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Hands-On ピクセルが鮮烈な印象を与えるシャネル J12 サイバネティック

私はこれを見たとき、ピクセル(デジタル)が時計(アナログ)を侵略してきたかと思った。

J12 パラドックスが発表されてから3年の月日が経った。ということは、私がその時計にひと目惚れしてからそれくらい経過したということでもある。パラドックスという単語は、間違っているように感じながらも実は正しいという意味であり、同モデルもその名のとおりひと目見ただけだとこれは本当に合ってるの? と自分に問いかけてしまうほど、非常にユニークな見た目をしている。

 そしてJ12 パラドックスを知っている人であれば、2023年の新作として発表されたJ12 サイバネティックがそのDNAを色濃く受け継いでいることはすぐにわかるはず。定番モデルのJ12 パラドックスと異なり数量限定品ではあるが、今回は運よく実機を借りれる機会を得たためレビューをお届けしていきたい。

 まずはJ12 サイバネティックについて簡単に紹介を。この時計はケース直径が38mm、厚みが約12.6mm、防水性能は50mと、スペックだけを見るとなんてことない時計だ。ただやはり注目すべきはその見た目にある。ブラックラッカーをベースに、マットホワイトのピクセルが“侵略”してきているかのような見た目を持つ文字盤に、階段状にカットされたピクセルケース、そしてピクセル形状のデザインが配されたブラックとホワイトカラーのサファイアクリスタルベゼルを備えている。これぞまさに真のアシンメトリーウォッチだと主張するかのように、時計の右半分と左半分でまったく異なる見た目になっている。

Hands-On: シャネル J12 パラドックス 実機レビュー

以前、HODINKEEジャパンでJ12 パラドックスのHands-On記事を掲載している。あわせてチェックしてみて。

 ケースの製造方法はJ12 パラドックスと同じ。形状が異なるブラックとホワイトの2つの高耐性セラミックケースを薄いブレードでカッティングし組み合わせて、裏蓋側から4つのネジで固定するという斬新な製法だ。とても簡単に書いてしまったが、セラミックは非常に硬い素材だし、これをいざ実現するとなると大変高度な加工技術が必要になる。

 またシャネルはJ12 サイバネティックが属する“シャネル インターステラー カプセル コレクション”について、SF(サイエンスフィクション)の世界、宇宙、タイムトラベルからインスピレーションを得たとしている。そしてデジタルの世界において代表的なモチーフであるピクセルを、J12のデザインにうまく落とし込んでいるのが本作だ。針で時刻を示すアナログ時計を、デジタルの象徴のようなピクセルが切り込んで侵略しているような感覚に陥った。そんなシャネルの作品・感性はとても素晴らしいものだと思う。

 冒頭で触れたひと目惚れの話を少ししよう。私は黒い服が好きだ。でも財布などの小物は、黒が持つ静けさとは真逆の少し奇をてらったものや、派手な色・デザインにしたいというスタイルを大事にしている。そんな私がJ12 パラドックスを見たとき、白をベースに黒を少し塗り分けたその見た目が、自分の姿と重なったのだ。私は3年前にひと目見ただけで、J12をとても気に入った。もちろん、その系譜を受け継いだJ12 サイバネティックのデザインも大好きだ(階段状のピクセルケースがさらにギャップ満載だしね)。

 自分がいかにツートンのJ12が好きかという話はこれくらいにして、J12 サイバネティックについてのレビューをしていこう。


さまざまな角度から見てわかる粋なクリエイション

まずはデザインについて。これはケースの右側だけがホワイトというスタイルで、そのホワイトのほうは滑らかなケースシェイプではなく階段状にカット。この形状にするのは多分(いや絶対)簡単なことではないだろうし、その階段状のエッジ部分を触ってみた感触も、セラミック特有のツルツルとした触り心地のままで指先に痛みは感じなかった。よく磨かれていることがわかる。

 また正面から見るとわからないが、ただ階段状にカットしているのではなく、ピクセルのひとつひとつがブレス側に向かって絞られ、台形になっているのだ。触り心地のよさの秘密はここにあると感じる。こちらのシェイプに関しては、シャネル公式サイトの3Dシステムで見るとさらにわかりやすいため、ぜひいちど見て欲しい。

 文字盤の1時~5時までのアラビア数字インデックスがない(それとJ12 パラドックスの4時半位置には日付があったが、これらはピクセルによって侵略されてしまったのだろうか?)。だから初めて写真を見たとき、この時間帯はわかりにくいのかなと思ったが、いざ実機を見てみると、なるほど、すり鉢状の細いインナーリングにホワイトのミニッツマーカーが施されていたため視認性に問題はなかった。

 またマットホワイトのピクセルがアプライドしたインデックスのように少し盛り上がっているのも特徴。少しおもしろくて大胆だなと感じたのは、若干窪みが設けられた文字盤の内側にあるミニッツトラックの上にピクセルが乗っかっていて、隙間ができているのだ。横から見てみるとこのおもしろさに気付くはず。こんなデザイン、いままで見たことあるだろうか?

 J12 パラドックスのサファイアクリスタルベゼルは、ブラックを施したあとにホワイトを重ねて製造していたが、J12 サイバネティックも製造方法は同様なのだろう。ただし、単にツートンに塗るのではなく、丸みを帯びたベゼルに対してきちんとキレイな正方形のピクセルをプリントしている点に注目だ。

 ちなみにバックルについて、J12 パラドックスの記事でも取り上げているため簡単に触れておくと、シャネルが特許を取得しているシンプルなフォールディングバックルは、女性にとって大変うれしいディテールだ。なぜかというと、このバックルには硬めのバネが搭載されていて、ブレスのコマを少し摘むだけで爪を傷めずに簡単に時計の着脱ができるからだ。

 キャリバーはほかの38mmのJ12と同じく、Cal. 12.1を搭載。製造しているムーブメントメーカーはみなさまご存じのとおり、ロレックスの兄弟会社であるチューダーが設立したムーブメント製造会社、ケニッシ社が手掛けており(なおシャネルは同社の株式を保有している)、半円形のローターの真ん中が丸い形にくり抜かれているのが特徴だ。ローターがムーブメントの美観を邪魔しない仕様により、全体の動きをより広く鑑賞できる。

 パワーリザーブは約70時間、COSC認定済みと十分なスペックを確保。個人的にはJ12 パラドックスと比べて日付表示がなくなっているのが気になるが、まあほかにも日付がないJ12があるためそこまで気にしないことにした。仕事柄1日に1回は日付を確認しているため、私はデイトの付いた時計は大歓迎なのだ。

 私の手首は女性の平均よりだいぶ細く、大抵の時計はラグが腕の幅より出てしまうし、メンズモデルをつけるなんてもってのほかだ。時計のエディターとしてどうなの、という感じだがしょうがない。だからこそ私が快適につけられる時計の選択肢はだいぶ狭い。

 だけどやっぱり、時計はデザインで選びたい。大きかろうが重かろうが、デザインが好きならその時計をつけたい。J12 サイバネティックはそんな気持ちにさせてくれる。実際につけてみると、ほぼセラミックでできているぶんやや重みを感じるし、私の腕だと1日中つけていられなかったが、見た目がかわいいからいいのだ。時計を途中で変えて、また明日つけて楽しめばいい。

 ただもしシャネルの人たちに届くのなら書いておこう。もう数ミリダウンサイズした、ワントーンでもクォーツでもないJ12を出して! もしそんなモデルが出たら、私は絶対に手に入れると誓う。

 時計に詳しくない人(そしてそうではない人も)が、ケースの片側だけカクカクしているこのモデルを見たら二度見してしまうはず。そしてまじまじとそれを見つめていたら、もうその人は私のようにJ12 サイバネティックの虜になっているだろう。

 次にシャネルはどんなデザインのJ12を仕掛けてくるのか。ピクセルで来たから次はトライアングルとか? 予想するだけでも楽しい。今回は限定生産品だったが、やはりそうではなく、次回はJ12 パラドックスのようにレギュラーで展開して欲しいところ。それもダウンサイズしてね。

シャネル J12 サイバネティック。Ref.H7988。高耐性セラミックケース、50m防水、直径38mm、シースルーバック。ブラックラッカー、マットホワイトのピクセルモチーフダイヤル、アプライドのアラビア数字インデックス、スーパールミノバ。ムーブメントはCal. 12.1、パワーリザーブ約70時間。高耐性ブラックセラミックブレスレット、SS製3重折りたたみ式バックル。201万3000円(税込)、数量限定、発売中。