trophy slideshow-left slideshow-right chevron-right chevron-light chevron-light play play-outline external-arrow pointer hodinkee-shop hodinkee-shop share-arrow share show-more-arrow watch101-hotspot instagram nav dropdown-arrow full-article-view read-more-arrow close close email facebook h image-centric-view newletter-icon pinterest search-light search thumbnail-view twitter view-image checkmark triangle-down chevron-right-circle chevron-right-circle-white lock shop live events conversation watch plus plus-circle camera comments download x heart comment default-watch-avatar overflow check-circle right-white right-black comment-bubble instagram speech-bubble shopping-bag

Business News スイス時計CEOらが業界売上を脅かす米国の関税に対応すべく次の一手を模索

スイス時計各社のCEOたちが、スイス製腕時計に対する米国の壊滅的な関税導入の可能性というニュースに反応した。

水曜日の夜、トランプ政権がスイス製品、特に米国に輸入される腕時計に対して大幅な関税を課す計画を進めているという詳細が明らかになると、独立系ブランドのアーミン・シュトローム創業者である(Serge Michel)氏はすぐに動きだした。ジュネーブで開催されているWatches & Wondersの会場で小売パートナーたちと直接会談したり、電話でほかの関係者に連絡を取ったりした。ミシェル氏は、スイス製品に対して最大31%もの関税が課されるという脅威に対し、即座に対応策を練ったのである。

 「彼らはこう言っているんだ。『今すぐ出荷できるものがあれば、何でも出荷してくれ』と」。ミシェル氏はインタビューのなかで語った。

 スイス・ビールに本拠を置くアーミン・シュトロームにとって、米国は売上のおよそ40%を占める重要な市場である。短期的には、完成した時計を予定より早く米国に輸出する方法を模索しており、もし関税が実施された場合にブランドや小売業者に価格の引き上げを強いる事態を避けたい考えだ。

 非常にタイミングが悪いとミシェル氏は語り、多くのブランドがすでに、原材料費の上昇やスイスフラン高を受けて大幅な値上げを実施していたことに言及した。

 スイスのヴォントベル・グループ(Vontobel Group)が本日発表したレポートによると、米国はスイス時計にとって最大の単一市場であり、主な成長原動力でもある。2019年以降のスイス時計輸出の成長のうち、ほぼ50%が米国によるものだという。すでにインフレによって多くの消費者が負担を強いられているなかで、スイス国内で2万〜12万スイスフラン(日本円で約340万~2050万円)の価格帯で販売するアーミン・シュトロームにとって、大幅な値上げは選択肢にならないとミシェル氏は語る。関税が導入された場合、ブランドと小売業者の双方が販売時の利益率を引き下げざるを得ないと見込んでいる。

 「値上げは選択肢にならない。何とか利益率の面で対応し、パートナー間で痛みを分かち合う必要がある」と彼は話す。

 トランプ政権がこの関税措置を実際に実行に移すかどうかは、まだ不透明である。これまでにもホワイトハウスは、国境警備などの問題に関する譲歩を引き出したのちカナダやメキシコに対する関税の脅しを撤回したことがある。

 スイス連邦参事会は木曜日に発表した声明のなかで、今回の措置およびその影響を分析すると述べた。また、影響を受ける業界や米国当局と連絡を取り合いながら、解決策を模索しているとも付け加えた。

 この度、米国政府が発表した広範な関税措置は、各国との貿易赤字を根拠にしているとされている。スイス連邦参事会によれば、スイス製品に課される31%または32%の関税は、同様の経済構造を持つ他の米国の貿易相手国と比べても“特に高い”とされている。たとえば、欧州連合(20%)、日本(24%)、英国(10%)が挙げられる。

 “米国政府の計算は連邦参事会には理解できない”と、同参事会は述べている。

palexpo

 この関税の脅威は、スイス時計業界が大きな課題に直面している最中に浮上した。2024年に3年連続で最高記録を更新していたスイス時計の総輸出額は、前年比で約3%減少した。一方で、堅調な米国の消費は同業界にとって数少ない明るい材料であり、2024年の対米輸出は5%増加し、金額にして約44億スイスフラン(日本円で約7520億円)に達した。これに対し、中国向け輸出は25%もの大幅な減少となった。

 一部のCEOたちは、この衝撃的な31%のスイス関税は交渉に向けた最初の威嚇に過ぎず、最終的にはもっと穏当な結果に落ち着くとの期待から、楽観的な姿勢を保っている。

 「関税がプラスになることはもちろんない」と、ブライトリングCEOのジョージ・カーン(Georges Kern)氏は語る。そして「ただし、ドイツ語に『料理されたものは、必ずしも熱いまま食べられるわけではない(es wird nicht so heiß gegessen, wie gekocht)』という表現がある。つまり、物事は見た目ほど悪くならないということだ。いずれにせよ、ブライトリングは準備ができており、対処するつもりだ」とも述べた。

 ウブロ、タグ・ホイヤー、ゼニスを擁するLVMHウォッチ部門の新CEOであるジャン-クリストフ・ババン(Jean-Christophe Babin)氏は、米国が関税率をどのように算出しているのかを明らかにすることが、行動を起こす前の第一歩になると述べている。

 「それが何であるのか理解しない限り、コメントも行動も不可能だ」と、ババン氏はWatches & Wondersの会場で簡潔に語った。「我々は大きなグループであり、世界のラグジュアリー業界をリードする存在だ。だからこそ多くの税務の専門家がつながっており、関税率の算出方法の中身を明らかにしようとしている。それによってスイス政府もより正確に状況を把握できるようになるだろう」と、ババン氏は続けた。

 そしてトランプ氏が各国との貿易に関して関税の脅しを始めて以来、「最初の一手は非常に強硬で、その後に話し合いが行われる。そのためこれからどうなるかを見ていくことになる」とも付け加えた。

 それでも、スイスおよび欧州連合からの高級品に対して二桁台の関税が課される可能性は、木曜日の株式市場に大きな重圧を与えた。LVMHの株価は5%下落し、ヴァシュロン・コンスタンタンやIWCなどのブランドを傘下に持つリシュモンは6%の下落、さらにティソやロンジンを擁するスウォッチグループの株価も6%以上下落した。

 米国市場における売上および輸出でスイスブランドのトップに君臨するロレックスは、関税の脅威についての問い合わせに対し、コメントを控えた。

ADVERTISEMENT

 独立系の家族経営ブランド、ノルケインのCEOであるベン・カッファー(Ben Kuffer)氏は、この関税に関する深夜のニュースが、それまで好調だった1日の終わりに暗い影を落としたと語った。この日、ブランドはアイスホッケー界のスーパースターであるシドニー・クロスビー(Sidney Crosby)氏が、同社に出資したことを発表していた。カッファー氏は、スイス時計業界連盟などの団体がスイスブランドを代表して交渉の先頭に立ち、「スイス時計は米国では製造できない」という主張を展開してくれることを望んでいるという。米国はノルケインの売上の約3分の1を占める重要市場だ。

 カッファー氏は、「事業を継続するためには、いくつかのコスト削減が必要になるだろう」と話す。

 「米国は今後も、スイス時計業界にとって最重要市場であり、今回の件は大きな影響をもたらす可能性がある」とも語った。