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本稿は2020年11月に執筆された本国版の翻訳です。
“ハンク・ザ・デュース”としても知られるヘンリー・フォード2世は、1956年1月17日、6億5790万ドル(当時の相場で約2兆3688億4000万円)と1020万株を投じてフォード・モーター社を上場させた。当時、それはアメリカ史上最大の新規株式公開だった。
同じ年、バーゼルワールド(当時はスイス時計見本市と呼ばれていた)でロレックスはデイデイトをデビューさせ、のちにロレックスのコレクションに加わることになる。そしていま、彼の18金無垢のRef.1803は、クリスティーズの“Important Jewels From The Estate of Mrs. Henry Ford(ヘンリー・フォード夫人の遺品に属する重要な宝飾品)”というオークションに出品される。
アメリカ産業界の大物にふさわしいこの時計は、彼の保守的な趣味と攻撃的な経営スタイルにマッチしていた。ヘンリー2世が28歳の誕生日を迎えた直後の1945年9月21日、自身の名を冠した会社の社長に就任したとき、会社は立て直しを迫られている状況だった。いくつかの重要な取り組みがその助けとなった。
ひとつには、2019年の映画『フォードvsフェラーリ(原題:Ford Vs. Ferrari)』で描かれたように、デュースはフォードを国際的なレーシングサーキットで一躍有名にしたことがある(彼はイタリアの自動車メーカー、フェラーリを買収する商談が失敗に終わったあと、フェラーリを打ち負かすためにGT40プログラムを立ち上げた)。フェラーリは1960年から65年にかけてル・マンのチャンピオンに君臨していたが、その座は1966年に終わりを告げた。この年、トリオのフォードGT 40がトップ3位を独占したのだ。
ふたつ目の重要な動きとは? 1965年にフォードが発売したマスタングが、同社で最も成功したクルマとなったことだ。スティーブ・マックイーンから、あのヴァニラ・アイスまで、多くの著名人に愛されたのだ。60年代後半のフォードの成功を記念するにふさわしい時計があるとすれば、1970年に製造されたこの金無垢デイデイトであろう。
このロレックス デイデイトはクリスティーズのオンラインセール、“Important Jewels From The Estate of Mrs. Henry Ford(ヘンリー・フォード夫人の遺品に属する重要な宝飾品)”のロット242。推定価格は3000ドルから5000ドル(当時の相場で約31万3000~52万1000円)で、公開時点の入札価格は5000ドル。オークションは12月2日の午前10時(東部標準時)に終了。完全なリストはこちらから(編注:結果は1万8750ドル、当時の相場で約195万6000円にて落札)