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米国はスイス時計業界にとって最大の輸出市場であることもあり、ドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領による大規模な関税の脅しに動揺を隠せなかった。水曜日に行われた演説で、トランプ氏は中国、インド、欧州連合諸国を含む100以上の国や貿易相手国に対して広範な関税措置を講じると発表。そのなかで、スイスから米国に輸入される製品には31%の関税を課すとのグラフを示した。
トランプ氏はまた、すべての貿易相手国に対して一律10%の関税を適用しつつ、スイスを含む一部の国々には“報復的”な2桁台の関税を課す方針も明らかにした。これを受け、中国製品には34%、欧州製品には20%、日本には24%、英国には10%の関税が課される見通しだという。この発表を受けて、米国株先物は急落した。
スイス製時計の最大輸出先は2021年に中国を抜いて米国となっており、今回示された31%の関税は、パンデミック後の世界的な需要低迷を背景に米国市場に依存してきた業界にとって衝撃的な打撃となる可能性がある。ロレックス、パテック フィリップ、ヴァシュロン・コンスタンタンといった最高級ブランドから、スウォッチ グループ傘下のロンジンやティソといった量販価格帯のブランドに至るまで、かつての勢いを失った中国市場に代わって米国の需要に活路を見出してきた。
2024年には、スイスから米国への時計輸出額が前年比で5%増加した一方で、中国向けの出荷は25%減少しており、年間の総輸出額は約260億スイスフラン(日本円で約4兆4700億円)で前年比2.8%減となった。
スイスのカリン・ケラー=ズッター(Karin Keller-Sutter)大統領は、米国の関税方針について「承知しており、速やかに今後の対応を検討する」と述べた。また、SNS(X)への投稿では「スイスの長期的な経済利益が最優先であり、国際法の順守と自由貿易は我が国の核心的価値である」と強調した。
この唐突な関税発表は、業界関係者がジュネーブに集うWatches & Wondersの開催期間中に行われた。同イベントでは60を超えるトップブランドが新作を発表し、小売業者や国際メディアと面会するなど、業界全体でのプロモーション活動が展開されている。イベントに出席していた多くのスイス企業の幹部らは、機械式時計の製造基盤が米国にはほとんど存在しないことから、業界が関税対象から外れることを期待していた。
「スイス製の時計を米国で作ることはできない」と、手ごろな価格のツールウォッチで知られるスイスブランド、オリスの共同CEOであるロルフ・スチューダー(Rolf Studer)氏は、トランプ氏による関税発表に先立つインタビューで語った。
さらにスチューダー氏は、「付加価値は流通や小売の段階で生まれている。そこに課税されるということは、米国市場における価値創出そのものに影響を与えるということだ」と述べ、「だから私は、この政策には合理性がないと思う。とはいえ、それが実行されないという保証にはならないのだが」と付け加えた。
本件については、続報をお待ちいただきたい。