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現行のオイスター パーペチュアル(OP)は、ロレックスの本質を凝縮したような存在である。複雑な機構も、華美な装飾も(フルーテッドベゼルすら)一切ない。備えるのは時・分・秒針と、ポリッシュ仕上げのスムースベゼル、そしてバーインデックスが並ぶシンプルなダイヤルだけだ。2020年、ロレックスはこのOPコレクションにカラフルなダイヤルバリエーションを加えた。その色合いは非常に鮮やかで、燃えるようなコーラルレッド、ビビッドなヨルキーイエロー、ロレックスの定番であるグリーン、地中海を思わせるターコイズ(いわゆるティファニーブルー)、そしてソフトなキャンディピンクなどがそろう。比較的シンプルな変更でありながら、OPは堅実なエントリースポーツモデルから数年待ちの入手困難なアイテムへと姿を変えたのである。
これらのモデルは、1970年代のステラダイヤルを備えたデイデイトに見られたレアカラーへのオマージュとして、比較的手ごろな価格(正規価格においては)で登場した。発売直後から瞬く間に人気となり、なかでもティファニーブルーの価格はセカンダリーマーケットで高騰を続けた。2022年5月には、ターコイズブルーのダイヤルを備えたオイスター パーペチュアル 41mm(Ref. 124300/2021年製)の“新品同様”モデルが、ジュネーブで開催されたクリスティーズのレア・ウォッチ・オークションにて6万9300スイスフラン(当時の相場で約950万円)で落札され、定価に対して1177%ものプレミアムがついた。
今年、ロレックスはパントーンカラーチャートの可能性をさらに押し広げるかのように、新たに3色のパステルカラーを発表した。約5年前に登場した超高彩度の新色とは対照的に、今回のアプローチははるかにやわらかく穏やかだ。色は甘ったるくなく控えめであり、まるでイースターの装いを思わせるスモーキーパレットである。ラインナップ全体としては、キャドバリーのミニエッグにかかる薄いキャンディコーティングを連想させる。なかでも最も日常づかいしやすいのが、クリーミーでサンドベージュのような色味。そして、90年代のブルマリン(Blumarine)のミニドレスを思わせるラベンダー。さらに“ピスタチオ”と公式に名づけられたグリーンは淡い翡翠色で、オーストリアの銘菓モーツァルトクーゲルの中身を思い起こさせる(これは強くおすすめしたい)。
最近のモダンなスポーツウォッチが感情を揺さぶるような存在になり得るかは定かでないけれど、新しいダイヤルたちはむしろ“落ち着き”を感じさせてくれるデザインだと思う。くすんだパステルカラーは心を落ち着かせる色合いだし、ラベンダーとピスタチオは穏やかさを湛えていて、ベージュはまさにクリーミーなバニラのようで、暖かみを持つニュートラルな色調が心をなごませてくれる。これらの新色は、2020年に登場した高光沢ラッカー仕上げのOPに比べるとはるかに地味な印象。また2023年のセレブレーションダイヤルのような華やかさとは真逆で、意図的に抑制されたトーンとも言える。それは成熟した進化の形なのかもしれないし、洗練されたファッションの空気感を映しているのかもしれない。あるいは、そこまで深い意味はなく、ロレックスのデザイナーたちがただ単にパステルカラーを気に入っているだけかもしれない。
現行のオイスター パーペチュアルはすべてが時刻表示のみのモデルで、素材はオイスタースチール、ケースサイズは28mmから41mmまである。実際、ロレックスで5種類のケース径が用意されているのはこのシリーズだけ。あまりにも多様なOPのバリエーションが存在するため、どの色がどのサイズで展開されているのかを把握するのは困難なほどだ。現行モデルには数百とおりものバリエーションが存在しており、なかでも惜しまれつつ生産終了となった39mmのホワイトダイヤルには今なお多くのファンの心に特別な居場所がある(ここで一杯、彼女に捧げよう)。以下は、現行カタログにおけるすべてのダイヤルとサイズの組み合わせを示したものだ。
新たに追加されたラッカー仕上げのダイヤルカラーは、ミディアムブルーとブラックの2色である。これに伴い、従来のサンレイ仕上げのブルーおよびブラックはカタログから外された。一方でシルバーのサンレイダイヤルは引き続き現行ラインナップに残っている。キャンディピンク、グリーン、ターコイズブルーはこれまでどおりラッカー仕上げで、ピスタチオ、ラベンダー、ベージュの3色は、新たにマットラッカー仕上げとなった。インデックスの仕様についておさらいしておくと、36mmおよび41mmのモデルにはダブルバトンスタイルを用いており、3・6・9時位置にふたつのマーカーが隣り合うインデックスが配されている。また文字盤外周の目盛り部分には、各インデックスに沿ってペイントされたスクエアが配置されている。
34mmモデルには、そのサイズ特有の仕様として目盛りの外周にローマ数字が配されており、3・6・9時位置にはダブルではなくシングルバトンインデックスが採用されている。28mmおよび31mmモデルは5分ごとに太字の目盛り(ハッシュマーク)が入り、インデックスはすべてシングルバトンとなっている。なおすべてのダイヤルにはクロマライト夜光が施されている。
新ダイヤルのバリエーション以外にも、構造面でいくつかの微細な変更が加えられている。2007年以降、OPラインはポリッシュ仕上げのドーム型ベゼルと、ミドルケースおよびブレスレット上面に全面サテン仕上げを採用してきた。だが2025年の現在、同ラインにはいくつかの変更が施されたのだ。とりわけオイスター パーペチュアル 41では、クラスプがよりスリムになってケースもそれに伴ってわずかに再設計されている。
オイスター パーペチュアル 28、31、34にはCal.2232(パワーリザーブ約55時間)が搭載されており、オイスター パーペチュアル 36およびオイスター パーペチュアル 41にはCal.3230(パワーリザーブ約70時間)が採用されている。いずれのムーブメントも時・分・秒のみの表示。すべてのバリエーションは100m(330フィート)防水を保証するオイスターケースに収められており、これはロレックス 高精度クロノメーター認定プロセスによって確認されている。
今季はランドドゥエラーの登場が強烈すぎて、他の新作はちょっと影が薄くなりがち。でも、そんな中でこのパステルダイヤルはちょっとした“変化球”。革命的ってほどではないけれど、SNSをスクロールしてる手を思わず止めさせるくらいの存在感はある。マットなパステルカラーは、派手で盛る傾向の強いトレンドにおける新たな処方箋のような存在で、マキシマリズムに疲れた手首に向けた、ちょっとしたリセットカラー。前世代のポップな文字盤よりも落ち着いていて、静かに心地よく進化した存在だ。
ほとんどの時計ブランドにとって、新作のデザインプロセスとは創造的な直感、必要性、そしてマーチャンダイジングのせめぎ合いである。“エントリーレベルで、ジェンダーニュートラル、かつ個性のあるモデルが必要だ”。そうして登場したのが、“ステラ”ダイヤルに着想を得たOPだ。ロレックスには敬意を表したい。2020年に鮮やかなトーンのダイヤルを次々と投入して以来、時計業界は色の洪水に飲み込まれるようにさえ見える。あらゆるブランドが、そして今なお独自のバリエーションを模索し続けている。果たしてOPラインは、現代ウォッチデザインにおけるパントーンカラーチャートとしての地位を維持できるだろうか。
詳しくはロレックス公式サイトをご覧ください。