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クイック解説
もうこれで限界かと思った途端、リシャール・ミルがまたやってくれた。これまでで最も複雑精緻な腕時計を作り上げたのだ。世界を飛び回る超一流トラベラーのために設計され、エアバス・コーポレート・ジェット (ACJ) とのコラボレーションにより実現した。トゥールビヨンに加え、大判の日付表示、第二時間帯を示すGMT針、70時間のパワーリザーブインジケーター、そしてアラームを装備。リシャール・ミルにアラームがセットされたのはこれが初めてである。
もちろん、アラーム付き腕時計自体は珍しいものではないが、リシャール・ミルのそれは音を出さずに振動で時間を知らせるため、周囲に聞かれることなく、着けている人だけが感じ取ることができるものだ。自動巻き上げローターに似たような特殊な振動体が高速回転し、耳には聞こえず肌には感じられる程度の振動を発生させる。
正直に告白すると、「RM62-01は、静寂が支配するラグジュアリーな空間に配慮した控えめな設計」というプレスリリースを読んだとき、私は思わず苦笑してしまった。というのも、新しいRM62-01は、控えめとは程遠い。ベゼルは、サテン研磨チタンとカーボンTPTの二重設計。カーボンTPTは、ひとつの塊をウエハース並みに1.8mmの薄さにまで研磨した。このチタンとカーボンTPTの組み合わせにより、アラームの発した振動が時計の機構部分に響くことなく、手首にしっかりと伝えられる。
時計を正面から見てみると(メタルの中を詳細に見ることはできなかった)、リューズ中央に押しボタンがあるのを確認できる。これひとつで時計を巻き上げ、時間やアラームを設定し、UTC針を調整する。3時の位置にあるディスクは、明るい色を背景にして、選択中のモードを表示する:N(Neutral: ニュートラル) — W(winding: 巻き上げ) — T(time setting: 時間設定) — U(UTC hand setting : UTC針の設定) — A(Alarm setting: アラーム設定)。
中心から伸びる緑色の針は、第二時間帯用のUTC針。サファイアダイヤルのすぐ下、9時の位置にあるトゥールビヨンは、3Hzで振動するフリースプラングを得意げに披露する。大判の日付ディスクは12時の位置に置かれ、リシャール・ミルによく見られる赤いハッチングの窓で縁取りされている。最後に、70時間のパワーリザーブは11時の位置に、振動アラームに関する機能はすべてメインダイヤルの下部にまとめられている。
アラーム振動を起こす振動錘。
アラームの振動を起こす回転錘は、一体成型のホワイトゴールドを加工し、5400rpmで回転するよう厳密に調節され、24時間中1分単位の時間設定が可能だ。これを、3時の位置にある機能セレクターで設定する。振動の最大時間は12秒だが、そのうちにこの振動時間も自分で設定できるようになるだろうか。アラームは、リューズを巻くのではなく、8時の位置にあるボタンを12回押してセットする。
ケースバックから見た中の様子。
ファースト・インプレッション
RMとACJとのコラボレーションは、これが初めてではない。2016年、両社はRM50-02トゥールビヨンACJで初コラボした。RM50-02がジャンボジェット機の鮮明な白の機体を反映しているのに対し、RM62-01はACJクリエイティブ・デザインのトップ、シルヴァイン・マリアットがデザインしたキャビン内部の特注ダークウッドパネリングに着想を得たとされている。マリアットは、プレスリリースで次のように語っている。
「サファイアのガラスは飛行機の窓に似た形で、その下の各種インジケーターは色別にはっきりとしたコントラストをなし、読み取りやすくなっています。超幅広のチタンリューズはジェットタービンを、ボタンはエンジンと翼を繋げるパイロンを想像させます」
私がリシャール・ミルに抱く印象は、これまでにさまざまな段階を経てきた。当初は好きではなかったが、それが好奇心に変わり、次第にその真価を認められるようになった。そして今、その評価はますます上がっている。時計というのはまず第一に、遊び心がなければならないということに気付くのに、長い時間がかかった(シャレのつもりではない)。
そして多くの魅力的な時計にとって(もちろん、すべてがそうだというわけではない)、納得のいく価格で正確に時を刻むということはかなり優先順位が低い。今年、SIHHで発表された同社の“ボンボンコレクション”をしばらく試してみて分かった。リシャール・ミルはあらゆる方法で限界を押し広げようとしている。その点は称賛されるべきだ。だが、それで購入を検討するかと聞かれれば、全くそのつもりはない。リシャール・ミルのDNAは、余計なものを省いたシンプルさへの私の情熱と共鳴するだろうか。ノー。
彼らは心ときめくような素晴らしいものを製造しているだろうか。それに関しては、答えはイエスだ。
忘れないで欲しい。これは 1,225,000 ドル、約1億3千万円の腕時計だ。リューズのサイズや価格にまつわるいかなる論理的議論も、まるで意味をなさない。ひとつだけ確実なのは、これに飛びついてセンセーションを巻き起こす理解不能な人々は十分にいるし、数が限られて入手が極端に困難なことから、これと似たような超高級限定版が今後も作り続けられるのは間違いない。
基本情報
ブランド:リシャール・ミル(RICHARD MILLE)
モデル名:トゥールビヨン バイブレーションアラーム(Tourbillon Vibrating Alarm ACJ)
型番:RM 62-01
直径:42mm
厚さ:16.90mm
ケース素材:チタン&カーボンTPT®製ケース
文字盤色:サファイア製透明文字盤、厚さわずか0.4mm、両面にアンチグレア加工、八つのシリコン留め具に固定されている
インデックス:アラビア数字
夜光:あり
ストラップ/ブレスレット:ラバーストラップ
ムーブメント情報
キャリバー:RM 62-01
機構:時、分表示、オーバーサイズデイト、am/pm表示、 パワーリザーブ表示、バイブレーションアラーム機能、アラーム:on/off表示
直径:31.92mm
厚さ:3.199mm
パワーリザーブ:70時間
巻き上げ方式:手巻き
振動数:3hz(2万1600振動/時)
石数:77
価格・発売時期
価格:1億3200万円(税抜)
限定:ブティック限定 30本
詳細についてはリシャール・ミル公式サイトへ。