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サンクスギビング(感謝祭)の2日前。ニューヨーク。
この2枚のタイトルカードがスクリーンに映し出されると、ジョン・ヒューズ監督ならではというべき1980年代のドタバタ活劇が始まる。今日のWatching Moviesは、『大災難P.T.A.(原題:Planes, Trains and Automobiles)』(1987年)を取り上げる。この映画は、これまで製作されたなかで最も典型的な感謝祭映画かもしれないが、同時に最も良くできた(本当に)時計映画かもしれない。映画のなかの腕時計に直接言及し、さらにすばらしいクローズアップも見せてくれるのだ。
正直なところ、この作品を最後に見たのは何年も前のことだ。しかしこの作品は時計に関する興味と80年代の古典的なユーモアを織り成しているという以外にも、きっと季節的にピッタリな鑑賞作品となるだろう。実際、主演のスティーブ・マーティン(Steve Martin)とジョン・キャンディ(ジョン・キャンディ)は、すべての映画のなかでこの作品がいちばん好きだと言っている。無理もない。映画の主役である彼らは、同様に主役となる時計も身につけている。電池式のデジタルカシオと、“強欲は美徳”と言われた時代を象徴するような豪華なゴールドのドレスウォッチだ。
ニール・ペイジ(スティーブ・マーティン)のピアジェ ポロが『大災難P.T.A』で少額紙幣の上に。スクリーンショット;Paramount Pictures
注目する理由
上の文章でピンとこない人には何を話せばいいのだろう。ちょっと逆算してみよう。今日(11月26日)はブラックフライデーだ。一年で最も大きな買い物をする日で、人々はホリデーギフトの超お得な買い物をするために近くや遠くのデパートの前に行列する(私は家にいるけど)。ということは、昨日(11月25日)はサンクスギビング(感謝祭)、つまり『大災難P.T.A.』の舞台となる祝日なのだ。わかった? それが理由だ。
この映画はスティーブ・マーティン演じるマーケティング担当重役のニール・ペイジがホリデーシーズンに家族の元に帰るため、ニューヨーク発シカゴ行きのフライトに乗ろうとするところから始まるが、吹雪とさまざまなハプニングで計画は台無しになる。この途中、キャンディ演じる旅回りのセールスマン、デル・グリフィスと出会い、彼と一緒に家までの長い旅をする羽目に。そしてその道程で地方空港をまわりながら、薄暗いホテル、炎上するクルマなど、さまざまなアクシデントを乗り越えていく。
『大災難P.T.A』でピアジェを物々交換しようとするペイジ(マーティン)。スクリーンショット;Paramount Pictures
ヒューズ監督は、この映画の脚本を3日間で書き上げたと言われているが、登場人物の描き方がすばらしい。映画のなかで2人の主人公を物語るキャラクター描写があるが、それはスクリーン上の腕時計によってもっとも雄弁に語られている。マーティン演じるペイジが身につけているのはピアジェのポロで、Ref.8273と思われる。これはWatching Moviesで初めて取り上げたピアジェで普段映画ではあまり見かけない時計だ。この時計は映画の舞台となった時代を表すのにパーフェクトなのだ。
マーティンの18Kゴールド製ピアジェ ポロは、ダイヤルからケースにまで伸びるアール・デコ調のストライプが特徴的なダイヤルデザインと、非常に80年代っぽいラグがストラップに組み込まれ、ケース下のエンド部分にもゴールドが使用されている。興味深いことにこの時計はクォーツで、それがこの薄さの理由になっているのだろう。この時計は実際、映画の冒頭ですばらしいクローズアップで登場し、またペイジがロードサイドのモーテルでベッドを確保するために(少しの現金を加えて)この時計を使用したように、物々交換の道具にもなった。
『大災難P.T.A』でスティーブ・マーティンが着用した時計と同型のピアジェ ポロ。
一方、キャンディ演じるグリフィスは、ゴールドのピアジェとは似ても似つかない時計を身につけている(中に入っているクォーツバッテリーは別として)。シャワーカーテンリングのセールスマンが身につけているのはカシオのA159Wで、シルバーのケースとブレスレットを持つ、典型的なカシオのデジタルウォッチとも言うべき時計だ。ピアジェと同様に(まあ2本の時計は少し似ているとも言えるが)、ケースサイズは35mmと小さく、キャンディの体格や存在感と比べてかなり滑稽だ。しかし、この時計は侮れない。
ピアジェとは異なり、A159Wは今日でも生産されている。その強くシンプルなデザインと人気の高さの証明でもある。A159Wはエントリーモデルの代表格であり、本作でキャンディ演じるグリフィスがしているようにブレスレットを装着すると価格に見合わない上品な印象を与える。グリフィスは映画のほぼ全編にわたってカシオを身につけており、ネタバレはしたくないが、非常に特別なシーンで最も愉快な出番がある。それについては「見るべきシーン」まで待ってほしい。
ジョン・キャンディが『大災難P.T.A』で着用したカシオのA159Wを、そのまま現代風にアレンジしたもの。
ジョン・ヒューズの話に戻るが、これらの時計がそれぞれのキャラクターにどれほどマッチしているか説明しきれないほどだ。マーティン演じるペイジは仕事中毒のマーケティング担当重役で、同僚に自分の仕事ぶりを示すために絶対にゴールドの時計が必要なのだ。80年代は、今よりもう少し誇示しなければならない時代だった。また当時は小型の時計が流行していたため、この18Kのピアジェ ポロはまさにぴったりで、彼がセリフを言う前にそのキャラクターについてすべて教えてくれるようだ。
『大災難P.T.A』で時間を確認するペイジ(マーティン)とグリフィス(キャンディ)。ペイジのピアジェのレザーストラップが見える。スクリーンショット; Paramount Pictures
そして、キャンディ演じるグリフィスだ。彼は特大の(そしてステッカーだらけの)トランクを持ってモーテルに泊まり、国中を歩き回っている。彼は謙虚なセールスマンで明るい性格だ。贅沢はできないが、仕事のための時計を大切にしていることが伝わってくる。このクラシックなカシオはそんな彼にぴったりだ。
見るべきシーン
オープニングタイトルカードが画面から消えた直後、フィルムはニューヨークの高層ビルショットから切り替わる。そして次に見えてくるのは? イエローゴールドのピアジェ ポロ 8273のクローズアップだ。 [00:00:43]このシーンで驚くべきことは、これが映画の残りの部分のお膳立てであるという点だ。ペイジは腕時計で時間を確認し、シカゴ行きの航空券を見る。時間がないとわかる(当時まだスマートフォンはないのだ)。観客である我々は彼のクライアントがマーケティングキャンペーンの資料に無言で目を通し、ペイジがひたすら待っているのを見ている。彼の焦りはすぐに感じとれる。我々はこのときゴールドのピアジェのことを考えずにはいられない。映画のオープニングに時計のクロースアップ。これほどすばらしい効果はない。
スクリーンショット; Paramount Pictures
記憶に残る腕時計のシーン。ペイジとグリフィスはモーテルの部屋代を払おうとするが、その手段がないことに気づく。クルマの爆発事故で彼らのクレジットカードが焼けてしまったのだ。まずペイジはフロントマネージャーに「ここに17ドルと、すごくいい時計があるんだ」と訴える。彼はゴールドのピアジェを悲しい現金の上に置く。続いてグリフィスの番。 [01:09:26]彼はフロントデスクに近づき、「ここに2ドルと、カシオがある」と言う。そう言いながら、キャンディならではのコミカルな方法でカシオを店長の目の前に見せる。彼の手からジャラジャラとしたブレスレットがぶら下がり時計がはっきりと見える。非常にすばらしいシーンの締めくくりだ。
スクリーンショット;: Paramount Pictures
『大災難P.T.A.』(出演:スティーブ・マーティン、ジョン・キャンディ)は、ジョン・ヒューズが脚本・監督、マイク・ブレイズが小道具を担当。iTunesやAmazonでレンタルできる。
Lead illustration, Andy Gottschalk