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Culture Of Time ミッドタウン・マンハッタン、晩夏の昼下がり

ニューヨークで最も慌ただしい地域の中心で、仕事とレジャーが混在する場所。

いかにも典型的な理由ばかりだけれど、私は以前、9月が大好きだった。学校へ戻るワクワク感、セーター日和の天気、スープの季節であること。しかし、最近では、自分の年齢や文化的背景の変化により、秋の新鮮な気分を味わうことが難しくなってきた。9月はまだ夏なのだ。

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Men looking at a phone.

 しかし今、人々がフルタイムでオフィスに戻り、あるいはハイブリッド型のワークスタイルに落ち着き、秋の平穏がわずかに戻ってきたように感じられる。マンハッタンほどのビジネス街はどこを探しても見当たらないけれど、フリースベストを着た金融マンを見かけないのは久しぶりだ。こんなにも彼らが恋しく思えるとは考えたこともなかった。サラダに行列を作ったり、シティサイクルを無謀にも運転したりと、元気を取り戻しているようだ。彼らがかつてのセプテンバー気分をまた運んできてくれた。しかし、サラリーマンに混じって、夏の最後の一滴を絞り出そうと励む一般市民もいる。まだ強い日差しに顔を向け、短パンとタンクトップ姿で歩道を埋め尽くし、太陽が輝きを失う前にできる限り日焼けをしようとするのだ。

Man walking along street.

自動巻きのオメガ シーマスターを持つケン。"1950年代だったか、父が自分用に買ったものです。生きているうちに私に譲ると言われたのですが、私は断りました。だから、父が亡くなったときに受け継いだんです。朝、この時計をつけると父とのつながりを感じて気分がいい。でも、時間が合わないんです。私が死んだら、この時計をどうしたらいいのかわからない。私には子供がいないから"

 この「終わり」と「始まり」の重なりを祝うため、私たちはミッドタウンの街角で、人々がどのように過ごしているのか、そして何を身につけているのか、腕元にスポットライトを当てて観察した。4年前だったら、手に余るほどの、道行く数多の投資銀行家たちに声をかけていただろう。いまはどうだ。たくさんの人に、色とりどりの時計が混在している。知っているものもあれば、知らないものもある。派手なものから、平凡なものまで。しかし、そのすべてがいまこの街にいることの放つ奇妙なエネルギーをとらえているという共通点を持つ。暑く、気だるく、興奮もありつつ慎重で、そしてありがたい。消えたり目立ったりと、人ごみに紛れるのもいいものだ。

Woman hailing a cab.

セラミック製のシャネル J12でタクシーを呼び寄せる。 

Man looking at an iPad.

この方は、1973年の卒業記念に両親から贈られたティソが2000年代初頭にとうとう終わりを迎えたため、新たにオメガを手に入れたそう。"古いティソに合う、ダークフェイスの小さな時計が欲しかったんだ"

 これは、時計というよりも、時間についての物語である。あるとき、ニューヨークの賑やかで退屈な通りで、一見何の変哲もない一日を撮影しようと試みた。けれども、写真にはレベルやレイヤーがみられ、都市生活をとても興味深いものにする相互作用があるのは歴然である。ある時計にはストーリーがあり、またある時計はただ時間を知らせるだけのものである。どちらもよさがあり、リアルだ。

Woman walking down street.
Woman walking down the street.

MJが身につけているのは、自分で購入したセイコーの時計。”親にお金を出してもらうのも嫌だったから、手頃な価格で、でもスタイリッシュなものが欲しかった”と彼女は言う。”セイコーは日本のメーカーで、最高の時計メーカーのひとつよ。私は女性用のヴィンテージ・ロレックスを購入するための頭金をためているの。22歳の誕生日プレゼントにするつもり"

People looking at a map.
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 あなた自身がミッドタウンの角にいたとしたら、通行人の手首を確認するのには苦労するだろう。ここでは、我々の集めたスナップショットを掲載している。満足に仕上がっているだろうか? 会話の断片は、すべてを物語ることができているだろうか?

Man holding a pretzel.

トムは車の修理のついでに、このメルセデスの時計を買った。車とお揃いの時計が欲しかったのだそう。ほら、"ヒューマンズ・オブ・ニューヨーク "の16ページに掲載されてる!

Man sitting on chair outside.
Man on a bike smiling at the camera.

 この写真には、見るべきものにあふれている。彼の笑顔や、建物の形状に映える外壁の影の角度など。この瞬間が、あなたにも聞こえてくるのではないだろうか。ベルが鳴る音、タクシーのクラクション、そして集中すれば時計の音も聞こえてきそうな、この瞬間が。

People waiting to cross the street.
Man smoking a pipe showing his watch.

"3ドルだったんだ!"

Watch on a wrist.

"この時計は35年前のものです。裏話は言えませんよ。奥さんや上司にバレたらまずいですからね"

 この写真を撮るのにどのくらいかかったのだろう? 被写体は何度、自分の言ったこと、言わなかったことについて考えただろう? 彼らは自分の時計に新たな価値を見出したのだろうか? それとも、「これじゃダメだ」と気後れしたのだろうか? そもそも、撮られていることに気づいていたのだろうか?

Woman walking down the street.

このタイメックスの時計は、彼女のおばあちゃんのものだった。彼女は、おばあちゃんが亡くなるまで一度もこの時計を見たことはなかったが、彼女に託された。

Two people holding hands crossing the street.

ロレックス GMTマスターⅡとやさしい手ざわり。

Man showing his watch to camera.

ルチアーノは15歳のときにローマでこの時計を手に入れ、以来、毎日身につけている。"一番最初に稼いだお金で買ったんだ"

Woman riding a bike.
Woman pushing a stroller.
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 通常の生活に戻ったり、新しい領域を開拓したりすると、時間の感覚が変わる。寝室からリビングまで3分だった通勤時間が、40分になる。読書の時間が戻ってきたことが嬉しいのかもしれないし、朝の日差しのなかでじっとしていることが恋しいのかもしれない。おそらく両方だろう。

Man posing for camera.

グレッグ・ユナと氷結したパテック。この時計に何か特別な意味があるのですか?"そう、私のだってこと!"

Watch on a wrist.

マックはこのセイコーを仲間から20ドルで買った。仲間はどこから手に入れたかわからない。"彼が新たな時計を買ってから2年間、その人には会っていないんだ。でも、彼のことはいつも考えているんだ"

Watch on a wrist.

 ここでは、オフィスに向かう人、オフィスから帰る人を演じる、セントラルキャスティング出身の人々を紹介する。その日、彼らにとって時間の流れは早すぎたのか、それとも、遅すぎたのか?

Back of a woman's head with hand up.

ダニが両親から大学卒業のお祝いにもらったカルティエ。「最初は、高価なものだから身につけようとは思わなかったんです。お金持ちで派手だと思われるのが嫌で......見た目で判断をされたくなかったんです。大人になるにつれて、自分が大切にしている美しいものだと思うようになり、今はこの時計の存在を共有してもいいと思っています"

Woman walking down the street.

 街の中心部に戻ってくるのは、いい気分だし、不思議な感じもする。自分の時間が、以前ほど自分のものであるように感じない。でも、毎日のように100人以上の人と一緒に電車を降り、うつろな目で歩く人たちと歩調を合わせることを思い出すと、私はそれと引き換えに、私は自分の時間を手に入れたのだ。この物語に登場する誰もが、何らかの形で前に進み、二度と戻れない時間を過ごしていたことだけは確かだ。

Woman fixing her shoe.

Interview captions collected by Sinna Nasseri. 

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HODINKEE Shopでは、今回ご紹介した時計をはじめ、さまざまな時計を扱っています。また、これから仕事に向かう方に、こんな便利なコレクションもご用意しております。