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オメガ ミュージアムは、ジュラ山脈の麓に位置するスイス北西部のビール/ビエンヌにあります。都市の名が二通りで表記されることからもわかる通り、ドイツ語とフランス語の2ヵ国語が公用語として定められている、言語の境界線に位置する都市です。この街の中心にある日本人建築家の坂茂氏が手掛けた印象的な外観のシテ・デュ・タン(フランス語で“時の都”を意味するCité du Temps)には、スウォッチ・グループの拠点があります。
オメガ ミュージアムは、1848年から現在にわたるブランドの歴史と革新を体験できる場所です。2019年に現在の形でオープンしました。オリンピックや宇宙計画などの大きなプロジェクトのために開発されたモデルはもちろん、著名人に愛された品などさまざまな時計が展示されています。
ミュージアムには体験型の展示もいくつかあり、時計愛好家やオメガファンだけでなく、歴史や技術に興味があるすべての人が楽しめる場所となっています。館内に設置された9mのランニングトラックを走ってタイムを計測しオメガの公式タイムキーパーとしての役割を体験したり、アポロ13号が地球に生還する鍵を握ることとなった14秒を正確に計測するゲームなどがあります。ここからは僕が個人的に大好きな展示品をいくつかご紹介します。
防水ウォッチ、マリーン
1932年に商業化された世界初のダイバーズウォッチとして登場したマリーン。特許を取得したダブルケースは、コルクで密閉しロックする構造で、時計内部に水やホコリが侵入するのを防ぎました。ダイバーズ・エクステンションと呼ばれる伸縮可能なクラスプが導入されていたことも特徴のひとつです。ミュージアム内には複数のバリエーションがあり、後に登場した復刻モデルも展示されています。
オフィシャルタイムキーパー
オメガは、1932年のロサンゼルス大会で、史上初めて単一の時計メーカーがオリンピックのオフシャルタイムキーパーとして選ばれることとなります。同大会にはたったひとりの時計技師と30個のCal.1130 ストップウォッチが提供されました。オメガの高精度のストップウォッチが導入されたことで、10分の1秒単位での計測が可能となったため、この大会からラップタイムも同じ10分の1秒単位で測定されるようになりました。今日では100万分の1秒単位までの計測が可能となっており、その技術は現在も進歩し続けています。
クロワゾネダイヤルを備えたシーマスター Ref. OT 2520
これはミュージアムに展示される数あるシーマスターのなかで個人的に最も気に入ったモデルです。直径34mmのケースは18Kゴールド製で、ダイヤルにはくさび形のインデックスと中央にローマ神話の海の神ネプチューン(ポセイドン)と2頭のシーホースがクロワゾネで描かれたもの。こうしたクロワゾネダイヤルのシーマスターは、1946年から1956年にかけてごくわずかだけ生産された非常に希少なものとなっています。多くの場合は顧客からの特別な注文で作られたそうです。
ジョン・F・ケネディのスリムライン ウォッチ Ref.OT3980
これはジョン・F・ケネディが大統領就任式の際に着用していたスリムライン ウォッチと呼ばれる時計です。ケネディの友人のグラント・ストックデールから大統領選の前に贈られたものでした。ケネディが受け取ったときからすでにケースバックには「アメリカ合衆国大統領ジョン・F・ケネディ、友人のグラントより」(President of the United States John F. Kennedy from Friend Grant)と刻印されていました。このときの大統領選挙はリチャード・ニクソンと争ったアメリカ史上最も接戦となった選挙でしたが、数ヵ月後にこの言葉が現実のものとなりました。大統領の腕時計、いわゆるプレジデントウォッチは他のブランドのものも含めていくつか存在しますが、個人的にはバックストーリーも含めてこれが一番お気に入りです。
月で着用された最初の腕時計、スピードマスター
1969年7月21日2時56分(GMT)、アポロ11号で初めて人類が月面を歩いた瞬間です。宇宙空間での船外活動(EVA)に耐える腕時計としてNASAによって唯一認定を受けていたのがこのスピードマスターで、人類初の月面着陸を支えたというのはあまりにも有名な話です。ミュージアム内にはトリロジーのスピードマスターから(残念ながら当日は不在)アラスカプロジェクトなどのプロトタイプやスピードマスターのロゴが描かれた計器を乗せたLRV (月面車)も展示されています。
オメガ ミュージアム
・営業時間:火曜〜日曜:10:00~17:00 月曜・祝日:休業
・住所: Cite du Temps SA Nicolas G. Hayek Strasse 2 2502 Biel/Bienne Switzerland
・入場料: 無料
・TEL: +41 32 343 89 00
その他、詳細はオメガ公式サイトへ。