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Introducing キングセイコー KS1969、優美な曲面が目を引くアイコニックデザインをモダンにアレンジ(編集部撮り下ろし)

2022年の復活以降、KSKベースのモデルに注力していたキングセイコーからいよいよ完全新作が発表された。

Photo by Kyosuke Sato


クイック解説

ブランド復活から2年が経過した今年、キングセイコーから新たに「KS1969」が発売される。その名前のとおり、1969年に登場した45KCM(KCMはキングセイコークロノメーターの意)をデザインモチーフとしたシリーズだ。45KCMはセイコーが国産機械式時計の発展をけん引していた時期のモデルであり、直線を基調としたそれまでのデザインから一風変わった、なめらかな曲線を描くアイコニックなトノー型のケースを備えていた。今回発表されたレギュラーモデル3型(SDKA017、SDKA019、SDKA021)および限定モデル(SDKA023)はその45KCMの外観を踏襲しながら、現代の技術を持ってさらに高い美観を実現したものとなっている。

左からSDKA017、SDKA019、SDKA021。

1969年登場のキングセイコー 45KCM。

 KS1969においてもっとも特徴的なのは、左右に広がるゆるやかに湾曲したケースだろう。ラグからラグまでひと続きになった曲面を鏡面で歪みなく仕上げるのは、技術的に非常に難易度が高い。しかし、新作と1969年のオリジナルモデルを詳しく比較してみたわけではないものの、写真のうえでは新作がより三次元的で優雅なフォルムを実現しているように見える。ケースサイドからラグにかけてのエッジの立ち方もシャープで、メリハリが利いている。

 サイズは直径39.4mmで厚さが9.9mm。既存モデルであるSDKA005(直径38.6mm、厚さ10.7mm)と比較するとケース両サイドの曲面のぶんだけ幅が出ているようだが、ケースサイドが裏蓋側に向かって薄くシェイプされたフォルムのためか、実寸よりもややコンパクトに見える。また、ケースの厚みが10mmを切ったことで、ドレスウォッチらしい上品な雰囲気すら漂っている。なお、この薄さには、セイコーの現行機種において最薄の自動巻きムーブメント6L35を引き続き採用したことも関係していると思われる。

 その他ディテールを挙げるとすれば、12時位置のインデックスが従来のライターカットではなく矢羽根をイメージしたものになっていること、時分針が力強いドーフィン針から端正なバトン針に変更されていること、60年代のキングセイコーからヒントを得た新開発の多列ブレスレットを使用していることだろうか。特にブレスはひとコマの長さが短めに設定されていることで、手首に沿うようなフィット感を生み出している。

 なお、レギュラーモデル3型においては、過去と未来が交錯する東京に着想を得たダイヤルが採用された。シルバーダイヤルは今回新たに開発された型打ち模様により現代の東京の街並みを、パープルダイヤルは古くから人々に愛されてきた伝統色“江戸紫”を、グリーンダイヤルはそのグラデーションによって東京の緑豊かな一面を表現しているのだという。一方SDKA023では、セイコーブランド100周年記念限定モデルという立ち位置もあり、次の100年への飛躍を願いとして込めて“昇龍”をダイヤル上で表した。天高く飛翔する龍、その鱗紋様を立体的なトライアングルパターンに落とし込みながら、生命の源かつ龍を象徴する“清流”を想起させるライトブルーグリーンをあしらっている。これでもかと験(げん)を担いだ、実に日本的な一本だ。

 これらはすべて7月6日(土)に発売予定、価格は39万6000円(税込)となっている。全国のセイコーウオッチサロンにて購入可能だ。


ファースト・インプレッション

キングセイコーは2022年のブランド復活以降、1965年に発売された2代目モデル“KSK”にインスパイアされたプロダクトを発表し続けてきた。ときにダイヤルのカラーやパターンを変えたり、サイズを微調整したりなどアレンジを加えながら、60年代のインダストリアルデザインを思わせる力強いフォルムで僕たちを魅了してきた。今キングセイコーと聞くと、やはり大胆な多面カットが施されたケース&ラグ、インデックスに向かってシャープに伸びる太く長い針、ダイナミックに光を反射するフラットな多列ブレスレットが思い浮かぶ。セイコーは“KSK”というアイコニックなアーカイブを(現代的に昇華しつつ)用いながら、この2年でキングセイコーというブランドをしっかりと確立してきたのだ。そして今回のKS1969の投入は、現代キングセイコーを次のステップに進めるための布石であるように思われる。

 KSKモデルは洗練された力強さがあり、KS1969は優雅でエレガントである。同じブランドで同じムーブメントを積んでいながら、そう言い切れるほどデザインは明確に棲み分けられている。それはケースのフォルムもさることながら、細く長くとられたバトン針、さらに多列になり繊細な印象を強めたブレス(よく見ると、各コマも丸みが強調されている)などの細部にも表れているように見える。

 しかしそれらは、KSKモデルが確立した現代キングセイコーの文脈のうえに行われている。針とインデックスに施されたきらびやかな多面カット、ボックス型のサファイアクリスタル風防、そしてキングセイコーが生まれた地である東京にインスパイアされたダイヤル表現などを要素として踏まえることで、本作KS1969もモダンとクラシックが同居するあくまでも現代キングセイコーらしいルックスに仕上がっている。

 なお、KS1969は従来のKSKモデルと比較すると、プライスの面で大幅な上昇が見られる。先日一度手に取って見てみた印象から言うと、三次元的なカーブを描くケースの処理、および今回のために新開発されたという13連ブレスなど、外装面での美観の向上が影響しているのではないだろうか。しかしこれによって、オリジナル45KCMの丸みを帯びた優美なフォルムが現代的に進化しているのも事実だ。そこに価値を見出せる人にとっては、現代キングセイコーにおける新たな選択肢となるだろうと思う。オリジナルやKSKモデルとのより詳細な比較や、今作における技術面でのストーリーなどは追ってレポートしたい。

 ちなみに、僕はヴィンテージのキングセイコーならKSKよりも45KCMのほうが好みだ。45KSCこと“キングセイコー スーペリアクロノメーター”は、45系という3万6000振動/時(10振動/秒)のハイビートムーブメントを搭載していた。この45系ムーブメントは、当時の第二精工舎の亀戸工場がクロノメーターコンクールのために開発したものを市販用にモディファイしたものなのだという。その逸話からも納得の高精度を誇っており(しばしばゼンマイ切れに悩まされる時計ではあったというが)、セイコーがかつて天文台コンクールでスイスブランドとしのぎを削っていたころを思い起こさせてくれるモデルとなっている。

 今回のKS1969は、そんな45KCMをモダンにアップデートした時計だ。願わくば今後10振動のハイビートムーブメントを搭載した“完全復活版45KCM”にも期待したいところだが、まずはこの当時を思わせるエレガントなフォルムを存分に堪能してみたいと思う。


基本情報

ブランド: キングセイコー(King Seiko)
モデル名: KS1969
型番: SDKA017(シルバー)、SDKA019(パープル)、SDKA021(グリーン)、SDKA023(ライトブルーグリーン)

直径: 39.4mm
厚さ: 9.9mm
ケース素材: ステンレススティール
文字盤色: シルバー(SDKA017)、パープル(SDKA019)、グリーン(SDKA021)、ライトブルーグリーン(SDKA023)
インデックス: アプライド
夜光: なし
防水性能: 日常生活用強化防水(5気圧)
ストラップ/ブレスレット: スティールブレスレット
追加情報: 内面無反射コーティングが施されたボックス型サファイアガラス風防


ムーブメント情報

キャリバー: 6L35
機構: 時・分表示、センターセコンド、3時位置に日付表示
パワーリザーブ: 約45時間
巻き上げ方式: 自動巻き(手巻き)
振動数: 2万8800振動/時
石数: 26
精度: 日差+15秒~-10秒(気温5℃~35℃において腕につけた場合)


価格 & 発売時期

価格: 39万6000円(税込)
発売時期: 7月6日(土)
限定: SDKA023のみ世界限定700本

詳細は、キングセイコー公式サイトへ。