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グランドセイコーは、新しいグランドセイコー・スポーツコレクションでスプリングスドライブ20周年を盛大に祝った。今回の新作は、切子面付きの高度研磨ケースを特徴としており、グランドセイコーの過去のデザイン哲学からは大胆に距離を置いた外観となっている。新ケースの角張った形状、鋭角的なラグ、文字盤の模様は全て、グランドセイコーのシンボルである獅子の爪とたてがみにインスパイアされたものとされている。おそらく、このケースが持つ特異なビジュアルと手触り感を受けいれることは、少なくともグランドセイコーの一部の熱狂的ファンにとっては、かなり勇気がいるはずだ。新デザインが即座に容認されるかどうか、もしくはデザインへの慣れが必要かどうかについては様子を見るほかないが、品質、フィット感、仕上げの点においては、たとえケースはそうではなくとも、まさに私たちがグランドセイコーに期待する出来栄えとなっている。
グランドセイコー 20周年記念スプリングドライブ クロノグラフGMTは、キレのあるザラツ研磨が施された高強度チタン製ケースを特徴としている。
今回の新ケースは、3つのバリエーションが用意される。高強度チタン製(耐腐食性、軽量性、低刺激性の全てを有する従来の強化チタン合金でありながら、そこに非常に優れた引っかき耐性が加わっている)のデイト付き3針モデル、そしてクロノグラフGMTモデルには、ゴールドと高強度チタン製の2バリエーションがある。全てにスプリングドライブが備わっており、特にスプリングドライブ・クロノグラフは、実に興味深い1本である。ムーブメントは大型で、スプリングドライブ クロノの代表的な寸法は、オメガのプラネットオーシャン・クロノグラフよりわずかに小さい43.5㎜ × 16.1mmとなっている。
その大きなサイズにも関わらず、これは徹頭徹尾グランドセイコーだ。既存のスプリングドライブクロノグラフよりも意図的にスポーツ・クロノグラフ仕様にしているように感じる。このコレクションは、SBGC221を除いて、これまで特に文字盤と針に夜光を使用することはなく、本来のスポーツウォッチよりも、多目的な高級スポーツウォッチのようだと思っていた。とはいえ、夜光だけがスポーツウォッチの要素になるわけではないが、比較すると、この20周年記念クロノは、以前のモデルよりも目立った存在になっている。サファイアクリスタルのベゼルも、スプリングドライブのクロノグラフにとっては新しい素材であると信じている(私は間違っているかもしれない:サファイアのベゼルを採用したスプリングドライブ クロノは、今回より前のリリースでは見た記憶がない。ただし、GMTモデルでセラミック製のベゼルはあった)。
ケースデザインの違いも際立っている。本機のケースは、ほとんど攻撃的なまでに強く主張していて、いわば、ライオンそのものだ。ぱっと見のインパクトの後、我々は総合的な品質の点においていかにうまく作られているか気づき始めることになる。このケースは、グランドセイコーからは予想し得ない美学の類を体現しているが、特に技術的に顕著に進化の足跡が認められる。チタンは、工作機械の刃の先端に粘着する傾向があり(この現象はカジリと呼ばれる)、正確な機械操作を妨げる傾向があり、スティールよりも加工がやや難しいからだ。
現行のスプリングドライブ クロノグラフGMTコレクションの価格帯は、86万円から460万円の間にあり、大半はキャリバー9R86を使用している。Cal.9R86は、コラムホイール制御、垂直クラッチ方式のスプリングドライブのムーブメントであり、精度は日差±1秒だ。また、9R86は、2段階のスタート・ストップのプッシャーを採用しており、軽く押すと準備完了モードとなり、深く押すとクロノグラフが作動し始める。中央のクロノグラフ針は、9時位置にあるサブダイヤルの秒針と同様の滑らかさで動く。この秒針は、(従来のクロノグラフのような)ステップ運針ではなくスイープ運針であるため、理論上はずっと高い精度を得られる。プッシャーの先端は凹型で、同心のローレットが付いており、グリップ性が高い。
この20周年記念モデルはCal.9R96を使用しており、従来型と比べてほとんどの点で同じだが、精度スペックは高まって日差±0.5秒となっている。
Cal.9R96のローターには、グランドセイコーのゴールドのライオンメダリオンがあしらわれている。
興味深いことに、裏側から見ると、20周年記念モデルと現行のグランドセイコー スプリングドライブ クロノグラフをしっかりと見分けることはできない。本機のケースバックは、非常に有機的なカーブを描いており、手首に向かって細くなっている。このデザインにより、時計は手首上でかなり小さく感じられつつ、その視覚的なインパクトも維持されている。これは、SS製腕時計においては、やや大きい腕時計であればさらに快適な装着感を生み出すのだが、重い金属を使用していることにより、時計が少々不安定になり得るというリスクを負う。チタン製においては、これはほとんど問題にはならない。
余談だが、私は手巻きのスプリングドライブ クロノを見てみたいと思っている。今回のモデルはスプリングドライブの20周年を記念しているが、2019年は、もう一つの周年記念でもあった。1969年、セイコーは自社キャリバー6139をリリース。同キャリバーはゼニスのエル・プリメロやキャリバー11と同時期に発表されたもので、史上初めて製造された自動巻きクロノグラフ3つのうちの1つなのだ。私が思うに、より薄型の手巻きスプリングドライブクロノこそが、1969年に贈られるふさわしい賛辞だろう。現代モデルが少し大きいと思っている愛好家は、熱狂的に歓迎するはずだ。しかしもしあなたが、グランドセイコー的なものよりさらに外向的なスプリングドライブ クロノグラフGMTを求めているのであれば、この20周年記念モデルはその言葉が持つあらゆる意味においてシャープな解釈が込められた腕時計なのだ。さらに限定モデルにしては、他の現行スプリングドライブGMTモデルと比べても、プレミア価格ではない。これは、いつでも大歓迎すべきものだろう。
SBGC231は、世界500本の限定モデルであり、発売時の価格は140万円(税抜)である。
グランドセイコー Spring Drive 20周年記念限定モデル:グランドセイコー高強度チタン製ケース、44.5mm x 16.8mm、サファイアクリスタルガラスと24時間ベゼル。インデックスと針にルミブライト。ねじ込み式リューズとケースプッシャー付き、200m防水性能。シースルーのねじ込み式裏蓋。ムーブメント、スプリングドライブ クロノグラフCal.9R96。日差±0.5秒・コラムホイール制御、垂直クラッチ方式のシステム、スタート・ストップとリセットのダブルプッシャー・ポジション。機能、スモールセコンド付きの時刻と日付、クロノグラフ、パワーリザーブ付きGMT。20周年記念コレクションの詳細についてはグランドセイコー公式サイトをご覧ください。