ADVERTISEMENT
本稿は2011年8月に執筆された本国版の翻訳です。
ヴィンテージブライトリングは簡単にふたつのカテゴリに分類できる。ナビタイマーと、それ以外だ。
ナビタイマー・コスモノートシリーズは非常に素晴らしく、ブライトリングがかつて手がけたほかの製品を圧倒している。彼らのトップタイムは手ごろでいい作品だった。彼らのワールドタイマーは超クールだったし、ラトラパンテのデュオグラフはさらにクールだった。しかし、我々のお気に入りのヴィンテージブライトリングはまったく売れることはなかった。
カナダ空軍(RCAF)と国防総省(DND)は長年にわたり、オメガ、レマニア(他社のためにムーブメントを製造していた)、ブライトリングに、ワンプッシュのクロノグラフを注文する習慣があり、それはパイロットや軍人に与えられた。しかし、カナダ人は合理的で実利的な集団なので、普通の軍人がオメガやブライトリングのクロノグラフ(どちらも当時は有名で評判の高い高級時計メーカーだった)を与えられたと知ったら、それを売りたくなるかもしれないと考えた。また軍人の友人や知人、学友の敵がオメガやブライトリングのような高級腕時計を手首につけているのを見たら、それを盗みたくなるかもしれないとも。
そのため、オメガとブライトリングの両社は、RCAFや国防総省のために無署名の文字盤を備えたこれらの時計を製造していた。こうすることで、一般人(兵士や民間人)は自分が見ている時計が何なのかを知ることができない。では、例えば上の写真の時計が実際にブライトリングであることをどうやって知ることができるのだろうか?
その答えはムーブメントにある。
そしてケースはこのようになっている。
ヴィンテージムーブメントに詳しい方なら、上のムーブメントはバルジュー23をモノプッシャーに改造したものだとわかるだろう。このムーブメントは、優れたミリタリーウォッチのように、30分積算計とハック機能付き秒針(スモールセコンド)を特徴としている。裏蓋には国防総省オリジナルの発行番号と、1967年に製造されたことを示す、“/67”で終わるシリアル番号が記載されている。
これらの腕時計は、オメガとブライトリングの両方のバリエーションで、ますます人気と価値が高まっている。その理由はいくつかある。それは間違いなく本物のミルスペックウォッチであるということ、伝説的な時計メーカーの製品であること、そしてオメガとブライトリングがそれぞれの歴史のなかでワンプッシュクロノグラフをほとんど製造していないということだ。サインのない時計はスリーパー(大穴)であり、オリジナルの軍仕様に近いので、最もクールだというのが我々の意見だ。これらの時計のいくつかは、後にケースバックに“Surplus”を意味する“S”と刻印され、文字盤に“Omega”、“RCAF”、“Breitling”と書かれたモデルが作られていた。昨年11月、ジュネーブ・クリスティーズでは、オメガRCAFのワンプッシュモデルが、1万4000ドル(当時の相場で約116万円)以上で落札されている。
そのため地元のフリーマーケットやヴィンテージウォッチ店、あるいはeBayなどで、文字盤に完全に何も書かれていないモノプッシャークロノグラフを見たのなら、それは軍の歴史を持つ非常にクールで珍しいオメガやブライトリングかもしれない。