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Hands-On ミン 新作20.01 シリーズ3 クロノグラフはブランドの得意とする魅力を凝縮した最高の逸品

素晴らしいムーブメントや技術革新、そしてたっぷりの夜光が好きなら、きっとこの新モデルに感動するだろう。


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Photos by Mark Kauzlarich

数年前からずっとミンを狙ってきた。何度か購入を検討したことはあるのだが、私が書いたミンの記事を追っている方々なら、私がまだミンを手に入れていないことをご存じだろう。その理由のひとつは、ほかのすべてのミンのなかで特に心を奪われるモデルがひとつあり、それがあまりにも手の届かない存在だからだ。その時計はミンの“スペシャル・プロジェクト・ケイブ(Special Project Cave)”の一環で登場した、アジェノー社がミンのために製造した素晴らしいアジェングラフムーブメントを搭載する20.01 センタークロノグラフである。ダイヤルデザインの革新、ケース素材の工夫、そして彼らの要望に応じてつくり上げられた見事なムーブメントなど、ミンが持つ美学と技術の頂点だと感じている。特に“シリーズ2”は、鮮やかな色彩の組み合わせと当時としては新しいダイヤル技術が見事に調和していた。

Ming 20.01 Series 2

 ミンは20.01 シリーズ3の最新バージョンを発表した。この時計はシリーズ2を踏襲し、センタークロノグラフを搭載している。またシリーズ2やオリジナルの20.01と同様、斬新なダイヤル技術を特徴としている。これらすべての点において、まさに“ミン”を象徴する1本だと言えよう。7年間でミンは独自のデザイン言語と革新的な精神を確立したが、このモデルもその例外ではない。外見はとても魅力的だが、価格も相応に高額である。新しい20.01 シリーズ3の価格は4万3500スイスフラン(日本円で約740万円)で、30%のデポジットを支払い、残りは納品時に支払う形となる。本モデルの納品は今年の10月に予定されており、製造本数は20本のみ。しかしその20人の購入者は大いに満足することだろう。

Ming 20.01 Series 3

 変更点について話す前に、まずなぜ私が20.01に心引かれたのか理由を振り返りたい。それは手巻きのアジェノー社製Cal.AGH-6361.FA、通称“アジェングラフ”に端を発する。2017年に発表されたアジェングラフは、ここ数十年で市場に登場したなかでも特に注目すべき、贅沢で伝統的ではない外観を持つクロノグラフのひとつとして高く評価されている。クイル アンド パッド(Quill & Pad)の素晴らしい記事で同キャリバーについて詳しく紹介しており、それを読んで以来、私はこのムーブメントの虜になった。記事を読むだけでも十分に楽しめる。簡単に言えばアジェングラフとは、追加のセンター針がミニッツカウンターとして機能するクロノグラフのことだ。こうしたデザインは珍しく、私のお気に入りのひとつ。たとえばヴィンテージのロンジン ドッピア・ランチェッタ 13ZNはその好例だ。一見するとスプリットセコンドクロノグラフのように見えるが、実際にはさらに巧妙な仕組みである。

Ming 20.01 series 2

 ミンは20.01 シリーズ2(友人のジェームズ・コンは、ミンやその他の時計の熱心なコレクター兼、才能のある写真家だ)のムーブメントに独自の美的要素を加えた。アンスラサイトDLC仕上げのブリッジにダイヤモンドカットのエッジを施して表面仕上げの耐久性を向上させるとともに、第2世代の時計全体にデザインの一貫性を持たせたのだ。新しい20.01 シリーズ3では、ローズゴールドのケースに合わせて5N(ローズゴールド)コーティングのブリッジに変更したが、ムーブメントの機能自体に変更はない。

Ming 20.01 Series 3 and Series 2 Movements

 この時計は、多くの点でミンがハイエンドなコンプリケーションウォッチメイキングに対して取った伝統的なアプローチを示している。ゴールドプレートには粒状のテクスチャーが施されており、この美的感覚はF.P.ジュルヌのT30 アニバーサリー・トゥールビヨンや、最近のパルミジャーニ・フルリエ トリックで見られるようなデザインを想起させる。ムーブメントの核心部分は同様であるため、もし20.01 シリーズ2が併売されていたとしたら、選択は純粋に美的な好みによるものとなるだろう。だがこの素材を用いることで、ミンはより魅力的な仕上げを際立たせることができたように感じる。

Ming 20.01 Series 3 AgenGraphe
Ming 20.01 Series 3 AgenGraphe
Ming 20.01 Series 3 AgenGraphe

 価格はさておき、純粋に美的な観点で見るなら、ミンの20.01 シリーズ3はその90%以上がダイヤルにかかっていると言ってよい。ミンは業界初と自負するダイヤル技術を駆使し、ブランドの代名詞となっている大量の夜光をこれまで以上に使用している。

Ming 20.01 Series 3 AgenGraphe
Ming 20.01 Series 2 AgenGraphe

 上記は旧20.01 シリーズ2だ。同モデルはダイヤルベースにグレード2のチタンプレートを使用し、クル・ド・パリ装飾を施している。このプレートはセッティングトレイン(時刻設定用のパーツ)のブリッジ部品としても機能していた。またサファイアダイヤルにはクル・ド・パリ装飾が外側から徐々に薄れていくグラデーションプリントがあしらわれており、その部分に目盛りがプリントされている。さらにその上には、3つの異なる高さで彫刻された透明度の異なる3300個の三角モザイクが、厚さ1.1mmの光学グレードのサファイアダイヤルに施されている。これらの技術の組み合わせはとても美しいものだが、シリーズ3を見たときに感じたのは、シリーズ2が最も優れていたのはそのスケールの視認性だったという点だ。

Ming 20.01 Series 3 AgenGraphe

 シリーズ3のダイヤルには新しいパターンが採用されている。それは放射状に広がる白い模様であり、見た目はギヨシェに似ている。実際には、ミンはフェムトプリント社(FEMTOprint SA)とのコラボレーションで、600個の小さな凹みを備えた独自のホウケイ酸ガラスダイヤルを採用しており、これらの凹みは高度なフェムト秒レーザー技術(1秒の1000兆分の1というきわめて短い時間で精密加工を行う技術)を用いて作られている。近くで見るとこの凹みの立体的な形状が確認でき、そこに注射器を使って手作業でスーパールミノバ X1の液体を充填しているのだ。

Ming 20.01 Series 3 AgenGraphe
Ming 20.01 Series 3 AgenGraphe dial
Ming 20.01 Series 3 AgenGraphe

 これはとても効果的な印象だが、少し目がくらむかもしれない。トップクリスタルの縁にはパルスメータースケールがあり、ホウケイ酸ガラスダイヤルのパターンに重なっている。スケールは特定の角度でのみ見えるが、斜めから見るとその視覚効果はやや弱まり、光の当たり方によって異なる表情を見せる。

Ming 20.01 Series 3 AgenGraphe
Ming 20.01 Series 3 AgenGraphe
Ming 20.01 Series 3 AgenGraphe

 ミンが得意とするのは、まず第1に夜光ウォッチの製作だが、もうひとつ必ず期待できる特徴が“ダイヤルの反転効果”である。詳しい光の仕組みについては省略するが、適切な角度でより直接的な光に当たると、ダイヤル越しにムーブメントが見えるようになるのだ。よく見ると、ムーブメントプレートの裏側にはペルラージュ仕上げが施されているのが分かる。ミンが時計の表から裏まで細部にわたって気を配っているのが感じられる。

Ming 20.01 Series 3 AgenGraphe

 そう、やはり夜光だ。ミンのスタッフが計算してくれたところによると、ダイヤル上の空洞やスペースを生かして、この時計には先日レビューした“スターライト”モデルの18〜20倍もの夜光が使用されているとのことだ。これはきわめて大きな違いである。近所のカフェに行ってほんの5分ほど日光を浴びるだけで、室内でも長い時間しっかりと光を放つのだ。

Ming 20.01 Series 3 AgenGraphe

 細部にこだわる人のために付け加えると、ストラップはジャン・ルソー製でラグ幅は22mmから18mmにテーパーしている。私は“スターライト”をブレスレットでつけていたため、しばらくミンのストラップは試していなかったが、このブランドは遊環を省いたデザインを採用しており、正直なところこれまで使ったどのストラップよりも快適で邪魔に感じない。

Ming 20.01 Series 3 AgenGraphe
Ming 20.01 Series 3 AgenGraphe
Ming 20.01 Series 3 AgenGraphe

 最後に触れておきたいのは、この時計の針だ。私はこれまで針のデザインだけで時計を買うかどうか決めたことはないと思う。もちろん、そういうことが起こらないとは言わないが、まだ経験していない。ミンの針は全体のデザインの一部として機能しているが、市場にあるほかの時計の針のシェイプと比べてお気に入りというわけではない。特にこのモデルでは、18Kの5N(RG)とスーパールミノバがダイヤルにあるほかのゴールドや夜光と溶け込んでしまい、ぱっと見で針を区別するのが少し難しいと感じた。一方で青焼きされたクロノグラフ秒針は同じ問題を抱えていないものの、やはり検討に値するポイントであった。

Ming 20.01 Series 3 AgenGraphe

 快適さと装着感に関しては、この時計の大きなポイントのひとつだ。ミンには独特のケースデザインがあるが、正直なところ私も多くの人と同様、そのビジュアルに慣れるまで少し時間がかかった。だが実際につけてみるととても心地よく、このモデルの場合、ミドルケースがグレード5チタンでできていることがさらにその快適さを強調しているようだ。時計の重量が大幅に軽減され、装着感も良好である。チタン製のシリーズ2よりは重く、ゴールドよりは軽いため、感覚としてはスティールに近い。シェイプされた中空ラグも重量バランスの調整にひと役買っている。

Ming 20.01 Series 3 AgenGraphe
Ming 20.01 Series 3 AgenGraphe

 これはミンにとって2回目となる貴金属ケースのモデルだ。直径41.5mm、厚さ14.2mmで、34個のパーツと4種類の仕上げから構成されており、そのすべてがきわめて計算されたデザインとなっている。長期間にわたり時計をレビューしていると、このサイズが大きすぎるか厚すぎるかの感覚が曖昧になることもあるが、結局のところそれは個人の好みによるものだ。

Ming 20.01 Series 3 AgenGraphe
Ming 20.01 Series 3 AgenGraphe
Ming 20.01 Series 3 AgenGraphe

 もしひとつ大きな批評を挙げるとしたら、パルススケールが読みにくいことだろう。このスケールを風防に配置するという決定は、新しいホウケイ酸ガラスダイヤルのパターンやそれらの相互作用とは別に考えられたように思える。とはいえ公平を期すため、暗所や影のある環境で強い光がない状態で手を傾けて見ると、スケールは比較的簡単に見える。具体的には手を傾けて45°の角度から見ると、ダイヤルとドーム型サファイアのあいだの非常にクールな奥行きが強調されるが、それ以外の角度ではスケールを読むのはほぼ不可能なのだ。

Ming 20.01 Series 3 AgenGraphe

 ここで少し仮説を立ててみる。写真と実物では常に見た目に差がある。写真で立体感を表現することはできるが、結局それが2次元で表示される以上、完璧に再現することは難しい。ある意味でこの時計は写真よりも実物の方が魅力的に見える。とはいえ写真でも十分に素晴らしい仕上がりだと思う。しかしいくつかのデザイン上の決定は、実際の装着感よりも2次元の画像での視覚的インパクトを意識して行われたのではないかという疑念がある。たとえば、ミンがダイヤルをフラットなままに外側の3つのリングに夜光を使わなかったとしたら、もっと視認性の高い時計になっただろう。ムーブメントがより見えやすくなり、その結果スケールとの視覚的な衝突が起こるかもしれないが、現在の複雑なダイヤルパターンほどではないだろう。また(ある同僚が提案したように)スモークダイヤル風防を採用すれば、その問題も多少軽減されたかもしれない。

Ming 20.01 Series 3 AgenGraphe

 このひとつの不満が時計全体を台無しにしていると言えるか? そんなことはない。もしこの価格帯で時計を探していて、すでにミンのファンであれば(私のように)20.01 シリーズ3に飛びつくだろう。うまくいったものもそうでないものも、この時計でミンが行ったさまざまな試みは、まさにブランドの実験的な姿勢そのものであり、それこそが彼らを市場で最も優れた若いブランドのひとつにしている要素だと思うのだ。

 この時計と1週間以上過ごして驚いたのは、何度も手に取り、つけたくなる自分に気づいたことだ。ほとんど習慣のようになり、磁石に引き寄せられるように繰り返し時計をパッケージから取り出してはしばらく装着し、また保管のために戻すときに少し罪悪感を感じるというサイクルだった。その後、しばらくして(ときには1時間や半日後)また同じサイクルが始まる。この1年かそれ以上で、同じような感覚を持った時計は片手で数えられるほどしかない。それが自分の所有する時計であれ借りた時計であれ、これほど強く引き寄せられるものは滅多にないのだ。正直なところ、これ以上の賛辞は思いつかない。

Ming 20.01

ミン 20.01 シリーズ3。直径41.5mm、厚さ14.2mm、5N(ローズゴールド)とグレード5チタンケース、50m防水。ホウケイ酸ガラスダイヤルに施された600個の放射状の凹みに夜光塗料を充填。風防はサファイアガラス製のドーム型で、時・分、パルススケールをプリント。夜光を塗布した5N(ローズゴールド)の時・分針、青焼きされたクロノグラフ秒針、センターカウンター針を採用。ミンのためにアジェノー社が製造した“アジェングラフ”ムーブメント、5Nコーティングのプレート、約55時間パワーリザーブ。ジャン・ルソー製のアンスラサイトカラーのゴートレザーストラップ、アルカンターラの裏地付き。価格は4万3500スイスフラン(日本円で約740万円)で、30%のデポジット、残額は納品時に支払い。