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本稿は2014年1月に執筆された本国版の翻訳です。
ステンレススティール製のパテック フィリップ Ref.1463。
パテック フィリップのRef.1463 クロノグラフはいつ見ても魅力的な時計だが、これは特に興奮を覚える1例である。ケースがSS製であるだけでなくダイヤルもツートンで、さらにインデックスにはブレゲ数字があしらわれている。これ以上のものはなかなか見つからないだろう。今回は時計談義に花を咲かせるためにこの素晴らしいSS製1463を詳しく紹介する。
SS製1463を手首に着用。
1463はパテック フィリップ初の防水クロノグラフであり、一般的なスナップバックケースではなくスクリューバックケースを採用している。同リファレンスは1940年に登場し、1965年ごろまでラインナップに残っていたが、その25年間で製造されたのはわずか750本程度であった。そのほとんどは以前紹介したイエローゴールド製の1463だが、SS製モデルも存在している。数少ないSS製の1463はリファレンスの存続期間中に散発的にしか生産されず、予想どおりの展開だが、そのためダイヤルやケースにおいても比較的幅広いバリエーションが存在する。
ブレゲ数字とツートンダイヤル。
ジョン・ゴールドバーガー(John Goldberger)氏の著書『パテック フィリップ スティールウォッチ』には、17本のSS製1463がカタログに記載されており、最も古いものは1941年、最新のものは1951年のものである(ただし、製造は1960年ごろまで続いていた)。これらの17本のなかにはシルバーダイヤル、ブラックダイヤル、ツートンダイヤル、そしていくつかのマイナーバリエーションが見られ、リーフ針、ドフィーヌ針、さらには夜光針までもが含まれている。我々がここで紹介する時計は、ゴールドバーガー氏の本には掲載されておらず、1945年製の時計(286-287ページ)と1949年製の時計(290-291ページ)に見られる特徴を組み合わせたものである。
サンバースト装飾のプッシャーとシャープなケースエッジ。
このSS製ケースは良好な状態で、下向きのラグにはシャープなエッジが残っており、クロノグラフプッシャーの先端にあるサンバーストの装飾がとても鮮明に残っている。ケースサイズは35mmだが、薄くフラットなベゼルのため実際にはやや大きく感じられる。この時計の魅力のひとつは、SSケースながら非常につけやすく快適である点だ。
ブレゲ数字とツートンダイヤル。
SS製のケースだけでも十分に興味を引くが、この時計を際立たせているのはやはりダイヤルだ。12時と6時位置にローマ数字やアラビア数字が配され、そのあいだにバトンインデックスが入る一般的なレイアウトではなく、このモデルのダイヤルにはすべてブレゲ数字が植字されている。さらにタキメータースケールを備えた外側のリングはやや濃いシルバー色で、これにより“ツートンダイヤル”となっている。
SS製パテック フィリップ Ref.1463。
ヴィンテージのパテック フィリップについて話すとき、この時計は熱心なコレクターたちの心を高鳴らせるだろう。類似モデルが2013年11月のクリスティーズ・ジュネーブで約50万ドル(当時の相場で約4950万円)で落札されており、2011年にはさらに高額で取引された個体もある。ブレゲ数字を備えたスティール製1463は(書籍やオークション、オンラインで)公に登場したものはおよそ20本程度だが、おそらくまだ発見されていないものもいくつか存在し、近いうち公に出てくるだろう。我々が紹介するこのモデルは、これまでオークションに出たことがない個体だ。
この時計はアメリカ国内のプライベートコレクションに属しているため、販売先を紹介することはできない。しかし、以下の写真ギャラリーを楽しんでほしい。スティール製1463を所有するのとは違い、これを見るだけなら50万ドルの出費は必要ない。