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ハイエンドウォッチに華美なアイテムを合わせこむのはかえって難易度が高い。飾らないチープシックなスタイリングに挑むのもいいが、それはそれでアンバランスになりすぎないようにセンスが試される。究極にエフォートレス、かつこのうえなく贅沢なザ・ロウのルックなら、ハイセンスな大人っぽさを演出しながら自分らしく時計を楽しむコーディネートが実現できる。
僕自身、ザ・ロウは大好きで焦がれるメゾンだが時計に迫るようなプライスタグは、トータルルックで味わうことを許してくれないかもしれない。ただ、1点でも2点でも手に入れて着こなしの軸にできれば、腕時計の魅力を静かに格上げしてくれるだろう。
さてそもそもザ・ロウとは、2006年の誕生以来、瞬く間にハイエンドラグジュアリーの世界に到達。当初は究極のTシャツを作ろうと創業したメゾンだが、洋服に留まらず革小物にもその領域は広げてきた。2018年にはメンズコレクションもローンチ、シックかつ質を極め、ミニマルながら他に似ていない絶妙なシェイプを実現する。
ブラウン×ブラックをカラーコードに、リッチなコートでグロッシーな黒文字盤を際立てる
コート71万3900円、ニット38万3900円、Tシャツ7万5900円、パンツ16万3900円、シューズ31万3500円/以上ザ・ロウ(ザ・ロウ・ジャパン ☎︎03-4400-2656)
白を差し色にブラウンでまとめたコーディネートの主役は、大ぶりのロングコート。ファインブラッシュドウール100%をハンドメイドで仕立てたこのコートは、絶妙なライトブラウンと軽く荒らしたような質感によって、大きな面積にもかかわらず軽やかなイメージに。ノッチドラペルかつラグランスリーブというディテールは、快適さとともにリラックスした雰囲気を与えてくれる。
近しい質感のブラッシュドコットン製のスリムフィットジーンズはクラシックな5ポケットスタイルであり使い勝手抜群。外側にやや丸みがあるフォルムで、単にスリムなシルエットでないところも今らしいリラックス感が香る。それは中に着たニットも同様だ。ただし、こうしたくつろいだテイストのコーディネートながらハイエンドウォッチの存在感とマッチするのは、最上級の素材をあえてこうした風合いに仕立てているから。ニットはエクストラファインカシミアとシルク製で、見た目と反した心地良さを叶えてくれる。
時計はIWC ポルトギーゼ・パーペチュアル・カレンダー 44
IWC ポルトギーゼ・パーペチュアル・カレンダー 44 Ref.IW503702 693万円(税込)
18KRGケース、44.4mm径、14.9mm厚。自動巻きCal.52616搭載。約168時間パワーリザーブ。5気圧防水。
ブラウン×ブラックは最近になって重宝されだしたカラーコードだ。どちらもベーシックな色味ながら、このザ・ロウのルックのように微妙な色の明るさと素材感で表情を与えられれば、凡庸さが一気に垢抜ける。2024年、IWCのポルトギーゼ・パーペチュアル・カレンダーに追加されたオブシディアンブラックの艶やかな文字盤は、一見アンマッチに見えるこうしたザラッとした質感のコーディネートを、補完するようにまとまって見せるから驚きがあるだろう。
洋服のコーディネートでは質感の異なるもの、例えばツルツルしたシルクのような素材とザラッとしたコットンなどをあえて合わせることで抑揚をもって着こなしをまとめることがある。それは、ハイエンドウォッチのストイックなまでの質感を和らげるテクニックとしても使えそうだ。
カシミア製のリラックスセットアップには精悍さを加える
グレーのジャケット108万9000円、パンツ46万900円、Tシャツ7万5900円、シューズ31万3500円/以上ザ・ロウ(ザ・ロウ・ジャパン ☎︎03-4400-2656)
カシミア製のセットアップは、寒い時期に許された贅沢な装いで、毎日袖を通したくなるほどに心地良い。ザ・ロウのそれはスーツ的なセットアップとは対極にあり、リラックスムードをより高めるシェイプながら、そのディテールには独自の抑揚があり休日着にならない品を与えている。
中厚手の起毛カシミアを用いた、ボックスシルエットのジャケットとアンクル丈のテーラードパンツ。ジャケットは高めに設定された襟とゴージラインで、アウターとしての主張をキープしつつ、幅を太くとった腕で無二の雰囲気に。特徴的なジャケットに合わせるのは、現在の主流ではないながら新鮮さを感じさせるテーパードかつ、ドロップクロッチ型のパンツだ。メンズではまだワイドシルエットが主流だけれど、ボリュームのあるジャケットと絶妙なバランスを生んでいる。
時計はCODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ
ディテールにこだわりを凝縮していながら、瞬間的な印象はミニマルそのものであるこんなセットアップには、コントラストを与えたい。白カットソーやシルバー色の時計などをコーディネートしてみると、洋服の上質さとリラックス感を損なわずに軽快感をプラスできるだろう。
SS製のCODE 11.59 バイ オーデマ ピゲは、近年文字盤の新たなパターンを揃えた。意図的にクラシカルにならないカラーも与えられ、スモークベージュのグラデーションで表現された本機のようなモデルならモダンさが強いため、若い世代のあなたのような人物にとってより良いコーディネートの選択になるだろう。
こうしたトーン オン トーンの着こなしには、あまりコントラスをつけずに時計を選ぶ方がコーディネートが簡単だ。従来からある黒や白文字盤でももちろん合わせられないわけではないが、文字盤の製造技術が向上したことで近年増えているニュアンスカラーは、さらに全身の完成度を上げてくれるはずだ。
オーデマ ピゲ CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ Ref.15210QT.OO.A064KB.01 412万5000円(税込)
ミドルケースはブラックセラミック、ベゼル、ラグおよびケースバックはSS、41mm径、10.7mm厚。自動巻きCal.4302搭載。約70時間パワーリザーブ。30m防水。
独特なディテールのダブルブレストは一見シンプルな小物でバランスを取る
ジャケット52万6900円、パンツ19万6900円、シャツ25万1900円、シューズ31万3500円/以上ザ・ロウ(ザ・ロウ・ジャパン ☎︎03-4400-2656)
シダーブラウンを配したダブルブレストのセットアップは、100%ウール製でサラりと纏うことができる逸品。ボタンはひと組かつ、位置が高く設定したことでとても狭いVゾーンが特徴だ。ノッチドラペルの雰囲気も手伝ってアーティなテイストが満載であり、自分の個性を強く打ち出したいときに纏いたいルックだ。
セットアップのワイドパンツは、ワンクッション程度、丈に余裕をもたせるのが今の気分。艶のあるこのウールはパンツにストンと落ちるようなシルエットと質感を与えてくれるので、裾で遊びをもたせるスタイルと相性の良さも感じられるだろう。個性の強いジャケットであれば、バランスを取るためには特にパンツの太さやレングスには気を配りたいところだ。
時計はパルミジャーニ・フルリエ トリック プティ・セコンド
パルミジャーニ・フルリエ トリック プティ・セコンド Ref.pfc940-2010004-300181 820万6000円(税込)
プラチナケース、40.6mm径、8.8mm厚。手巻きCal.PF780搭載。約60時間パワーリザーブ。30m防水。
しかしながら、今回紹介したコーディネートのなかでも最もクセのあるものがこのセットアップのスタイルだろう。ともすれば、オシャレ過ぎて“気難しそうな人”のようにも見えかねないため、一見シンプルな小物でバランスを取ることで印象も調整できるだろう。
例えば、パルミジャーニ・フルリエが昨年発表してGPHG2024 メンズ部門にノミネートされた、トリック プティ・セコンドのような時計はどうだろうか。かつてのトリック コレクションの意匠をベゼルに宿しつつ、あくまでミニマルに仕立てられた1本だ。年間の生産数が限られる同社のようなメゾンにおいても、特にディテールに配慮されて作られたモデルだが、最大の見どころでもあるムーブメントは装いとしては見せることは叶わない。ただ、そんな最上のものを身に着けているという事実は、満足感と確かな自信を与えてくれるはずだ。難しそうなコーディネートであっても、そうして背筋を伸ばすことが自在に着こなすための第一歩。コーディネートのためのメンタル的な相棒としても、腕時計は機能してくれるだろう。
その他、詳細はザ・ロウ公式サイトへ。
Photos:Takao Sakai(aosora) Styled:Akihiro Shikata Model:Kou