※本記事は2015年5月に執筆された本国版の翻訳です。
ご存じのとおり、Talking Watchesを始めて以来21エピソードを公開(※掲載当時)したが、我々は驚くほどバラエティに富んだコレクションを紹介してきた。バラエティというのは今回のキーワードである。確かに、これまでお話を伺ったコレクターの方々は、何らかのテーマから関心が派生していったようだが、今回は、20世紀の偉大なブランドによるユニークなシェイプを持つタイムオンリーの時計という、焦点を絞ったあるコレクターを紹介する。ロニ・マドヴァニ(Roni Madhvani)は30年以上にわたって時計を収集しており、彼の母国ウガンダには収集家のコミュニティはほとんどないが(#redbarkempalaはもうすぐ?)、長年旅を通じて世界中に交友関係を築いてきた。彼のコレクションは特別なのだ。それではロニ・マドヴァニをゲストに迎えたTalking Watchesをお楽しみいただきたい。
ジルベール・アルベールのデザインによるパテック フィリップ Ref.3424
ロニのコレクションは、パテック フィリップ、ヴァシュロン・コンスタンタン、オーデマ ピゲ、カルティエなどのタイムオンリーモデルや、独特なシェイプを持つ時計が中心となっている。独特なシェイプを持つ時計のなかで最も有名なのは、スイスの有名なデザイナー、ジルベール・アルベール(Gilbert Albert)の作品だろう。アルベールデザインのパテックといえば、このRef.3424を思い浮かべる人が多いだろうが、これはコレクションの根幹を成すものだ。
ジルベール・アルベールのデザインによるパテック フィリップ Ref.3412
こちらも伝説のジルベール・アルベールデザインのパテックで、十字線を組み合わせたダイヤルに時計宝飾店ベイヤー(Beyer)のサインが入っている。リファレンスは3412で、間違いなくパテック史上最も興味深いケースのひとつだ。
ヴァシュロン・コンスタンタン ギョーシェダイヤルとクロウラグ
ロニはヴァシュロン・コンスタンタンの作品を常々賞賛してきたが、最近まで彼らのヒストリカルピースに関する情報が少なかったため、敬遠していたそうだ。しかし、このモデルだけは例外で、そのすばらしいダイヤルとケースを見ただけで、何故手に入れることなったかがわかるだろう。
オーデマ ピゲ 1960年代製アシメトリカルケース
この1960年代のオーデマ ピゲは、ロニ・コレクションのなかでも個人的に最も好きなピースだ。とにかく見て欲しい。ケースバックには1964年と刻印されているが、この時計自体についてはあまり知られていない。この時計は、手首に装着すると、魔法のようだ。
パテック フィリップ Ref.2549 “デビルズ・ホーン(悪魔の角)”
これはおもしろい作品だ。パテック Ref.2549は希少だ。実際、ロニがこの時計を追い求めたことは時計愛好家オンラインコミュニティ上の伝説となったほどだ。数年前、彼はこの時計がアンティコルムで売りに出されるのを見たのだが、ウガンダの自宅ではインターネットが不安定だったため、書面による入札を行ったが、結局落札することができなかった。その時の記事はこちらでご覧いただける。しかし、時計愛好家の世界は狭く、時に感動を与えてくれる。落札した人は、それまでその時計がロニにとってどれほどの意味を持つのか知らなかったが、この10年にわたる軌跡を知り、自分が支払った金額そのままで、ロニに時計を譲ることにしたのだ。この親切な行動をとった落札者は? そう、ジェイソン・シンガー氏である。
パテック フィリップ Ref.2550
Ref.2550は、ロニのコレクションにぴったりのモデルだ。ギヨシェ彫りのダイヤルと、ラグを延長したリングを重ねたようなケースが特徴だ。これは、上記のRef.2549の姉妹機と考えてもよいだろう。
パテック フィリップ マルコフスキー社製の金無垢ケース
これは繰り返すが、ゴールドの無垢材から削りだされた曲線のケースを持つパテック フィリップの非常に珍しいリファレンスだ。20年前、このような時計が世界で最も価値のある、魅力的な時計と見なされたことは特筆すべきことだ。さらに驚くべきことは、パテックが一時期このような時計を製造していて、今ではパテックからこのような時計がリリースされることは不可能に近いと思われることだ。
パテック フィリップ Ref.565 ブレゲ数字ダイヤル
ロニがよく知る作品のひとつがこのRef.565。彼はスティール、スクリューバック、ブレゲ数字、センターセコンドなど、タイムオンリーのパテックに求められるものすべてを備えていると言う。我々も完全に同意する。
パテック フィリップ “アンチマグネティック” Ref.3417
Instagramでロニをフォローしている方なら、間違いなく見たことがあるはずだ。HODINKEEでも人気のパテック フィリップのRef.3417は、世界を旅する人の腕から決して離れない存在だ。そのサイズ、ケース形状、耐久性から、彼の“日常使い”時計として愛用されている。
パテック フィリップ Ref.2471
パテックのタイムオンリーモデル、Ref.2471はタンク風シェイプとスクロールラグを組み合わせたモデルだ。これはしばしば“ベアークロー(熊の爪)”と呼ばれるが、その理由はおわかりだろう。
カルティエ タンク サントレ 特別ダイヤル仕様
今回のロニのコレクションにはあまり登場しないものの、ロニがデザインに傾倒しているのはカルティエの存在が大きい。プラチナ製のサントレは、カルティエがリシュモンに買収される数年前にロニ自身がデザインしたダイヤルを持つ特別な時計だ。
パテック フィリップ Ref.5004P ブレゲ数字インデックス
おぉ、このコレクションで唯一無二の逸品だ。これはプラチナ製のパテック フィリップ Ref.5004(レマニアベースのスプリットセコンドクロノグラフで、永久カレンダーとムーンフェイズを搭載)で、ブレゲ数字インデックスの特別仕様のダイヤルを備えている。ロニは現代のパテックをあまり購入しないのだが、ロンドンのブティックと何年も友好的に交流するうちに、この時計を譲ってもらうことになったそうだ。Ref.5004Pは現代の名作のひとつとされているが、ブレゲ数字をあしらったこのモデルは実に壮大だ。もしロニが自らの掟を破る1本を選ぶとしたら、それはこの時計であることは理に適っている。