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ラグジュアリー製品をレビューする我々は、巧妙な職人業と仕上げに驚愕すると同時に、その値札を見てガッカリすることもしょっちゅうだ。もちろんほとんどの時計は、その価格に相応しい仕上げが施されている。しかし時には、高い値段が時計に興味を持つ愛好家たちを閉め出しているのも確かである。それはとても残念なことだ。だからこそ、愛好家の心に刺さりつつ手頃な時計を見つける瞬間はたまらないのである。
今回のロンジン ヘリテージ クラシックはまさにそういう時計だ。去る10月、ロンジンが1934年のヘリテージピースを忠実に復刻し、このセクターダイヤルを発表したとき、愛好家界隈はしきりに褒めたたえた。この10年間、ロンジンはブランドの歴史に眠っていたクラシックデザインを取り出し、愛好家たちの声に応えたモデルを次々と復刻している。レジェンドダイバー、スキンダイバー、ヘリテージミリタリーなど、この流れはまだまだ続くだろう。
本機の核心にあるのは、大げさに主張しない3針自動巻き時計のシンプルさである。同じデザインは、はるか昔のヴィンテージピースにも見ることができる。当時はオーバーサイズだったステンレスケースが、今になって愛好家たちの大好物になったわけだ。それに加えて今回の復刻には、豊かな歴史を持つ名門・ロンジンならではの現代的な時計作りの技術が息づいている。
日付表示を省いたセクターダイヤルと38.5mmのSSケースは愛好家たちが待望のコンビネーションだ。ムーブメントには、シリコン製ヒゲゼンマイを採用したCal.L893を搭載。この内容で28万円以下というのは、多くの時計好きが手の届く範囲といえるだろう。
馴染みのデザインをアーカイブから取り出し、新作として復刻する。これはロンジンにとっては当然のことだろうと、当たり前に思ってしまうかもしれないが、ヴィンテージの復刻は決して簡単な作業ではない。ケース、ダイヤルを正しく揃えること自体が大変だし、その過程で頓挫してしまうことも多い。ロンジンは、スウォッチグループ傘下の一ブランドとしてあるため、ヘリテージ・デザインに即したパーツ製造が可能であるため、素晴らしいヴィンテージ復刻を出し続けることができたのだ。
セクターダイヤルとブルーのスティール針の仕上げは端正としか思えない。時、分、秒針がそれぞれの目盛りに程よく接近しており、よって視認性は抜群である。メインセクター部分のテクスチャーはホワイトではなくシルバーに仕上げて、青針とのコントラストを作ることで、時間と分表示を読み取りやすくしている。
この時計には、もちろんデイト表示はない。「デイトなし」運動に一票を投じる愛好家の数は莫大だが、私はわりと「デイトあり」の方だ。「今日は何日?」と聞かれたときや、書類に日付を書くときに腕をパッと見るだけで解決できるのはとても便利である。しかしこれも全体のデザインに一致している場合の話だ:ヘリテージ クラシックのダイヤルはアール・デコのデザインを踏襲しており、その歴史的背景から考えると、私もデイトなしに賛成する。
ムーブメントはETA A31.501ベースの自動巻きCal. L893、近年の時計製造における一大技術である耐磁性を備えたシリコンヒゲゼンマイが実装されている。かつてハイエンドブランドにしかなし得なかった技術がここ数年、より手頃なブランドにも普及してきたのだ。クローズドバックのためムーブメントは見えないが、これもまたオリジナルに倣った仕様である。また、ケースバックには最初は見落としがちな刻印が配されている。「EFCo」というサインは、創立者のオーギュスト・アガシ(Auguste Agassiz)の甥であり、ブランド最初の工場設立を手掛けた、アーネスト・フランシロン氏(Ernest Francillon)に敬意を払うものである。
この時計について敢えて何か文句があるとすれば、30mの防水性能ぐらいだろう。ヴィンテージ時計程度の防水性能というのは、去年出たばかりの新作としてはちょっと物足りなさを感じる。普段使いに適した時計だが、毎日使うにはせめて50mの防水性能はあって欲しいところだ。
とはいえ、このモデルには絶賛すべきポイントがたくさんある。ロンジンにはここ数年で発表された多くの素晴らしいヘリテージモデルが既にあるが、今回のヘリテージ クラシックはそのラインナップのどれにも負けない格好いい時計だと思う。
基本情報
ブランド:ロンジン(Longines)
モデル名:ヘリテージ クラシック(Heritage Classic)
型番: L28284730(ブラックストラップ) L28284732 (ブルーストラップ)
直径:38.5mm
ケース素材:スティール
文字盤色:シルバー
防水性能:30m
ストラップ/ブレスレット:レザーストラップとNATOストラップ付属
価格:25万3000円(税抜)
詳細についてはロンジン公式サイトへ。