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Interview シチズンの矢島義久執行役員とシチズン・ウォッチ・アメリカのジェフリー・コーエン社長がブランド誕生100周年について語る

シチズンブランドの誕生100周年を記念し、100本のアーカイブウォッチが展示された「The Essence of Time」の巡回展でシチズンの成功と未来について話を聞いた。

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シチズンは“CITIZEN”の名前を冠した初の懐中時計の製造から100周年を祝うべく、「The Essence of Time」という実に見応えのある展示会を先月に開催していた。シチズンのアーカイブにある6000点以上の時計のなかから選ばれ、12の異なるカテゴリーに分けられた100本の時計を通じてその歴史を振り返るものである。展示会は日本での開催を皮切りに、その後ニューヨークで小規模なプライベートビューイングが行われ、次はヨーロッパへと移動する予定となっている。

Citizen Watch

シチズン初の自社製懐中時計。

Citizen Watch

シチズンブランド誕生100周年を祝う特別限定版の懐中時計。

 イベントに参加した際、私はシチズンの歴史のなかでも特に象徴的なモデルであるエコ・ドライブの“エコジラ”や“フグ”ダイバー、アクアランドなどの写真をいくつか撮るつもりでいたが、私の個人的なシチズン コレクションが非常に狭い範囲のものであることに気づかされた。この展示会は私にとって衝撃的で、魅力的なデザインと信じられないほど優れた技術からなるウォッチメイキングの世界に私は目を開かれる思いがした。この展示会はこれまで訪れたなかでも特に興味深いものであったが、一般公開されなかったのが残念でならない。この点については、インタビューのなかでのちほど詳しく述べるつもりだ。

Citizen Diamond Flake

シチズンの1962年製ダイヤモンドフレイク。

Citizen World Time

1976年のシチズン製ワールドタイマーモデル。

 シチズンがウォッチメイキングにおいて確かな実績を有していることは知っていた。現在では多くの企業がシチズンやその系列ブランドであるミヨタとコラボレーションを行い、これまでにない時計を生み出している。しかし私は、シチズンの過去のカタログを深く掘り下げたことはなかった。展示会では各時計について多くのオリジナルスケッチも展示されていた。このストーリーは展示会で行ったインタビューを中心に展開しているが、そのなかで見た時計もいくつか紹介したいと思う。

Citizen Chronometer

1962年製シチズン クロノメーター。

Soundwich

1984年の“サウンドウイッチ”のスケッチ画。

1984年の“サウンドウイッチ”。

 この巡回展のなかで、シチズンの成功において重要な役割を果たしてきたふたりに短時間ながら話をうかがう機会を得た。世界的に、そして特に米国市場におけるシチズンの成功に大きく貢献している人物たちである。通訳の助けを借りながら、時計事業本部 事業企画センター長兼執行役員の矢島義久氏にはシチズンの歩みと多岐にわたる分野での成功、そしてグローバルな視野を持つ日本企業であることの意味について話を聞いた。また、シチズン・ウオッチ・アメリカの社長を長年にわたり務めてきたジェフリー・コーエン(Jeffrey Cohen)氏とも対談を行った。これらのインタビューはあまり長大にならないよう、わかりやすさを考慮して編集されている。

マーク・カウズラリッチ(以下、マーク): 過去100年間にわたってシチズンは計時技術のスペシャリストとして名を馳せてきました。その歴史の一端をこの会場で垣間見ることができます。しかしほかの多くの日本企業がさまざまな分野に進出しているように、シチズンもその技術を腕時計に限定せず広げています。たとえばシチズンファインデバイスはムーブメント部品から自動車部品までさまざまなものを手がけており、シチズン・システムズでは健康機器や小型プリンタなどの製品を製造しています。私たちが通常シチズンと聞いて見たり考えたりすることのない分野でどのような事業を展開しているのでしょう。また、時計に限らずこれらの製品にも事業として取り組む意図を教えてください。

Yajima

矢島義久氏。Photo: courtesy of Citizen

矢島義久氏(シチズン時計株式会社 執行役員 兼 時計事業本部 事業企画センター長、以下矢島氏): 私たちは時計メーカーとしてスタートしましたが、実際にはそのほかにもさまざまな事業を展開しています。時計製造が今でもシチズンのコアビジネスとしてある一方で、これまでに培ってきた技術をほかの事業にも転用できるようになりました。私たちは、小型化、精密製造、エンジニアリング、そして省電力化などの技術やスキルを生かした開発を行っています。シチズンは一見矛盾する技術を逆手にとることが得意な企業です。異なるテクノロジーや職人技、デザインの組み合わせのなかには相性がいいと言えないものもあります。しかし私たちは、さまざまなプロジェクトや企業との連携をとおしてバランスをとりながら実現する方法をみいだしてきました。それでもなお、ルーツである時計とウォッチメイキングのことは常に念頭に置いています。

マーク: 時計とは何か、どのようにあるべきかという狭い定義にとらわれず、柔軟な考えを持つことが重要なのですね。展示されている時計にはアナログとデジタルの組み合わせるにとどまらず、点字表示を備えた触覚時計のようにさらに1歩踏み込んだ発想を示すモデルも見られます。

Citizen watch

1952年発表のトリプルカレンダーモデル、シチズン カレンダー。

矢島氏: 私たちの理念は、人々の生活を助ける時計を作り続けることです。もちろんデジタルウォッチをカッコいいと感じる人もいますし、デジタルとアナログの組み合わせを求める人もいます。あるいは、純粋に機械式時計だけを求める人もいるでしょう。私たちは人々がどのように自己表現をしたいのか、そしてその思いをどのように支えていくかについてずっと考え続けています。

マーク: カジュアルウォッチ愛好家の多くは、シチズンが日本の企業であることを知ると驚くかもしれません。シチズンという名前を選んだことは当時としては非常に先進的な考え方であり、このことはブランドを世界の人々にとっても身近に感じられるものにしました。当時は英語風の名前のほうがグローバルブランドとして受け入れられやすかったのでしょう。しかし現在、日本の職人技や伝統に対する関心が高まるなかで、シチズンとしても今後は伝統やヘリテージといった切り口からウォッチメイキングや時計を強調していく流れになるのでしょうか。

Citizen Attesa

チタニウム製の初代アテッサ。

矢島氏: 私たちは日本のDNAがクラフトマンシップ、品質の高さ、細部へのこだわり、精度、技術、そしてデザインといった要素に表れていると考えています。これらの要素に価値があることを示す製品をシチズンは発表し続け、価値を証明することができれば、それをもとにさらなる進歩を遂げることができると信じています。私たちの製品はその伝統が過程に表れていれば、“日本的”であることをあからさまに強調する必要はないのです。

マーク: まず第1に、この展示会を歩きながらさまざまな時計を見て回るのは非常に興味深い体験でした。これまで知らなかった多くの時計からインスピレーションを得ることができ、個人的に探してみたいと思うものもありました。この展示を時計愛好家のコミュニティに開放することをぜひ検討してみてください。多くの人々がこれらのアーカイブを直接見ることができないのは、残念なことだと思います。

Jeffery Cohen

Photo: courtesy of Citizen

ジェフリー・コーエン氏(シチズン・ウオッチ・アメリカ社長、以下コーエン氏): すでに何度も検討がなされており、実際に動き出しています。ニューヨークに新しくオープンするシチズンのフラッグシップストアの3階全体がシチズンのミュージアムになる予定で、一部はほかの自社ブランドにも割り当てられます。主な目的はこの展示を広く一般に公開し、シチズンが過去100年間にわたってどのような革新を続けてきたかをさまざまなカテゴリーやマテリアルを通じて見てもらうことです。私たちは、このスペースで多様な時計コレクターやコミュニティを招待するイベントを順次開催する予定でいます。

マーク: あなたがシチズンに在籍しているあいだに起こった、特に米国市場において最も大きな変化は何ですか?

コーエン氏: 素材から技術の進歩、ムーブメント技術に至るまで、メーカーとしてのイノベーションはまったく新しいレベルに達していると思います。たとえばエコ・ドライブですが、かつては最長6カ月のパワーリザーブを持つ時計だったのが、Cal.E365の開発によって1度のフル充電で最低1年間動力を維持できるようになりました。デュラテクト加工を施したスーパーチタニウムは、異なる種類のDLC仕上げを採用することで新たなステージに引き上げられています。さらに最近では機械式時計の分野でも非常に大きな関心が寄せられており、シチズンの機械式時計再興に対する研究が進んでいます。

Citizen
Citizen

マーク: シチズンはクォーツウォッチと機械式時計の両方を併存させながらクォーツショックを乗り越えた数少ないブランドのひとつです。この事実はシチズンのウォッチメイキングにおけるイノベーションや、最終的に顧客に提供される価値にどのような影響を与えているのでしょうか。また、これらの異なるテクノロジーをどのようにバランスよく両立させているのでしょう。

Citizen interview

Photo: Charlie Bennet for Hodinkee

コーエン氏: 私たちはたとえるなら、ふたつの異なる言語でコミュニケーションをとる方法を学んだのです。エコ・ドライブはクォーツの分野において私たちが生み出した“ベイビー”と呼べるものですが、機械式時計とはまったく異なる存在です。それらを調和させるためには、顧客を理解することが重要です。最近ではエコ・ドライブを持続可能性に焦点を当てたラインとして若い世代に訴求していますが、同時にウォッチメイキングのメカニズムを理解し、評価したいと考える若い人たちのために機械式時計のラインも提供しています。つまり、異なる消費者に向けた2種類の異なるアプローチを持ちながら、さまざまな価格帯をカバーすることを可能としているのです。たとえクォーツと機械式というふたつの異なるテクノロジーを持ち、それぞれが独立して見えていたとしても、常にそのあいだを取り持ち調整する人々がシチズンにはいます。製品開発からマーケティングに至るまで会社全体が一体となるように橋渡しをしつつ、それぞれの部門が自由に新しいことに挑戦し、成長できるようにしているのです。しかし常にウォッチメイキングの伝統とルーツに立ち返ることは忘れません。

Citizen F

1931年のシチズン Cal.F。

マーク: ルーツといえば矢島氏ともお話ししましたが、ウォッチメイキングの分野における日本の伝統とカルチャーへの関心が再び高まっているなかで、シチズンの製品にそれらはどのように反映されているのでしょうか? 今後、その伝統、ヘリテージをより直接的に感じられるような製品が登場することを期待してもいいのでしょうか。

コーエン氏: 確かに現在、日本の伝統に対してはこれまで以上に幅広い層から高い関心が寄せられています。そのためふさわしいと判断したタイミングではその要素を取り入れることもありますが、このことはスイスブランド対日本ブランドという議論にはあまり関与しません。我々はスイスの企業も所有していますが、国に焦点を当てたマーケティングよりも包括性を重視しています。現在、シチズンにおいて日本の伝統は、驚くべき技術やエンジニアリング、そして素材やムーブメントの開発に反映されています。正直に言って、本当に目を見張るものばかりです。