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クイック解説
クチュールメゾンとしての印象が強いディオールだが、時計コレクションは1975年にスタートしている。時計の開発・製造体制を整える転機となったのは2001年。スイス時計産業の中心地ラ・ショー=ド=フォンに、専用拠点“レ ザトリエ オルロジェ ディオール(Les Ateliers Horlogers Dior SA)”を設けた。その後、ラ デ ドゥ ディオール、シフル ルージュ、ディオール クリスタルを発表。2008年にはトゥールビヨン、翌年にはミステリアス表示を採用したモデルも登場した。
レ ザトリエ オルロジェ ディオール。
その流れを受け、2011年にはディオール ユイット グラン バルが加わった。特徴は、通常はムーブメントの裏側にある自動巻きローターを文字盤側に配置したことにある。つまり腕の動きで回転し、主ゼンマイを巻き上げるパーツを文字盤側から見せているのだ。専用の自動巻きムーブメント、Cal.Dior Inversé 11 1/2(ディオール アンヴェルセ 11 1/2)は、レ ザトリエ オルロジェ ディオールとスイスのソプロード社が共同開発したものだ。
グラン バルは、羽根やレース、宝石などをローターの装飾に用いて表現を広げてきたコレクションでもある。ブランドが着想源のひとつとして挙げるのは、1949年に発表された、花弁状の装飾とスパンコール刺繍を施したガラドレス“ジュノン”。そして、創設者クリスチャン・ディオール(Christian Dior)が幸運のシンボルとして愛したスズランも、今回の新作へとつながる重要なモチーフだ。
1949年秋冬、オートクチュール コレクションにて発表された、“ミリュ ドゥ シェクル”ラインのジュノンドレス。花びらの1枚1枚が、クジャクの羽を思わせる。© Association Willy Maywald/ADAGP, Paris, 2026
誕生15周年となる2026年の新作は、スズランをテーマにした“ディオール グラン バル ミュゲ”2型と“ディオール グラン バル ミュゲ フルリ”2型の計4モデル。ミュゲはピンクとグレーの2色で、ホワイトゴールド製ローターにプリーツ状のマザー・オブ・パール(以降、MOP)をあしらう。ミュゲ フルリはピンクとグリーンの2色展開。オープンワークローターにダイヤモンド、カラーストーンをセットし、ベゼルにも71石のダイヤモンドを配した華やかな仕上がりだ。
ディオール グラン バル ミュゲ。
4モデルはいずれもステンレススティール製36mmケースに自動巻きのDior Inversé 11 1/2を搭載、約42時間のパワーリザーブと30m防水を備える。ミュゲは各58本限定で350万円、ミュゲ フルリは各38本限定で640万円(ともに税込)。すでに販売を開始している。
ファースト・インプレッション
ディオール グラン バル ミュゲ フルリ。
15年の歩みを振り返ると、グラン バルは文字盤に配したローターを軸に、素材や手仕事の技法を変えながら展開してきたコレクションだとわかる。過去には羽根や、ボビンレースの技法を用いてローターに織り込んだシルク糸や金糸を用いたモデルが登場している(コガネムシの翅を用いたマルケトリもあったが、こちらはローターではなく文字盤に採用されている)。自動巻きローターの機能を保ちながら、素材や装飾にも工夫を凝らしてきた点が、グラン バルの特徴だ。
今回のミュゲとミュゲ フルリは、共通の36mm径SSケースとキャリバーを採用しながら、価格には290万円の差がある。仕様を見比べると、その差はダイヤモンドベゼルの有無や、ローターにあしらわれた宝石の種類や数に表れている。
どちらも魅力的だが、個人的に強く引かれるのは、よりシンプルなミュゲのほうだ。ミュゲ フルリの宝石使いも魅力だが、ミュゲは価格が抑えられているほか、光を受けて揺らめくドレスのファブリックを思わせる、プリーツ状のMOP製ローターがいい。機構の動きと装飾を一体で楽しめるところに、グラン バルらしさが表れていると感じる。
SSケース製の2針自動巻き時計に350万円以上という価格は、時計のスペックを重視する読者には高く映るかもしれない。しかし、ローターの装飾や手仕事も含めて評価すれば、スペックだけでは測れない魅力がある。15年にわたり素材や技法を変えながら展開してきたグラン バルらしい新作だ。
基本情報
ブランド: ディオール(Dior)
モデル名: ディオール グラン バル ミュゲ(Dior Grand Bal Muguet)/ディオール グラン バル ミュゲ フルリ(Dior Grand Bal Muguet Fleuri)
型番: CD153B1X1861(ミュゲ、ピンク)/CD153B1X1862(ミュゲ、グレー)/CD153B2X1761(ミュゲ フルリ、ピンク)/CD153B1X1762(ミュゲ フルリ、グレー)
直径: 36mm
ケース素材: ステンレススティール
文字盤: ピンクまたはグレーのサンレイ仕上げ(ミュゲ)/ピンクまたはグレーのMOPダイヤル(ミュゲ フルリ)
防水性能: 30m(3気圧)
ストラップ/ブレスレット: ピンクまたはグレーのレザーストラップ、ステンレススティール製ピンバックル
ムーブメント情報
キャリバー: Dior Inversé 11 1/2
機能: 時・分表示
パワーリザーブ: 約42時間
巻き上げ方式: 自動巻き
クロノメーター: なし
追加情報: 自動巻きローターを文字盤側に配置。ミュゲはMOP装飾、ミュゲ フルリはMOPにダイヤモンドやカラーストーンをあしらったローターを採用
価格 & 発売時期
価格: ミュゲは各350万円、ミュゲ フルリは各640万円(すべて税込)
発売時期: 発売中
限定: あり、ミュゲは世界限定各58本、ミュゲ フルリは世界限定各38本
詳しくはこちらをご覧ください。
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