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「私は自動巻きの時計を毎日着けています。リューズで巻くことはほとんどないのですが、巻上げ機構の劣化はないのでしょうか? 予防的に時々巻いたほうがいいのでしょうか?」
このことは、我々にとって時計がいかに神秘的な存在であるかを物語っている。確かに、例えば車庫に入れたまま放置された車のように、長時間使用しないことは機械にとって良くないかもしれない。しかし、一般的に機械の消耗は、使わないことではなく、使うことで生じるものだ。自動巻きムーブメントは、日付と時刻の再設定以外にリューズを操作する必要がなく、何カ月も動き続けることができる。巻き上げないことは、手巻き機構に害を与えないだけでなく、手巻き輪列や巻き真、巻き真チューブの摩耗を防ぐことにもつながる。気軽に身に着けて、そのままにしておこう。
「トロピックスポーツタイプのストラップ、特に大きな穴の開いたものについて聞かせてください。大きな穴は何のため? 見た目のかっこよさは別として、その目的は何なのでしょうか?」
多分、涼しくするため?
暑い時期には手首にゆとりができるため、より快適に着用できると言えるかもしれない。トロピックストラップが登場したのは1960年代で、レクリエーションダイビングが本格的に始まった頃だった。スティール製のブレスレットはこの40~50年で大きく進歩したが、トロピックストラップは金属製のブレスレットより軽量で、快適な代替品だったのだ(今でもそうだと思う)。
名前の確かな由来を聞いたことはないが、おそらく、娯楽としてのスキューバダイビングがよく行われ、午後の暑さで手首まで汗をかくようなエキゾチックな熱帯地方をイメージしたものではないか。パンチングは、水に浸した後に水の排出を助けるためのものだったのかもしれない。現在、ダイバーズウォッチを所有している人で実際にダイビングする人は少ないことを考えると、ダイバーズウォッチそのもののように、第一の目的はクールに見せることなのではないか。
「最近、オメガのスピードマスター 1861を購入しました。初めてのクロノグラフですが、クロノグラフ機能を使って、昼休みの時間やフレンチプレスの蒸らし時間などを計るのが楽しくて仕方ありません(残念ながら、再計測はまだできないですが)。質問です。クロノグラフ機能を使うと、ムーブメントから余分なエネルギーを奪い、パワーリザーブが減ってしまうのでしょうか?」
その通り。クロノグラフウォッチのスペックは2通りに分かれることがある。一つはクロノグラフがオンの時、もう一つはオフの時だ。とはいえ、通常の使用では毎日巻き上げていれば、クロノグラフを常にオンにしていても(Cal.1861はそのために設計されたわけではないので、あまりオススメできないが)、複雑機構が余分な動力を消費していると気づくことはないだろう。
どうしても気になる人は、実験をしてみてはいかがだろう。時計を最後まで巻き上げ、クロノグラフをスタートさせ、止まるまで動かし続ける。クロノグラフをストップさせると、時計は再び動き出すはずだ。クロノグラフをオンにしてもゼンマイの回転は速くならないが、クロノグラフ機構による摩擦が加わることでゼンマイのトルクが弱まり、早く止まるようになる。
クラシックな水平クラッチクロノグラフを調整する際の基本的な作業の1つは、クロノグラフのスイッチを入れたときにテンプの振り角が落ちていないか確かめることだ。クロノグラフ輪列は、メインの計時輪列からエネルギーを“奪って”駆動している。調整ができていないクロノグラフや、パワーリザーブの限界に近いクロノグラフでは、テンプの振り角が低下し、精度に悪影響を及ぼす可能性がある。
「GMT+5:30のインドに住む時計愛好家の私は、典型的なGMTウォッチを使うことができません。私にはどのような選択肢があるのでしょうか? ダイヤルと針が2組あるデュアルタイムの時計が唯一の選択肢でしょうか?」
残念ながら、レベルソ・デュオのようなものがベストな選択だと思う。GMTから時間単位でないオフセットがある場合も含めて、37のタイムゾーンを全て表示するワールドタイムウォッチは非常に少ないが存在する。ただし非常に高価なものになりがちだ(ヴァシュロン・コンスタンタンのオーヴァーシーズ・デュアルタイムは現在、税込で292万6000円だ)。同様に、ほとんどのGMT/デュアルタイムウォッチは、ローカルタイムの時針が1時間単位でジャンプするようになっている。つまり、あなたのようにグリニッジ標準時から1時間単位でないオフセットのタイムゾーンにいる人は、ちょっと困ったことになる。
私はよく不思議に思っていたのだが、なぜ有名なGMTウォッチのムーブメントのアップデートで、ローカルタイムの時針を24時間針とは別に設定できるようにしないのだろう。確かに、それには分針を維持する方法も必要だろうが。莫大な研究開発費をもち、GMTウォッチを作り続けてきた老舗ならば、きっと実現できるはずだ。そう、ロレックスなどなら。そうすればツートンカラーで実現可能かもしれない。
「なぜ人はリファレンスナンバーにこだわるのですか? きっと、あの赤サブをもっと簡単に語れる方法があるはずだと思います。」
正直に言うと、比較的少数の例外を除いて、私はリファレンスナンバーを把握することができなかった。パテックの1518、スピードマスターのCK2998、サブマリーナの6200など、いくつかは覚えているのだが、時計の集まりで誰かが近づいてきて、「ねえ、何をもってきたと思う? リファレンスXxxxxxxのxxxxxxxだよ!!!! 」と言われると、血の気が引く。
子供が小さかった頃、私は4年ほど専業主夫をしていたが(今でも迷わずそうする)、地元の遊び場で何年もの間会っていた親御さんの中には、とある理由で名前を忘れてしまった人やそれを聞くことすらできない人もいた。しかし、リファレンスナンバーに関しては本当に苦手だ。20年かけて時計マニアの中の時計マニアと呼ばれようとしてきた男にとって、それはただただ恥ずかしいことなのだ。
多くの人がリファレンスナンバーにこだわる理由は、ある種のインサイダー用語が楽しみの一つだからだと思う。愛好家コミュニティがもつ最も崇高な衝動ではないかもしれないが、人間は、誰を含めるかと同じくらい、誰を排除するかによってコミュニティを定義してきた......いや、人間が存在する前からだ。
誤解しないでいただきたいが、私は天使のような愛すべき善良な人間ではない。リファレンスナンバーを知っていることで自惚れることはできないが、少なくとも時計に関しては、他のことで耐え難いほどに自惚れてしまう機会が無数にあるのだ。
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