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Talking Watches アルフレッド・パラミコ 時計界のマーケットメーカーが時計コレクションを明かす

投資銀行業で身を興し、時計への情熱とキャリアを融合させたパラミコ氏は、希少なタイムピースへの投資、保有、評価、販売から金銭的利益を得ることを目指したプレシャス・タイム・ファンドを設立。そんな同氏のコレクションを披露してもらった。

※本記事は2014年5月に執筆された本国版の翻訳です 

世の中には、ほんのひと握りの真の"マーケットメーカー"と呼べるヴィンテージウォッチコレクターが存在する。ジョン・ゴールドバーガー氏もその一人である。もうひとりは、これから紹介する45歳の日焼けした肌の銀髪の紳士である。アルフレッド・パラミコ氏は筋金入りの事情通であり、長きにわたり世界でトップクラスの時計バイヤーの一人と考えられてきた。2012年11月に399万2858ドル(約4億2280万円)で落札されたユニークなプラチナ製パテック フィリップ ジュネーブ天文台クロノメーターを覚えているだろうか? エリック・クラプトン氏が所有していたプラチナ製Ref.2499よりも高値で落札された時計? そう、落札したのはアルフレッド氏だった。プラチナ製のパテック フィリップ ノーチラスRef.3700が80万ドル以上で落札されたのを覚えているだろうか? それも彼が落札した時計だ。世界で最も伝説的で価値のある時計の一つと考えられているスティール製のオリジナルのパテック フィリップ Ref.1518(4本しか作られていない)についてはどうだろう(元クリスティーズの時計部門トップであるオーレル・バックス氏でさえ、これは彼が売りたいと思う最後の偉大な時計だと述べている)? そう、パラミコ氏はその1本を所有している。彼はそのために220万ユーロ(約2億8189万円)を支払ったそうだ。

 アルフレッド氏は投資銀行業で身を立て、時計への情熱とキャリアを融合させたプレシャス・タイム・ファンドを設立。希少なタイムピースへの投資、保有、評価、販売から金銭的利益を得ることを目指した。ブルームバーグの報道によると、一時期ファンドは18%の収益を上げてS&Pのトップに躍り出た。現在、彼はミラノとマイアミを行き来しながら、時計関連の主要なオークションに参加している。彼は数百万ドル規模の時計にはあまり力を入れておらず、いわゆる“ホワイト・パテック”コレクションの売買を手掛けている。しかし、彼は今でもヴィンテージウォッチ界で尊敬される目利きであり、その発信源となっている。今回は、彼の膨大なコレクションの中から数点紹介しよう。それでは、HODINKEE特集“Talking Watches”をアルフレッド・パラミコ氏と共にお届けしたい。


ロンジン “スイス航空”パイロットウォッチ 

 1950年代にロンジン、言い換えるとスイスのマニュファクチュールは、唯一のシリアルナンバー入り限定モデルとしてスイス航空のパイロット向けの、巨大な24時間表示のパイロットウォッチを特別生産していた。この時計の特徴は、1930年代のパイロットウォッチ、ウィームズ大佐考案によるリンドバーグのアワーアングルウォッチに見られる特大ケースとオニオン型リューズを採用していることだ。アルフレッド氏はこの100本の時計(ケースバックに番号が記されている)を、20年の時を経たアワーアングルウォッチ初期のスペアパーツを集めて作られたものだと信じている。

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ロンジン 米国陸軍仕様 A7

 20世紀の究極のクロノグラフの一つとされるこのメガパイロットウォッチは、第二次世界大戦中にアメリカ軍に納入された。12時位置にクロノグラフボタンを備え、傾いたダイヤルを特徴としている。ジャケットの外側に着用することを想定したA7は、数年前にロンジンによって復刻されたが、オリジナルとは別物である。


ロンジン 13ZN センターミニッツ クロノグラフ

 ヴィンテージクロノグラフの中でも特に人気の高いモデルの一つであるロンジンのセンターミニッツは、大型の防水ケースと素晴らしいダイヤルが特徴だ。先日公開の記事「どこで何が売れているか」にも登場したが、パラミコ氏の時計はさらに良い状態の個体である。それは単に素晴らしいもので、古い雰囲気が手首にとても美しく映える。手首に着用した写真は下のギャラリーでご覧いただきたい。


1940年代のIWC ポルトギーゼ

 これは、IWCを今日の地位に押し上げた時計である。1940年代に市場から注文されたこの特大サイズの時計には、薄いスティールケースに美しくデザインされた懐中時計のムーブメントが使用されていた。ポルトギーゼが1990年代初頭に再登場し、いわゆるジュビリーモデルが登場すると、このモデルは現代のIWCの基礎となった。このポルトギーゼの40年代のオリジナルモデルは、全体的なコンディションが良好であること、ブラックダイヤル、ラジウム針とアワーマーカーが特徴である。

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1930年代のIWC マークⅨパイロット・ウォッチ

 パイロット・ウォッチ マークXIもまた、今日のIWCの代表作としての地位を確立したベンチマークとなるモデルだが、筋金入りのコレクターの間では、より早く、より希少性の高いIWCのマークXを手に入れようとする動きも少なくない。アルフレッド氏は、ドイツ軍に特注されたマークIXを所有している。


1960年代のIWC アクアタイマー

 もう一つの初期のIWCは、シリーズ全体の始祖となった時計だ。これは第1世代のアクアタイマーだが、この時計をこれほど興味深いものにしているのは、コンディションが良好であること、オリジナルのブレスレット、そして目を見張るようなブラックダイヤルだ。


1920年代のオメガ クロノグラフ

 現代のオメガといえば、クロノグラフを製造する会社を思い浮かべる。初期のCal.33.3と後のスピードマスターは、それぞれの時代の最も象徴的な時計の一つである。しかし、それ以前に、オメガはこの時計を作った。この特大ケースには、2つのサブダイヤル、ゴージャスなエナメルダイヤル、そして何よりもクールなのは、6時位置のラグの間にあるモノプッシャーである。実際にこれが懐中時計から改造された初期の腕時計であることが分かり、多くの人は、このリファレンスがオメガとしての最初期の腕時計クロノグラフであると信じている。


1960年代のブレゲ タイプXX CEV トロピカルダイヤル

 20世紀半ばのクロノグラフの中で最も有名なモデルの一つがブレゲのタイプXXだ。軍用と民間用両方の時計が製造されていたが、軍用時計の多くは無地ダイヤルを特徴としているが、コレクターは“ブレゲ”の名前を前面と中央に表示することを好むことが多く、民間用の時計に多く見られる。この後期モデルは、ここで見たような標準的なタイプXXではなく、CEV(フランス空軍パイロット養成校)で使用されていた民間用時計のように見えるという点で、両方の世界における最高の特徴をもつ個体だ。さらに、ゴージャスなブラウンダイヤル。このタイプXXには悩殺されそうだ。


1940年代のオーデマ ピゲ ステンレススティール&ピンクゴールドコンビ クロノグラフ

 1940年代のパテック製クロノグラフは最高の存在かもしれないが、オーデマ ピゲの同時代の時計の方が、はるかに希少だ。この1940年代のAPクロノグラフは、その全体的なコンディションの良さと現存していると事実によって、並外れた存在感を放っている。ケースはステンレススティールとローズゴールドのツートンカラーで、ダイヤルはローズゴールドだ。このようなモデルは他に例を見ない。

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パテック フィリップ カラトラバ ブレゲ数字マーカー 3本セット(Ref.570のスティール、イエローゴールド、ピンクゴールド製各ケース)

 パテックのカラトラバは、まさにカテゴリを代表する腕時計である。1930年代に30.6mmのスモールサイズのRef.96が発表され、パテックの初期のカレンダー無し三針モデルを代表する35-37mmのRef.570が登場した。Ref.570はこれまでに製造された腕時計の中で最も完璧なプロポーションをもつモデルの一つであり、ダイヤルと素材のわずかな違いが、価値や重要性に大きな違いをもたらすことがある。Ref. 570の最も望ましい鉄板レイアウトは、ブレゲ数字のツートンカラーダイヤルだ。これは非常に単純に言えば、とてつもなく希少価値の高いモデルだ。パラミコ氏は、イエローゴールドとローズゴールド、ステンレススティールの3本を所有している。スティール製のRef.570はパラミコ氏の旧友ジョン・ゴールドバーガー氏所有の個体と酷似しているが、これらの時計をさらに特別なものにしているのは、ケースとダイヤルの質の高さと、ダイヤルのエキゾチックな特徴がパテックからのアーカイブに記載されているという単純な事実だ。このようなセットは世界中どこを探してもないだろう。それと、スティール製に見覚えがある理由は、それはパテックの現行モデルRef.5196Pがこのデザインを引用しているからである。


パテック フィリップ Ref.1463 ステンレススティール製クロノグラフ フレチェーロ販売モデル

 Ref.1463はパテック唯一の防水クロノグラフであり、1998年にRef.5070が発表される前の20世紀中にパテックが製造した最後のクロノグラフだ。このモデルは3つのヴィンテージクロノグラフの中で最も価値のあるモデルであり(Ref.130、Ref.1579は他の2つのヴィンテージクロノグラフの中で最もよく見かけるモデルだ)、パラミコ氏は究極のスティール製Ref.1463を所有している。彼は何年もこの時計を追い求めていたが、以前に220万ユーロでスティール製のRef.1518を購入したばかりだったため、一旦は見送らざるを得なかったのである(編注:後に入手)。この時計の特徴は、そのツートンのダイヤルと、ウルグアイの宝石商フレチェーロによって販売されたという事実が興味深い。パラミコ氏が今最も愛用している時計だそうだ。


パテック フィリップ ノーチラス Ref.3700 未使用品

 アルフレッド氏は時計愛好家であると同時に、コレクターでもあることを忘れてはならない。コレクターにとって、全ての時計が着用されるわけではない。彼はこの初期のパテック ノーチラスを見つけたとき、決して身に着けることはないにしても、それを手に入れなければならないと直感した。これは、本当に手つかずの状態の、Ref.3700元祖ノーチラスだ。ブックレットや購入証明書、素晴らしいコルクボックス(歴史上最もクールな時計用化粧箱として誰もが同意するところだ)、ケースバックのオリジナルステッカーと、全てのオリジナルドキュメントを保持している。これほど素晴らしい時計は他にはないだろう。


ブランパン トルネク・レイヴィル米国海軍仕様

 軍用時計収集の聖杯の一つとして、またアメリカの時計収集の聖杯の一つと考えられているこの時計は、アメリカ海軍に納入されたトルネック・レイヴィルの時計である。既存のブランパン フィフティ ファソムズのミルスペックウォッチをベースに、アラン・トルネック氏はこの時計を米軍仕様に製作し、ケースバックには "DANGER, Radioactive Material, If Found Please Return To Nearest Military Facility(危険! 放射性物質あり、発見された場合はお近くの軍施設まで) "と稀に見る不吉な警告が記されている。1000本納入されたが、コレクターの間では、個人の手に残ったのは100本に満たないとされている。

 今回の「Talking Watches」をお楽しみいただけただろうか? 下のギャラリーにアルフレッド・パラミコ氏のコレクションの一部を掲載した。