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2025年1月末、スイス・グシュタード。約5年前にローンチされたアルパイン イーグルコレクションの節目となるこのタイミングで、ショパールはこの地で新たな展開を披露した。まさにブランドのルーツとも呼べるリゾート地であり、オーナー一族であるショイフレファミリーにとっては第二の故郷とも言える場所だ。僕を含めて、各国からのプレスが招かれ、ファミリーが語る次のアルパイン イーグルの構想を聞くことができた。ある意味、「ステンレス製の一体型ブレスレットウォッチ」の呪縛から解き放たれるような、ショパールならではのストーリーを、Watches & Wonders 2025で発表されたばかりの新作を交えながらお伝えしたい。
プラチナ製のアルパイン イーグル 41 XP CS プラチナ。
ハイエンドモデルを拡充し“控えめな贅沢”を満たすためのラインナップを強化
プラチナモデルに配される“ミツバチ”は時計工房での仕事を表現
今回の発表では、プラチナケースモデルやハイフリークエンシー(HF)仕様など、技術的・審美的に深化した新作が並んだ。中でも注目はプラチナモデルだけに与えられるという12時のみローマ数字を配した、ミニマルな“シェード・オブ・アイス”ダイヤルに、ケースサイドに手彫りで施された象徴的な“ミツバチ”の刻印を取り入れたアルパイン イーグル 41 XP CS プラチナ(時計の詳細はこの記事へ)である。
アルパイン イーグルはもともと、1980年に生まれたサンモリッツという同社初のスポーティなSS製ウォッチに端を発している。当時のカール-フリードリッヒ・ショイフレ氏が、父親の理解を得るのに苦労してまで立ち上げたこのモデルは、ブランドにとって挑戦の象徴だった。そして今、彼の息子であるカール-フリッツ氏が再び父を説得し、5年前にローンチにこぎつけたアルパイン イーグルは、まさに3世代の信念を映し出す時計とも言える。
当初は、スポーツとドレスの間をつなぐラグジュアリースポーツのカテゴリーを補完するモデルとして発表されたが、今回のアップデートにより、よりコアな時計愛好家へ訴求するプロダクトに進化したと思う。プラチナ素材を用いたブレスレットタイプの時計という、SSウォッチ隆盛の次のフェーズを見据えたこのモデルは、ショイフレ家の美意識を伝えるものでもありそうだ。
ケースサイドに輝く刻印は、プラチナケースにだけ与えられるハチのシンボルだ。
「このコレクションは、特に貴金属を使った高級モデルに関して、細部に非常にこだわっており、テーパーブレスレットや手彫りの装飾などを通じて、アルパイン イーグルの今後の方向性がよく表れています。以前のコレクションよりもさらにクラフツマンシップを高めた形で、コレクションとしてのひとつの節目とも言えます。プラチナという素材の採用は、見た目はスティールに近いですが実は非常に貴重な素材。つまり、見た目で派手に主張しないけれど、持つ人だけがその価値を知るものなのです」と語るのはカール-フリッツ氏。ミニマルかつピュアさを感じさせるデザインは、彼自身の好みを凝縮させたものだそう。所有者とモノを知る人だけがそれと分かる、プラチナというメタルの特性はまさに“アンダーステイトメント(控えめな贅沢)”に溢れている。それでいて、近づいて見れば一気に引き込まれるような魔力が、ミニマルさの中に込められた気がした。
アルパイン イーグルは時代のニーズを叶えて、質の高いブレスレット一体型のステンレス製スポーティウォッチとしてある種ブーム的な動きをしていたが、こうしたプレシャスメタルの時計こそ、ショイフレファミリーのようなライフスタイルにマッチするのでは?と感じられた。
マイクロローターにプラチナが用いられたCal.L.U.C 96.42-L。薄型設計かつ、ジュネーブ・シールおよびCOSC認証を持つ。
親子3代にわたるショイフレ家が継承するもの
左からカール-フリッツ氏、会長のカール・ショイフレ氏、共同社長であるカール-フリードリッヒ・ショイフレ氏。
「この5年間、スポーツウォッチ市場は成熟してきました。その中で、私たちは次のステージとしてより高級な素材、より意味のあるディテールへと向かっています。素材だけでなく、ストーリーがあるかどうかが大切なのです」こう続けるのは、カール-フリードリッヒ氏。ストーリーをより強調して紡いでいく中で、改めてグシュタードの地で新アルパイン イーグルを発表した背景を語る。
「私たち家族にとって、グシュタードは第2の故郷です。何年にもわたってここで多くの時間を過ごし、心からこの場所を楽しんでいます。この感情を皆さんにも共有したいという思いから、この地での発表を決めました。アルパイン イーグルの展開を思いついたのもこの場所ですしね。当時、新コレクションについての議論をここで行っていましたし、だからこそアルパイン イーグルにとって特別な意味を持つわけです。自然と山や雪、この場所でいただくワインや食事が与えてくれる体験、雰囲気。これらはまさにアルパイン イーグルという時計のコンセプトに近いものです」
カール-フリッツ氏も父上に同調し「ここでは家族で本当に多くの時間を過ごしてきました。山にいると、脳に酸素がよく回るんですよ。オフィスで書類に追われるより、こういう自然の中にいるとよりクリエイティブになれます。私は子どもの頃からずっとここに来ていて、今では1人でも来るくらい大切な場所なんです」と添えた。
市場で最薄レベルのフライングトゥールビヨン アルパイン イーグルを支えるもの
ハイエンドモデルの開発に着手すると決めたとして、普通は一朝一夕でできるものではない。それを可能にしているのは、ショパールが生粋のマニュファクチュールであることと、技術の伝承に殊更力を入れているからにほかならないだろう。
「私たちは職人技の継承に関して、最も積極的な会社のひとつだと思っています。現在およそ50人の若者が時計製造、精密機械加工、彫金、ジェムセッティング、ジュエリー制作、研磨などを学んでいます。職種によっては修めるまでに4年かかるものもあり、その後も生涯学び続けなければなりません。複雑機構の時計職人になりたければ、忍耐と能力、そして才能が必要です。一流の複雑機構の時計職人になるには10年はかかります。時計は、世代を超えて受け継がれるべきものですから、扱う時計師の技術もそのように継承されるのです。企業側にも同様に忍耐が求められ、続けてきたことで昨年はジュネーブで“次世代への知識継承に最も貢献した雇用者”として表彰されました」(カール-フリードリッヒ氏)。
ショパールでは熟練の時計師を“アルチザン”と呼び、彼らの技術こそがブランドを支えるものと名言している。日々、アルチザンからの技術伝承が行われているからこそ、極薄のフライングトゥールビヨンのようなコンプリケーションを安定的に供給しうるのだ。“時計は世代を超えて受け継がれるべきもの”という言葉は、人材に対しても向けられている。このルーセントスティール製のアルパイン イーグル フライング トゥールビヨンは、業界随一のクオリティでありながら、ローヌブルーカラーの文字盤と相まってあくまで控えめ。アンダーステイトメントなラグジュアリーを体現している。
「実際、独立時計師の中にも私たちのもとでキャリアを始めた人が多くいます。育てた職人が業界で活躍するのは、本当にうれしいことですね」(カール-フリッツ氏)
41mm径、8mm厚という抜群のプロポーションを実現。3針のアルパイン イーグルよりも薄型で、フライングトゥールビヨンというハイエンドウォッチでありながら快適なつけ心地までをも提供している。
Cal.L.U.C 96.24-L。同社初の自社キャリバーであり1996年発表のCal.L.U.C 96.01-Lをベースとし、厚みをわずか3.30mmに抑えた。パワーリザーブは65時間。
このローヌブルー文字盤の着想元も、もちろんスイスの原風景だ。アルプスを流れる最も有名な川のひとつであるローヌ川を想起させるこの色は、標高2,200m以上にある氷河を起点にして流れ、ジュネーブのレマン湖を経て、やがて地中海へと注ぐ。澄み切った穏やかなブルーは力強さを演出する、アルパイン イーグルのアレッチブルーとも全く違った表情となっている。
有数のスノーリゾートで軽快に振る舞うためのハイパフォーマンスモデル
アルパイン イーグル 41 SLケイデンス 8HF。セラマイズドチタン製で1000ビッカース硬度を誇る。アルパイン イーグルにおいて最軽量でストラップを含めた重量がわずか75g! SLはSuper Lightの意。
「若い世代のコレクターは、スニーカーやパーカーに複雑機構の時計を合わせるなど、自由な発想で時計を楽しんでいます。時計のカテゴライズが柔軟になってきているのはブランドとしても面白い展開です」(カール-フリードリッヒ氏)。ラグジュアリーウォッチを取り巻く状況について話を進めていたところ、この発言があった。時計が、従来の定番的な使われ方から大きく変化している現状をしっかりと捉えた言葉だ。そうしたユーザーに、複雑時計やハイエンドウォッチを訴求するにあたり、ショパールが強い関心を寄せているのがこの高振動ウォッチである。
アルパイン イーグル 41 SLケイデンス 8HFは、元々、2012年に業界初となるクロノメーター認証を得た、8Hzの高振動ムーブメントCal.L.U.C 01.06-Lにルーツを持つ。本機に搭載されるCal.Chopard 01.14-Lは、「高振動が精度を向上させる」というテーマに対する、ショパールの現状の回答である。テンプの振動が速いほど、日常使用における衝撃が平均歩度に与える影響は減少する、という考え方のもと構成されており、それに加えてセラマイズドチタン製としたことで圧倒的な軽量性も誇っている。軽量であるほど衝撃にも強くなるわけで、このハイパフォーマンスモデルにふさわしい2つの特性(精度と堅牢性)を同時に与えることに成功している。
Cal.Chopard 01.14-Lは、ケースと同様に地板とブリッジはセラマイズドチタン製(ローターはタングステン)。5万7600振動/時という高振動モデルながら約60時間のパワーリザーブを実現する。
33mmの小径モデルには優雅なジェムセッティングが施される
33mmにはイエローゴールドとのコンビモデルが初登場。なお右はかつてのサンモリッツ。サイズ感は近しいものがある。
ハイジュエリーウォッチも登場。ベゼルのブルーの色合いはアーティスティック・ディレクターのキャロライン・ショイフレ氏による。ジュエリーとウォッチの垣根がないのも、ショパールの特徴と言える。
取材の最後に近年インディペンデントブランドや独立時計師がどんどん注目を集めていることについて、同様に独立企業であるショパールはどう見ているかを聞いた。
「家族経営や独立系のブランドが注目されることは、もちろん喜ばしいことです。家族や職人の顔が見えることで、より本物志向の価値を感じていただけるのだと思います」(カール-フリードリッヒ氏)。「買い手が共感する価値観や哲学を時計を通して共有できる。そうしたつながりは大企業では得がたいものです。私たちは家族として、価値観を次世代に伝えることに力を入れていますし、独立系時計師たちも強い信念を持って製作しているのだと感じています」(カール-フリッツ氏)。
個々に好みが多様化する時計という趣味において、独立時計師やショパールのような存在はますますその重要性を増すように、インタビュー全体を通して感じられた。その上で、ショパールがアルパイン イーグルにおいて目指す次の地点はあくまでブレない。
「控えめであること。けれど中身は本物であること。それが私たちの信じるラグジュアリーです。アルパイン イーグルは、その哲学を体現する時計だと思っています」(カール-フリードリッヒ氏)。5年以上前に自分の息子によって切り開かれた同社のひとつの可能性は、着実に成長を続ける。「誰かに見せびらかすためじゃなく、自分のために着けるもの。そんな価値を共有できる方々と、この時計を育てていけたらと思っています」(カール-フリッツ氏)。
ショパールは、自然の中で練られた構想と職人の手によって精緻な造形を生み出し続ける。アルパイン イーグルは、山の静けさを纏ったまま、静かにラグジュアリーの頂を目指している。
その他、詳細はショパール公式サイトへ。