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Hands-On クロノスイス フライング・グランドレギュレーター オープン ギア レ・セックを実機レビュー

18世紀の力学と21世紀の美学。

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スイスの計時哲学の根底には、伝統への深い尊敬の念がある。スイスの時計は、伝統を重んじて作られている。しかし、時と場合によっては、そのやり方を少しずつ変えていくメーカーが登場することもある。クロノスイスは、18世紀のムーブメントにおける革新であるレギュレーターのレイアウトを復活させ、それを維持することで過去に目を向けながら、同時にアバンギャルドな素材やケースの仕上げ技術を試すことで、その両方を実現している。

 21世紀への移行期、時計ジャーナリズムの全盛期に、ライターたちはクロノスイスに多くのページを割いた。クォーツショックで業界の将来が不透明だった時代に、機械式時計を存続させるという会社の使命に真摯に取り組んだことが評価され、真の“時計好きのための時計”としてコレクターの間で支持を得たのだ。このブランドは1983年にゲルト・リュディガー・ラングによって設立されたが、彼は機械式時計に対する揺るぎない献身と情熱で知られていた。彼の時計はそれを裏付けるものであり、高級時計の機械的な特徴を体験することに純粋に集中していた。ラングは早くからスケルトンダイヤルとトランスパレントバックを採用しており、コレクターは彼の時計づくりのディテールを称賛した。また、1988年にはレギュレーター・マニュファクチュールを設立し、それによってレギュレーターが再び脚光を浴びることになった。この時計が登場するまでは、レギュレータースタイルの表示は壁掛け時計や懐中時計に多く見られ、その当時でもアンティークとみなされていた。

 2019年に発売されたフライング・グランドレギュレーター オープン ギア レ・セックは、同社が創業した理念に忠実にこだわった時計だ(レ・セックとは、レトログラードセコンド表示のこと)。審美的な美しさとレギュレーターの包括は非常にクロノスイスらしいものだが、今までと違うのは経営の舵取りをしている男の存在である。2012年にオリバーとエヴァのエブシュタイン夫妻がブランドを買収し、現代の風景の中で製品を魅力的にするために必要な調整を行うという、ゲルト・リュディガー・ラングのビジョンを前面に押し出した。

 この時計は、手首に装着してみても完全に理解するのに時間がかかる。根源的な機構であるレギュレーターは18世紀に生まれたものであり、大まかなデザイン言語は90年代のものだが、その色彩設計は未来のもののように感じられる。この時計の特徴は、ジュール・ヴェルヌの小説の雰囲気や気風に例えることができ、古いアイデアや技術が根本的に新しい美学と融合したようなものだ。この時計はレトロフューチャーな性質をもち、ソーシャルメディアを利用した集団思考がトレンドを決定づける現代の収集文化の中で、確かにオリジナルとして際立っている。それは、型破りな方法で時間を伝えるだけでなく、美観設計とキャリバーデザインの両方が、多くの異なる時代から引き出されているという点でも型破りだ。この時計を規則に縛りつけることは難しいが、その分、より興味深いものになっている。

 他のモデル(オールブルーPVD、ブラックPVDケースにレッドのアクセント、スティールケースにブルーのアクセント、レッドゴールドケースにシルバーダイヤル)では、ダイヤルの黒の深さがギヨシェ模様を消しているのだが、私がよく知っているのはブラックとグリーンの組み合わせだ。レトログラードセコンドが瞬時に30秒表示に戻るのも、レギュレーターウォッチの楽しみの1つ。時刻表示だけの時計としては珍しく、時間を確認した後もずっと眺めていたい時計である。レギュレーターに慣れるのは少し難しく感じられたが、クロノスイスは機能性を追求したツールウォッチではない。機械的な世界に魅了することを目的としているのだ。

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 クロノスイスでは早くからトランスパレントバックを採用していたが、フライング・グランドレギュレーターに搭載された自社製Cal.C.301は、輪列の1番受けがくり抜かれ、時針の歯車がはっきりと見えるようになっており、裏蓋側ではなくダイヤル側に重点が置かれている。ストラップは少し太くて硬く、C.301を鑑賞するために時計を外さなくてもいいのが良いところだ。C.301は、PVDの自動巻きローターをもち、40時間のパワーリザーブを備えている。

 この時計は背が高く、手首にしっかりと存在が感じられるが、気合いを入れて実際に身に着けていることを実感したい時に着ける時計だ。ちょっとした主張のあるものを身に着けていることを知って欲しいから着ける時計であり、背景に紛れることなく、また袖口の下に完全に収まらないため、見過ごされることもない。

 そして、そこが輝いているところだ。インデックスに使用されている夜光は3次元に高くそびえ、アワーダイヤルのローマ数字インデックスと並置されている。鮮やかなグリーンのアクセントが際立つブラックのギヨシェダイヤル。見逃してしまいそうなレトログラードセコンドの瞬時のアクション。アワーリングの後ろには、駆動輪列と一緒にのぞく大きな受け石。この時計は、細部にコントラストをもたせている。それが最も発揮されているのは、機械式時計の魅力を刺激するというオリジナルのビジョンを維持し続けていることだ。そして、この時計は創業者ゲルト・リュディガー・ラングの独創的なビジョンを忠実に継承し、機械式時計の魅力を鼓舞する時計である。それはどんな時代であっても重要な使命だ。

クロノスイス フライング・グランドレギュレーター オープン ギア レ・セックは50本限定。ケース:ブラックDLC加工のステンレススティール、44mm×13.35mm。防水性:10気圧/100m。ねじ込み式ベゼル、カーブしたサファイアクリスタル風防にダブルARコーティング。ムーブメント:Cal.C.301、自動巻き、2万8800振動/時、レトログラードセコンドとレギュレータータイプの表示を備える。ダイヤルは42個のパーツからなる2層構造:下層にはハンドギヨシェ彫り、上層にはねじ込み式のスケルトナイズされた輪列受けとじょうごのような構造の時表示、レトログラードセコンド表示。針とダイヤルにはスーパールミノバを採用。ストラップ:ホーンバック仕様のクロコダイルレザー、フォールディングクラスプ。価格は、153万円(税抜)。時計の詳細はこちら