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ブラッド・ピットの謎めいた“F1”IWC インヂュニアに関する始まりと憶測

次回の映画『F1』の主演俳優と、彼の非公式なIWC。

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数週間前、ブラッド・ピット(Brad Pitt)の手首に注目が集まり、世界中の時計愛好家たちはその謎に包まれた新たな話題に心を躍らせた。映画『F1(原題:F1)』(コシンスキー監督、2025年公開予定)の主演俳優である彼は、7月末にハンガリーグランプリのためにハンガロリンクに到着した際、手首に奇妙なものを身につけていたのである。

brad pitt F1 IWC watch

 親友のオーレン(Oren)がGQの記事で書いていたように、ピットはIWC インヂュニア SL Ref.1832を手首につけているようだった。その時計はオリジナルの仕様からグリーンダイヤルへと変更されていた。IWCの部分は納得できるが(IWCはメルセデスAMG・ペトロナスチームの有名なスポンサーだ)、手を加えたヴィンテージモデルを選ぶとは、何とも興味深い選択である。

 彼が自宅のリビングでこのインヂュニアを改造したわけではないという前提に立つとして、では一体誰がこの変更を行ったのかが気になるところである。

brad pitt F1 watch

 巧妙な陰謀論と同様に、まずは確実に分かっていることから始めるのがいい。この時計は1832をベースにしていることはほぼ間違いないが、グリーンダイヤル(テキストは最小限に抑えられ、IWCのネームプレートの位置が新しい)で日付表示がないように見え、ポリッシュ仕上げのベゼルを備えているようだ。

 IWC インヂュニア SL Ref.1832はジェンタがデザインしたモデルであり、パテック フィリップ ノーチラスが登場したのと同じく1976年に発表された。独特なケースデザイン、質感のあるダイヤル、Hリンクスタイルのブレスレットを特徴とし、ブランドのブレスレット一体型スポーツウォッチの流れを確立した。

an original IWC ingenieur

オリジナルのIWC インヂュニア SL 1832。

 僕たちが調べたところ、SL 1832にはグリーンダイヤルや日付なしのバージョンは存在せず、またオリジナルの仕上げは主にサテン仕上げで、ケースとベゼルエッジのわずかな部分にポリッシュ仕上げが施されていた。グリーンダイヤルやポリッシュ仕上げという要素は、アフターマーケットによるさまざまな改造による可能性があるが、日付表示の削除はカスタマイズをまったく別の次元に引き上げるものだと思う。

 僕の合理的な推測では、これはIWCが今度の映画でピットにIWCをつけてもらいたいがために特別に製作したものだと考えている。インターネット上では、この時計は映画のためにつくられた小道具だという説が有力である(これも合理的かつあり得る選択肢だ)。さらに突飛な仮説として、これはハイレベルなカスタマイザーによる特別なプロジェクトであり、現時点ではクロイスター・ウォッチ社(Cloister Watch Co.)によるものではないかと推測している。

rolex cloister watch co

 クロイスター社は、2022年にブランドの創設者であるクーパー・ゼルニック(Cooper Zelnick)をTalking Watchesに迎えて以来、僕たちの注目を集めている。もしそのエピソードを見逃した方は、ゼルニックがクロイスター・ウォッチ社を設立し、存在しないヴィンテージウォッチの徹底的な再現を試みるデザイナーであることを覚えておいてほしい。それから数年後、いわゆる“日付の削除”はブランドの特技のひとつとなった。ブランド公式サイトでは、1832に近い、日付表示が削除されたロレックス1530(これも1976年のブレスレット一体型スポーツウォッチ)を、鮮やかなブルーダイヤルで紹介しているのを見ることができる。

 はっきりさせておくと、クロイスター・ウォッチ社とブラッド・ピットのあいだで公に知られている関係性はない。しかしこの1832のモダンな再解釈は、ブランドの精神に非常に合致していると感じる。そしてこの仮説は僕の妄想だと捉えられるかもしれないが、クロイスター・ウォッチ社の公式サイトには“BP”と刻まれた裏蓋を持つプロジェクトが1本だけでなく2本も掲載されており、そのうちのひとつは1976年製のIWC ダ・ヴィンチである。また記事公開時点では、ぼんやりとした写真ながらグリーンダイヤルを持つ時計が写っているプライベートプロジェクトもある。

iwc cloister watch projects

 これがその写真だ。この写真について話したくてたまらない。

 以上がブラッド・ピットの『F1』IWCウォッチに関する僕の仮説だ。クーパー・ゼルニックに連絡して、上記のような議論を持ちかけたところ(驚くことに彼は僕をブロックしなかった)、彼からこんな返事が返ってきた。「クロイスターはクライアントの機密を重視しており、具体的なプロジェクトについては一切コメントしません。ただし、Ref.1832は日付がなくても素晴らしい時計だと思います。『F1』のためにジェンタのインヂュニアを再解釈した人は、素晴らしいセンスを持っていますね」


 どのブランドがこの時計の背後にいるかはともかく、それがIWCであれ、小道具の担当者であれ、クロイスター社であれ、そのほかのものであれ、素晴らしいアレンジが加えられたこのインヂュニアの見た目は素晴らしい。推測を続けると、もしかしたらこれは最近リニューアルされたインヂュニアラインの未来に期待できるものを示唆しているのかもしれない。