大胆だがエレガントで、カレラは洗練された手首の存在感を与えている。直径39mmとラグからラグの全長46mmのカレラ グラスボックスは、それに比べると短く窮屈に感じられる。
しかし、現代のグラスボックスとヴィンテージのカレラを比較するのは現実的ではない。それはさておき、事実は変わらない。この時計の装着感は素晴らしい。コンパクトだが、ベゼルレスで、ダイヤルにスロープが設けられたことで、より大きく感じられる。ホイヤー カレラは完璧な“ドレスクロノグラフ”であり、レース会場でも、その夜のブラックタイの授賞式でも着用できる時計だった。タグ・ホイヤー カレラ グラスボックスは、真のスポーツクロノグラフのように感じられる。タキメータースケールがダイヤルより高く配置され、クロノグラフ機能が文字どおり前面に出ているからだ。Cal.TH20-00を内蔵するグラスボックスの性能は折り紙付きだ。
ジャック・ホイヤーが求めたとおり、視認性は抜群だ。先代のグラスボックスの視認性の問題は、新しいダイヤルとベゼルの一体化のおかげで解消されている。メインダイヤルの上に配置されたトラックにより、クロノグラフとしての機能は特に優れている。
ダイヤルの窪んだ形状は、ダイヤルの端に向かって上方に傾斜し、風防を埋め尽くしている。ダイヤルは、例えば60周年記念モデルのカレラと比べると確かに賑やかだが、この時計のインスピレーションは、Ref.2447NSTを直系としており、それがアウタースケールで少し賑やかな印象をもたらしている。その狙いは、初代カレラの核となる要素に新たな解釈を加えた、これらの復刻版よりも野心的なものである。角度によっては、タキメータースケールそのものがサファイアベゼルの一部であるかのように錯覚する。インダイヤルは、60年代を彷彿とさせるフォントと円形のシボ加工で、特によく表現されていると感じる特徴だ。
この斬新で素晴らしく、混乱させるような目の錯覚を生み出す風防とスロープの設けられたダイヤルの組み合わせのおかげで、私はダイヤルから目が離せなかった。仕様上はブラックとシルバーのクロノグラフダイヤルということだが、それ以上のものがある。
競合モデル
カレラ グラスボックス(希望小売価格 税込80万8500円)は、価格だけを見れば、競合相手は数多い。ロンジン、チューダー、オメガなどは、75〜100万円の価格帯で堅実なクロノグラフを提供している。ここでは、カレラ グラスボックスと競合するいくつかのモデルを紹介しよう:
- ロンジン スピリット クロノグラフ:税込49万8300円
- チューダー ブラックベイ クロノ:税込72万500円(ブレスレット仕様)
- タグ・ホイヤー グラスボックス:税込80万8500円
- オメガ スピードマスター ムーンウォッチ:税込102万3000円(ストラップ仕様)
- IWC パイロット41 クロノグラフ:税込108万9000円(ストラップ仕様)
- ブライトリング プレミエかトップタイム:税込100万円前後
このリストを見れば、どれもカレラ グラスボックスのスペック、デザイン、価格を完全に凌駕するものではないことがわかるだろう。どういうことか、詳しく見てみよう。
オメガ スピードマスター ムーンウォッチ
スピードマスター ムーンウォッチのいわゆる欠点は、技術的に言えば、カレラ グラスボックスには及ばないということだ。手巻きで50m防水しかなく、デザインは1970年代からほとんど変わっていない。しかし、見方を変えれば、これは欠陥ではなく特徴である。オメガは長年にわたって一貫してスピードマスターを改良しており、最近では2021年に改良が施されている。それは決して流行遅れでもなければ、生産終了でもない。ある意味、これはタグ・ホイヤーがこの50年間、カレラがやれたかもしれない、いや、やるべきだったかもしれないことなのだ。
マスタークロノメーター スピーディプロは、ストラップ仕様が税込102万3000円から、ブレスレット付きは風防の材質(ヘサライト/サファイア)によってもう少し高くなる。スピードマスターと同列に扱われるカレラの通常生産モデルが存在するという事実は、タグ・ホイヤーがこの1本で、いかに大きな飛躍を遂げたかを示している。確かに、もしあなたが自分のウォッチボックスに加えるモダンなクロノグラフを1本選ぶのであれば、私はおそらくどんな時でも、カレラ グラスボックスよりもスピードマスターを勧めるだろう。しかし、ある種の人にとっては、タグ・ホイヤーは他とは異なる興味深い選択肢を提供してくれる存在なのだ。
チューダー ブラックベイ クロノ
この価格帯で比較をしたときに必ずと言っていいほど登場するのが、チューダーである。ブラックベイ クロノグラフはブレスレット仕様で税込72万500円だが、カレラ グラスボックスよりサイズが大きい(直径41mm×厚さ14.5mm)。このモデルはムーブメントにMT5813を使用しており、基本的な構造はブライトリングB01のチューダー仕様である。つまり、チューダーにとっては自社製ムーブメントではなく、スペックもTH20-00とは一致しない。一方、今年ヘリテージクロノグラフを生産終了し、その後、自社製ムーブメントを搭載したOnly Watch(現在は延期)向けのゴールドケースの“ビッグブロック”を発表したため、チューダーの次世代ヘリテージ・クロノがどのようなものに進化するのか、熱心なファンが待ち望んでいる。
ロンジン スピリット クロノグラフ
ヘリテージにインスパイアされたロンジンの多くのモデルが好きだが、クロノグラフはまだどれもピンとこない。ロンジンのクロノグラフは、価格(75万円以下)で優れている反面、スペックで劣ることが多い。スピリット・クロノグラフは42mmとやや大きめで、新作スピリット・フライバックは17mmとド厚めだ。
その他の競合モデル
ブラックベイ クロノに使用されているブライトリングのキャリバーB01について触れたが、技術的な観点から見ると、おそらくTH 20-00に最も近い競合相手であろう。ブライトリングは多くのコレクションに自社製キャリバーを採用しているが、いずれもリーズナブルな代替品とするには少々高価すぎる。ナビタイマーB01は税込116万6000円から、プレミエB09とトップタイムB01はミニマルでミッドセンチュリーらしいデザインという点で素晴らしい比較対象だが、それぞれ税込100万円前後からとなっている。また、ハブリング²が100万円以下で超絶クロノグラフ(そしてスプリットセコンドまで)を製造していることも、もし手にする機会があるのであれば、言及しておく必要がある。
また、競合モデルとして挙げるには高価すぎる IWC パイロット41 クロノグラフはストラップ仕様が税込108万9000円から(IWC ポルトギーゼは税込117万7000円から)、ゼニス エル・プリメロ クロノマスター オリジナルはストラップ仕様が税込115万5000円から。最近モデルチェンジした税込197万4500円のロレックス デイトナに到達するまで、このまま市場価格の昇順に列挙していくことも可能だが、そろそろ話題を変えてもいい頃合いだろう。
もちろん、これはすべてあなたが地元の正規代理店に立ち寄って、新品を入手することを前提としている。私たちの予算を超えるこれらの時計の多くは、中古であればより手頃な価格で見つけることができる。その先には、90年代のチューダー クロノグラフの話題も出てくるかもしれないが、それはまた別の種類の話になるだろう。
カレラとタグ・ホイヤーの未来
では、タグ・ホイヤー カレラ グラスボックスは、本当にここ数年で最高のタグ・ホイヤーなのだろうか? そうかもしれない。だが、必ずしもこの時計そのものがということではなく(この時計が非常に優れたクロノグラフであることは認めるものの)、タグ・ホイヤーの未来について語っているからなのだ。
久しぶりに、タグ・ホイヤーはその歴史と現代的な時計製造のバランスを、ひとつの作品の中で取ることに成功した。このモデルは、伝統的なホイヤーでもなければ、完全にアヴァンギャルドなタグ・ホイヤーのトゥールビヨンでもない。まさにその均衡に位置する時計なのだ。まさにタグ・ホイヤーなのだ。