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Business News タグ・ホイヤーCEO、F1スポンサーシップ効果を前にしてなおも慎重な生産方針を表明

F1との提携でブランド認知が高まるなかでも、生産拡大には慎重姿勢を貫くとアントワーヌ・パン氏は語る。

タグ・ホイヤーの最高経営責任者(CEO)であるアントワーヌ・パン(Antoine Pin)氏は、フォーミュラ1(F1)への公式タイムキーパーとしての復帰に伴い、新作タイムピースの生産においては慎重な姿勢を取る方針であると述べた。2024年9月にCEOに就任した同氏は、親会社であるLVMHが締結した年間推定1億ドル規模・複数ブランドによる10年間のスポンサー契約によってモータースポーツと深い関わりを持ち、スポーティな時計製造で知られるタグ・ホイヤーに新たな顧客が流れ込むだろうと期待を示した。ただし、それが即座に生産拡大に直結するわけではないという。

 「タグ・ホイヤーが欲しいと思ってもらえるようになり、関心が高まり、実際に購入を検討する人が増えるのであればそれでよいのです」とパン氏はインタビューで語った。この発言はスイス製品への包括的な関税措置がホワイトハウスから発表される前のものであり、ブランドの慎重な姿勢をあらためて印象づける内容となっている。

タグ・ホイヤーCEOのアントワーヌ・パン氏。

 「生産数については慎重であるべきです。そのように進めます。本当に需要が生まれてから動くべきで、それまでは先走らないように」とパン氏は語った。

 タグ・ホイヤーがF1に復帰する今回のタイミングは、F1の注目度と人気がかつてないほど高まる一方で時計業界にとっては厳しい局面でもある。経済の不確実性が増すなかで、高額商品の購入を控える消費者も増えているのが現状だ。そうしたなかで、パン氏は新たなスポンサー契約に伴いマーケティング費用が大幅に増える状況においても、財務面では慎重さを保ち、ブランドを守る姿勢を示した。そのため新たに登場するF1関連のタイムピースを求める顧客に対し、短期的には品薄状態が生じる可能性も受け入れる考えである。「当社のような統合型の製造体制を持つメーカーにとって、在庫が売れずに積み上がってしまうリスクは非常に高いのです」とパン氏は語り、過去にスイス時計業界を苦しめた過剰生産の問題に言及した。

tag heuer f1

 業界経験が豊富なパン氏は1990年代にタグ・ホイヤーでキャリアをスタートさせた人物で、昨年、LVMH傘下の時計ブランドでCEOの交代が相次ぐなか、ブルガリの時計部門のトップを務めたのちにタグ・ホイヤーへ復帰した。新モデルの発注から納品までには最大で12ヵ月を要することもあるため、綿密な計画が欠かせないと語る。

 「もし需要が高まり、一時的に品薄になるようなことがあっても我々は柔軟に対応します。むしろ、そうした対応には前向きです」と同氏は話した。

 今回のスポンサー契約によって、タグ・ホイヤーはF1サーキットを囲むサイネージや新たに設置されたピットレーン・クロックを通じて、1986年に登場した人気モデルであるフォーミュラ1を想起させるかたちでブランドの存在感を大きく高めることに成功している。

 2024年の限定コラボレーションを経て、タグ・ホイヤーはフォーミュラ1モデルを再びラインナップに加える。今回の新作はソーラーグラフムーブメントを搭載し、ケース径は38mm。3つのレギュラーモデルと6つの限定モデルが用意される予定だ。

 F1復帰を記念して、ブランドは新たなスローガン“Designed to Win(勝利のために)”も発表した。このフレーズは、かつてマクラーレンチームの一員としてタグ・ホイヤーの時計を着用していたF1界のレジェンド、アイルトン・セナ(Ayrton Senna)の言葉「僕は2位や3位になるために生まれてきたんじゃない。勝つために生まれてきたんだ」に由来している。

 タグ・ホイヤーは、ウブロやゼニスを傘下に持つLVMHウォッチ部門のなかで売上・販売数ともに最大のブランドである。モルガン・スタンレーとリュクス・コンサルトの推計によれば同社は2024年に約38万本を生産し、売上は6億7000万スイスフランに達した。前年の約6億1500万フラン(2024年のレートで約1075億円)から大きく成長したことになるが、パン氏はこの推計については正確性を認めていない。

 生産本数が多い同ブランドにとっての課題は、今回のフォーミュラ1 ソーラーグラフのような30万円未満のエントリー~ミドルレンジのモデルに加えて、超高価格帯の製品も展開している点にある。スプリットセコンド クロノグラフの初の商業生産メーカーというホイヤーの伝統を活かし、同社はモナコ スプリットセコンド クロノグラフ | F1®の限定10本モデルを発表。セラミックケースに収められ、一部が手仕上げされたムーブメントを搭載するこのモデルは、価格が15万5000ユーロ(日本での価格は要問い合わせ)に設定されている。

 「我々の製品のバリューは、単に価格帯に結びついているわけではありません。それこそがラグジュアリーの魅力です。たしかに今の顧客は“価格に見合った価値”を強く求めていますが、それは異なる価格帯の製品を提供することを妨げるものではありません。製品自体にしっかりとした価値があれば、それでよいのです」とパン氏は語った。

ayrton senna

 ここ数年、インフレや原材料コストの高騰を受けて業界全体で価格が引き上げられてきたこともあり、エントリー〜ミドルレンジの価格帯における消費者の価格感度は確実に高まっている。パン氏は今回のようなF1との大規模スポンサー契約と、業界全体で販売・輸出が減少する局面が重なることは、むしろチャンスであると捉えている。「当グループは、厳しい状況下でチャンスを見極め、ものにすることに長けています」と語る。

 「この困難な時期こそ、我々が際立つチャンスなのです。」

詳しくは、タグ・ホイヤーの公式サイトをご覧ください。