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時計は定期的に巻かないとムーブメントが劣化することは知っています。でも、それはなぜ? そのままでいいんじゃないの?
時計を着けていないからといって、時間が止まるわけではない。車を1年間ガレージに置いておいても、すぐにエンジンがかかり、最高の状態で走ってくれると思うだろうか? 2年では? 5年ではどうなるだろう? 時計は機械だ。他の機械と同じように摩耗するし、定期的に使用していてもメンテナンスが必要なのだ。特に使っていなくてもだ。
ムーブメントの部品は、使うことで効果を発揮する。
潤滑材は経年劣化するし、ガスケットも劣化する。しかし、性能の低下が最も顕著に現れるの脱進機だ。ほとんどの時計にはレバー脱進機が使われているが、これが正常に作動するためには油が必要だ。時計を長期間放置した場合のもう一つの問題は、その時計を再び定期的に着用したい時に起こる。乾いた状態の回転軸で動いている時計の歯車は、動かなくなるまでは問題なく動くが、気づいた時には摩耗が蓄積していて、高額な修理代が必要になったり、ヴィンテージウォッチの場合は部品が手に入らなくなったりすることがある。
時計に何個の石があるかなんて、気にする必要あるの? 見えないんだから。
時計に使われている石は通常合成ルビーで、輪列のスティール製回転軸の軸受けとして使われている。スティールとルビーは、良いオイルを使えばほとんど摩擦が起こらない。回転軸の軸受けに宝石を使うようになったのは18世紀初頭だが、本格的に普及し始めたのはさらに100年後のことだ。時刻表示のみのシンプルな時計のムーブメントにも通常17個の石が使われているが、これは輪列の各回転軸に加えて脱進機にも3個使われるからだ。
ランゲのcal.L951.1には40石使われている。
石数を表示するのは、宝石付き軸受けがまだ全ての時計に搭載されていなかった時代の名残だ。安価で大量生産された時計のムーブメントは、デザインによっては石数が少なかったり、全くなかったりした。宝石の数が多いことは、消費者に品質の高さを連想させるため、ブランドもそれを誇示するようになった(これが度を越して、一時期は宝石の数を増やすために、機能しないルビーをケースに貼り付けたメーカーもあった。呆れたものだ)。
そう、確かに懐古趣味ではあるが、それは機械式時計も同じことだ。ちなみに、時計とは目に見えないが気にかけるべき部分がたくさん詰まったものなのだ。
ノートパソコンが時計を磁化するのでは?
可能性はある。
磁界は2つの場所から発生する。永久磁石と電流だ。ノートパソコンには両方ある;ノートパソコンのスピーカーには永久磁石が使われているし、モデルによっては画面の上にも磁石があり、機械的なラッチがなくてもパソコンが閉じられるようになっている。私のMacBook Proには、スピーカーと画面上部に、鉄製のピンセットをくっつけられる位の強力な磁石が付いているので、何もないわけがない。
それらの永久磁石、および/または電流の流れから誘導された磁界が、ヒゲゼンマイに影響を与えるかどうかは、コンピュータの構成、時計のケースの材質などを含む膨大な数の要素によって決まってくる。コンピューターの電源が入った状態でスピーカーの磁石の上に時計を置くのはトラブルの原因になるかもしれないし、そうでないかもしれない; 電源が完全に切れているノートパソコンの上に時計を置くのは大丈夫かもしれないが、スリープモードならやめた方がいいかもしれないし、そうでないかもしれない。ラップトップを介して流れる電流の量は、それがどういう状態にあるかによって異なり、それはまた、電流に誘導される磁場の強さに影響を与える。
仮にノートパソコンが時計を磁化してしまった場合、その消去方法がこちら。
磁力計を購入して自分のノートパソコンをテストしない限り、オン/オフ、開閉に関わらず、どのくらい強い磁場が発生しているかを簡単に知る方法はない。慎重を期して、時計をその上に置かないようにしてみてはどうだろう? 自らヒゲゼンマイを守れるのだ。
トゥールビヨンは実のところ何をしている?
トゥールビヨンは、購入者からできるだけ多くのお金を引き出すことを目的とした複雑機構だ。
OK、冗談はさておき、本題だ。皆さん、集まって時計職人アブラアン−ルイ・ブレゲの物語を聞いてみよう。スイス生まれのブレゲは、フランス革命の前後にフランスで貴族と一緒に事業を行い、朝食前に他の時計職人が一生かかっても作れないほど多くのものを発明した(当時、マリー・アントワネットのために世界で最も複雑な時計を作ったが、彼女は完成前に断頭台に消えてしまった)。
ジラール・ペルゴのトゥールビヨン懐中時計、1889年、天文台でのテストのために作られた。
ブレゲをはじめとする全ての時計職人は、時計の姿勢によって、時計の動きが少し早くなったり遅くなったりすることを知っていた。重力が調整部品(主にテンプとヒゲゼンマイ)を引っ張る力は、時計がリューズが上向きの状態(腕時計は200年前には存在しなかったため、ポケットに入れた状態)と、それ以外の状態では異なった。
彼のアイデアはこうだ。テンプ、ヒゲゼンマイ、脱進機を、回転する機械ケージの中に入れれば、様々な位置での異なった精度の代わりに、全方位での単一の平均精度が得られる。この平均精度は、いわゆる垂直方向の全てのポジションの平均値であり、時計を平らに寝かせた状態(例えば、宮中の装飾のついたドレッシングテーブルの上)でのレートを調整すれば、理論的には完璧なタイムキーパーになるはずだ。この回転装置がトゥールビヨンで、名前はケージの回転を意味し、フランス語の“渦巻き”にあたる。
ミニチュア化。ブルガリのCal.BVL150は、現在製造されているトゥールビヨンの中で最も小さいものだ。
なるほど。しかし、これが実際に機能するかどうかは、1801年にブレゲが特許を取得して以来、人々が常に議論してきたことだ。時計製造の歴史の大部分で、トゥールビヨンは1つずつ手作業で作られており、非常に希少なものだった。現在では、コンピューターでプログラムされた最新の工作機械のおかげで、ずっと簡単に作ることができるようになり、精度を上げるための実用的な機構としてはかなり時代遅れになりつつある。しかし、見た目はとてもクールだ。機械式時計は一般的に旧式の技術なのだから、トゥールビヨンだけがそうだとは言えない。
そして、時計職人たちは今でもトゥールビヨンを作ることが好きなのだ。本当によくできたトゥールビヨンは今でも希少価値がある。機械式時計作りでは、今やっていることをどうやるかが重要なのだ。
興味深い事実:トゥールビヨンは通常、クロノグラフや永久カレンダーと同様、“複雑機構”と呼ばれているが、トゥールビヨンには付加的な情報が表示されないため、時計愛好家の純粋主義者の中には敬遠する人もいる。彼らは、トゥールビヨンは複雑機構ではなく調整装置であると言う。このような人たちは、誰かがゴッホの話をするまで待って発音を正す人たちと同程度くらいには面白いかもしれない。話題の中心にはなれなくても、実際には正しいことを言っている。
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