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本記事は2017年1月に執筆された本国版の翻訳です。
私たちが忘れてしまいがちな素晴らしい時計でも、ある日突然、新たな驚きをもって再評価されることは多い。これは先月、数人のフランス人時計コレクターと夕食を楽しんだ際にショパールの初代L.U.Cと出会った私の身に実際に起こったことでもある。1996年に発表されたこのキャリバーは、その1年後に初めて販売され、すぐに称賛を浴びた。そのムーブメントは、Timezone.comのウォルト・オデット氏に“今日、スイスで製造されている最も優れた自動巻きムーブメントである”と評され、スイスの時計雑誌“モントレ・パッション/ユーレンウェルト”ではウォッチ・オブ・ザ・イヤー賞を受賞した。それから約20年後、私はこのドレスウォッチと束の間の時間を過ごす機会があったが、再びこの時計に魅了されたのだった。
このL.U.C.(頭文字はショパールの創業者であるルイ-ユリス・ショパールに敬意を表し名付けられた)の発売を覚えていると言えば嘘になる。1997年、私はスウォッチ・パスを身に着けていたが、チップがスキーパスの役割を果たしているこの時計は、私にとって世界で最もクールな時計だった。同年公開された『フィフス・エレメント』のマルチパスよりも優れてたと感じたほどだ。それでも、もっと洗練された時計を好む大人たちは、初代ショパールをとても気に入っていたようだ。著名なコレクターであるSteveG氏による詳細なフォトレビューと、前述のオデット氏によるキャリバー1.96の熱を帯びたレビューの両方を読めば、ただのきれいなドレスウォッチではないことがわかる。“技術面でも審美面でも、キャリバー1.96は大成功を収めた‐それも思いがけないブランドからである。このキャリバーは、現在スイスで製造されている自動巻きキャリバーの中で最も優れたものの1つであることは間違いないが(もちろん最高であるとまでは言わない)、このムーブメントがスイスの時計メーカーの中でショパールを高い地位まで引き立てるかは大いに疑問だ。”とオデッツ氏は述べている。
22Kゴールド製マイクロローターとスワンネック緩急針を搭載したCal.1.96の優美な外観。
初代ショパールL.U.C.は、ショパールを真のマニュファクチュールとして確立することを目的とした大事業だった。Cal.1.96の開発には、1993年から1996年までの3年間が費やされ、1995年までは著名な時計師であり修復家でもあるミシェル・パルミジャーニが関わっていた。自動巻きキャリバーと表現しても、その精巧な設計は伝わらない。22Kゴールド製マイクロローターは、パテック フィリップのCal.240と比肩する。この技術仕様により、厚さ3mmを僅かに超える程度に抑えることが可能となり、ケースを薄く見せるための重要な要素となっている。ブレゲ式巻き上げヒゲゼンマイとスワンネック緩急針は、精度の追求を示すものであり、手仕事による面取り加工はフィリップ・デュフォーを満足させる水準である。
腎臓の形をしたヒゲゼンマイの留め金が美しいテンプ受け。
主ゼンマイが収められた二重香箱を支える受け。
フィリップ・デュフォーの名を挙げたのは、このショパールのダイヤルが、彼の作品シンプリシティに似ているのが偶然ではないからだ。どちらのダイヤルもメタレム社製で、金無垢に繊細なギョーシェ彫りが施され、もちろん手仕上げで、アプライドインデックスが採用されている。ショパールのサイズもデュフォーの哲学に忠実で、ケース径は37mm弱、シンプリシティの大きな方のサイズと一致する。フィリップ・デュフォーは、38mm以上になると自分の時計の美学が発揮できなくなると繰り返し公言している。
私が手に取ったRef.16/1860/2は、ローズゴールド製でありながら、ほとんどイエローゴールドに見えるほどの淡い色合いだ。いずれも生産本数は1860本であり、プラチナのケースはそれよりも少ない数しか存在しない。初代のRef.16/1680/1は、ヒンジ付きの裏蓋の欠陥により、わずか100本の短命に終わった。
手首に巻くと、ヴィンテージの腕時計を身に着けている人であれば、ショパールは魅力的に感じられるだろう。直径、厚さ、重さ、どれをとっても完璧だ。このマイクロロータームーブメントは間違いなく傑作として言ってよく、二重香箱の恩恵を受け、70時間のパワーリザーブを実現している。また、COSC認定とジュネーブシールの両方を取得しているのも特筆すべき点だ。
シンプリシティやパテックと比較されることは非常に高いレベルの作品であることの証左であり、ショパールのチームが最初にモダンなドレスウォッチのバージョンを作ったことがいかに正しかったかを示している。サブダイヤル内のデイト窓の位置を批判する人もいるかもしれないが、私はこの時計を身に着けた限りでは、思ったほど気にならなかった。とはいえ、それは真っ当な批判であり、理論的には反対ではない。しかし、デイト表示がないと、寸法、ダイヤル、そしてドーフィン針の特徴からして、この時計がシンプリシティに酷似してしまったことだろう。デイト表示はもちろん悪い問題とは思わなかったが、私がこのショパールを非常に気に入っていることを割り引いて聞いてほしい。さらに、ホワイトゴールド製デプロワイヤントバックルも気に入っており、腕に着けていても邪魔に感じられないほどコンパクトだった。
この素晴らしいショパールとの邂逅から、私は多くのことを学んだ。最大の収穫は、モダンウォッチとヴィンテージウォッチの間の境界線など存在しないと知ったことだ。1990年代は今、影の薄いグレーゾーンのようなもので、いくつかのお宝が眠っている状態だ。また、私がヴィンテージウォッチで愛している特徴の多くは、どの時代の時計にも存在するということもわかった。例えば、このショパールは、1930年代初頭にRef.96がパテック フィリップに与えたのと同様、ショパールのマニュファクチュールの運命を永遠に変えた印象的なファーストウォッチであることだ。
そのため、先月のディナーでは、このような興味深い作品に出会えたことに満足し、そのオーナーが数週間ほど貸出を許可してくれたことに喜びを感じて帰途に就いた。それだけに返す時には別れが惜しかったのだが。
現在のL.U.C.コレクションは、Chopard.jpへ。